施策の展開 基本方針1 地域福祉を支える基盤づくり 施策@ 福祉コミュニティの形成 《目指すべき姿/施策の目標》 障害者基本法では共生社会の実現に向け、障害を理由とした差別や権利・利益侵害を禁止するとともに、参加と選択の機会を妨げる社会的障壁の除去または合理的な配慮を求めています。障害の重度化や高齢化、介助する家族の高齢化の進展などに対応できるよう、コミュニティソーシャルワーカーを中心に、ボランティアや関係機関及び各種団体等の連携が強化された、理解と支え合いに基づく福祉コミュニティづくりを推進します。 《現状と課題》 地域におけるさまざまな取り組みの成果から、障害のある人に対する理解は徐々に進んではいますが、決して十分とは言えません ・地域での障害・疾病に対する理解が《得られている》は44.2%、《得られていない》は48.0%。 障害のある人が、自己決定と自己選択により主体的に暮らしていくためには、何よりもまず、差別や権利の侵害の存在に気づき、変えていこうとする意識づくりをさらに広めていく必要があります。 また特に災害時などの緊急時においては、安否確認や避難の手助けなど、とりわけ福祉コミュニティの力が期待されます。 福祉の向上には、制度の充実だけではなく、ボランティアやNPO活動をはじめとした、地域における一人ひとりの意識と行動が何より重要です。障害を理解し、互いに支え合う地域の形成に向け、障害に関する理解の促進や啓発活動に取り組みます。 《主な施策の方向性》 ◎障害者理解の促進  声かけや手助け、疑似体験など、障害者に対する簡単なサポート方法を学べる区民向け講座(障害者サポート講座)を区民ひろば等で開催し、障害者への理解促進及び交流を図ります。 ◎災害時における支え合いの推進 災害時要援護者名簿を活用し、災害時における安否確認、避難行動の支援体制を整備するとともに、ボランティア、関係機関、各種団体等の連携を強化し、日頃の地域での見守り活動にもつなげていきます。 【主な取り組み(予定)】 ・障害者サポート講座 ・ヘルプカード・ヘルプマークの普及・啓発 ・災害時要援護者名簿の活用 ・災害用バンダナの活用 ・障害者防災の手引きの活用 《数値目標/管理指標》 【指標】 障害者サポート講座年間参加者数(累計人数)※基本計画における設定指標 【現状】 143(1,003)人 【目標値(H32年度】240(1,822)人 【指標】街なかで困っている障害者等への手助けができない区民の割合 ※基本計画における設定指標 【現状】25.2% 【目標値(H32年度】20.0%   コラム など 検討(以降を見開きに展開するため) 施策A 地域包括支援体制の構築 《目指すべき姿/施策の目標》  住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、公的サービスをはじめ、医療機関やサービス事業者、地域活動団体、さらには区民やボランティアなど様々な主体がネットワークを形成しながら、様々なサービスなどが総合的・包括的に提供される支援体制を構築していきます。 《現状と課題》 近年では、障害のある人の高齢化・重度化による問題や親亡き後を見据え、地域での暮らしの安心感を担保していくことが急務となっています。生活課題は一人ひとりの置かれた状況によって異なり、利用するサービスも福祉・保健・医療など様々な生活関連分野に及んでいます。障害のある人が地域で生活を継続していくために、各種のサービスが連携した地域のサポート体制の充実が必要です。 また、入所施設や病院等ではなく、地域で生活するために地域移行を進めていくことも大きな課題となっています。特に精神障害のある人の地域生活への移行を進める上では、差別や偏見のない地域づくりとともに、医療や住居、就労や生活全般に対するケアが必要です。  <行政に対する要望上位3項目> 身体:「手当の充実」「医療費の軽減」「バリアフリー化」 知的:「防犯・防災対策」「グループホーム等の整備」「障害者理解」 精神:「障害者理解」「手当の充実」「就労支援」 難病:「手当の充実」「医療費の軽減」、「バリアフリー化」 必要とする支援が必要な人に届くよう、相談や日中活動と居住支援の場のコーディネート、緊急時の対応等を行う地域生活支援拠点を整備していきます。 さらには、多様化・複雑化するニーズや、家族を含めた支援ニーズ、新たに発見したニーズに的確に対応していくためには、既存のサービスだけでは足りないこともあります。 区では全国に先駆けてコミュ二ティソーシャルワーカーを配置し、地域活動を掘り起し、新たな場やサービスを創設してきました。今後も障害のある人やその家族からの各種相談に総合的に対応できるよう、地域支援協議会を中心に、相談支援を行う障害福祉サービス事業者やコミュ二ティソーシャルワーカーなど関係機関相互のネットワークを構築していくこと、さらにそれを支える福祉人材を育成することで、障害のある人の自立を総合的・包括的に支援できる体制を整備していきます。 《主な施策の方向性》 ◎地域生活支援拠点を中心とした包括的なケア基盤の充実  障害者の高齢化・重度化や親亡き後を見据え、相談や緊急時の受入れなど複数の機能を持つ地域支援拠点を整備します。 また、地域支援協議会では、障害者が充実した日常生活、社会生活を送れる体制の整備に向け、学識経験者、障害福祉サービス事業者、教育及び就労機関、当事者、家族等で協議を進めていきます。 ◎精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築 精神障害者の地域移行を進めるために、保健、医療、福祉関係者、サービス提供事業者、就労機関などの専門機関や当事者とその家族等を含め、差別や偏見のない地域づくりに向けた協議を進めます。 ◎福祉サービスの質の向上に向けた取組 質の高いサービス提供につながるよう事業者の育成・支援に努めるとともに、サービス提供事業者への指導検査体制について検討していきます。 【主な取り組み(予定)】 ・地域生活支援拠点 ・地域支援協議会の運営 ・地域活動支援センター(T型・U型・V型) ・精神障害者を含む地域包括ケアシステムの構築 ・障害福祉サービス事業所連絡会 ・障害者通所施設等に対する第三者評価受審支援 《数値目標/管理指標》 【指標】 区内障害者グループホーム定員数 ※基本計画における設定指標 【現状】 213人 【目標値(H32年度】 250人 【指標】 福祉サービスや相談窓口に満足している人の割合 【現状】 21.0% 【目標値(H32年度】 20.0% 施策B 差別解消と権利擁護の推進 《目指すべき姿/施策の目標》  必要とする人に適切なサービスを提供し自立を支援するために、サービスの質を向上させるとともに給付の適正化を図ります。また、障害のある人が地域で安心して暮らしていけるよう、成年後見制度等権利擁護の取組を推進していきます。 《現状と課題》 障害のある人が安心して障害福祉サービスを利用するためには、サービスの質を確保することと、十分な情報が提供されることが重要です。サービスの提供を行う事業所の育成・監督や情報開示、また各種講習会や研修会などの充実を図ります。 障害のある人が、親亡き後も将来にわたって安心して生活が送れるよう、権利や財産が守られなくてはなりません。成年後見制度の利用については、区長申立てによる審判請求の利用が進んでいないのが現状です。今後も広く周知を進めていく必要があります。 成年後見制度を「今後利用したい」は身体10%、知的31%、精神16%、難病10%。 虐待については、未然に防止を図る広報・啓発活動と、虐待が発生した際の迅速かつ的確な対応が必要です。平成24年10月に障害者虐待防止法が施行されたのを受けて、豊島区障害者虐待防止センターを中心に地域における関係機関連携、家庭訪問等を行い、医師や弁護士等による専門的助言を得る体制を確保しています。 平成28年度の障害者差別解消法の施行に伴い、区の相談体制の整備、法の周知を図っていますが、一方で、まだまだ情報バリアが存在することや、どのような相談が差別に該当するのかわからないといった具体的な意見も届いています。今後は、相談事例の分析、当事者ヒアリング等を行い、取組みを更に充実していく必要があります。 ・障害者に対する差別を《感じる》は31.8%、《感じない》は59.6%。 《主な施策の方向性》 ◎障害者の権利を守る取組みの充実 障害者権利擁護協議会を中心に、関係機関とのネットワークを強化しながら、差別解消、虐待防止など障害者の権利を守る取組みを充実していきます。 ◎成年後見制度利用支援の周知 福祉サービス権利擁護支援室「サポートとしま」と連携し、講演会などを通じて成年後見制度の普及啓発を進めます。 【主な取り組み(予定)】 ・障害を理由とする差別の解消の推進に関する取組み ・障害者虐待防止対策支援事業 ・成年後見制度利用支援 《数値目標/管理指標》 【指標】 障害者差別解消法に関する研修会参加延人数(累計)※基本計画における設定指標 【現状】413人 【目標値(H32年度】 2,000人 【指標】差別について「よく感じる」「時々感じる」と回答している障害者の割合 ※基本計画における設定指標 【現状】31.8% 【目標値(H32年度】31.0% ※網掛けは基本計画における設定指標 基本方針2 地域における自立生活支援 施策C 日常生活への支援 《目指すべき姿/施策の目標》  住み慣れた家庭や地域で安心して日常を過ごすことができるよう、在宅生活を支える各種サービスや相談窓口の充実を図ります。特に、発達障害や高次脳機能障害、障害の重度化・高齢化等に対応するため、一人ひとりの状況に応じた支援が適切に行われるよう、相談支援の充実を図ります。 《現状と課題》 障害のある人が地域生活を送る上で、いつでも気軽に相談ができ、適切な情報提供や支援を受けることができる窓口が不可欠です。 区ではこれまでに、基幹相談支援センターを柱とし、区内の相談支援事業所を中心とした関係機関と連携し、相談支援体制を構築してきました。 ・相談窓口の対応に《満足》は65.4%、《不満》は17.1%。 ・不満の理由は「充分な助言が得られない」「曜日・時間が限られている」「窓口がわかりづらい」 医療的ケアが必要な障害者や家族の高齢化への対応、引きこもりの当事者、難病患者、高次脳機能障害や発達障害のある人などに対する障害の特性に応じた相談支援の充実は依然として大きな課題です。 特に障害児への支援は成長に伴い関わる機関が変わっていくことから、各機関の連携による乳幼児期から学齢期、青年期に至るまで、支援が途切れないよう、一人ひとりの発達段階に応じた一貫した支援体制を強化していく必要があります。 《主な施策の方向性》 ◎相談支援体制の充実  豊島区障害者地域支援協議会 相談支援部会において、課題の抽出や、講演会等を実施し、地域の相談支援の充実や関係機関の連携強化を図ります。 ◎障害児支援体制の強化 子ども家庭支援センターを中心に、子どもに対する支援だけではなく、家庭への支援も一体的に取り組んでいきます。また、医療的ケアの必要な障害児や重症心身障害児への支援充実に向け、保健、医療、福祉、教育の各機関が連携し、一貫した支援体制を検討していきます。 ◎障害特性等に配慮したきめ細かい?援の充実 発達障害者支援においては、専門の相談窓口を設置し、区内大学と連携した相談事業や、保健、福祉、教育の各機関が連携した一体的な支援を実施するための検討体制づくり、講演会等による周知啓発等を行います。 【主な取り組み(予定)】 ・基幹相談支援センター事業 ・相談支援事業 ・障害児支援の提供体制の確保 ・発達障害専門の相談窓口の設置 ・高次脳機能障害者支援対策事業 施策D 就労支援の強化 《目指すべき姿/施策の目標》 障害のある人の就労支援のために、職業研修、職場実習、就職後の職場定着支援、更に生活全般の支援の充実を図ります。また、就職後のフォローアップを含めたサポート体制など、継続した支援を提供できる体制を作ります。 《現状と課題》 障害のある人の就労については、雇用の場が限られていること、障害理解に基づく適切な支援体制が十分ではないことなどにより、働きたいという意欲と能力があっても、就労に結びついていないのが現状です。 ・「仕事・作業等をしており、今後も続けたい」は全体で49.3%。障害区分別では知的障害で68.8%、視覚障害で56.3%。 ・精神では「今、仕事・作業等をしていないが、今後仕事をしたい」が25.5%と多く、施策要望でも「就労の支援や職業訓練の充実」は32.3%で第3位。 平成28年4月からは、改正障害者雇用促進法が施行され、企業・事業者には障害を理由とした差別の禁止と合理的配慮が求められています。 企業の経営者や従業員をはじめ、障害者雇用についての啓発活動等を充実し、民間企業等への就労機会や障害の特性に応じた多様な就労の場の確保や就労に向けてのサポート体制・定着支援を充実していきます。 《主な施策の方向性》 ◎就労と職場定着への支援 障害者の雇用・就労に関係する労働施策と福祉施策が一体的に展開されていくよう、区やハローワーク、就労支援事業所などの関係機関によるネットワークや地域支援協議会がより有効に機能する仕組みを整備していきます。  「ほっと・サロン」は就労している知的障害の方の余暇活動の場を提供する事業です。就労している障害者同士がレクレーションをとおして交流を持つことで、仕事への活力を見出し就労継続につなげていきます。また、平成28年度からは、就労を目指す知的障害者の方も対象の一部とし、就労に対しての意欲の向上を目指します。 ◎工賃向上への取組み 福祉的就労については、「はあとの木」による自主製品の販売促進や、平成25年に施行された障害者優先調達法を踏まえた区の指針に基づく調達、工賃向上を目指した取組みを行います。 【主な取り組み(予定)】 ・障害者就労支援事業 ・チャレンジ雇用支援事業 ・障害者就労施設等からの物品等の調達方針の策定 ・「はあとの木」運営支援事業 ・「ほっとサロン」運営支援事業 《数値目標/管理指標》 【指標】 障害者就労支援事業を利用して一般就労した人数 ※基本計画における設定指標 【現状】 55人 【目標値(H32年度】 50人 施策E 社会参加の促進 《目指すべき姿/施策の目標》 日常生活を送るうえで支障をきたす3つのバリア(まち・情報・こころ)の解消を図っていきます。特に情報アクセシビリティを確保していくことは、障害者権利条約にも定められた重要な課題です。 障害者が自己実現を図りながらいきいきとした生活を送るために、文化活動・スポーツ活動に積極的に参加できるような環境整備を進めます。 《現状と課題》 「まち」については、交通機関その他の公共施設において、「東京都福祉のまちづくり条例」、「池袋駅地区バリアフリー基本構想」等に基づき福祉のまちづくりを進めています。まちのバリアフリーについては必ずしも十分ではなく、引き続き当事者の声に基づくバリアフリーの取り組みを進めていく必要があります。 ・まちのバリアフリーに《満足》は40.3%、《不満》は45.6%。《不満》がやや上回る。 ・外出時に危険を感じたことでは「自転車の通行」が最も多くあげられている。 「情報」については、障害者福祉のしおりの「点字版」・「音声コード」導入や区ホームページへの掲載、デイジー版の作成、手話通訳者の派遣などを行ってきました。情報へのアクセスは基本的な権利の一つであるとの認識を広め、障害特性に応じた多様なコミュニケーション手段を確保していく必要があります。  「こころ」については、障害者に対する理解を深めるための啓発広報等を推進するとともに、文化創造都市として、「ときめき想造展」を始めとしたさまざまなイベントや障害者アート教室を開催し、障害者の文化芸術活動を積極的に支援することで福祉と文化の融合を図っています。 ・「運動やスポーツに興味があり、すでに行っている」は27.7%、「運動やスポーツに興味があるが、行っていない」が44.5%。 《主な施策の方向性》 ◎あらゆる場?におけるアクセシビリティの向上 障害者が日常生活を送るうえで支障をきたす3つのバリア(まち・情報・こころ)を解消し、すべての人が地域で共に暮らせる社会を目指し、アクセシビリティの推進に取り組んでいきます。 ◎文化・スポーツ活動の振興 国際アート・カルチャー都市構想に基づき、障害者美術展をはじめ様々な発表や創作の機会を提供することにより障害者の文化・芸術活動を支援します。 2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会に向け、障害者スポーツの周知と障害者が身近な地域でスポーツを楽しむ機会を提供していきます。 【主な取り組み(予定)】 ・障害者の安全対策 ・池袋駅および駅周辺整備 ・情報アクセシビリティの推進 ・手話通訳者派遣事業・要約筆記者派遣事業 ・手話講習会 ・障害者文化活動推進事業 ・障害者スポーツ地域振興事業 《数値目標/管理指標》 【指標】 地域の方に「理解されている」「概ね理解されている」と回答している区民(障害者)の割合 ※基本計画における設定指標 【現状】 44.2% 【目標値(H32年度】46.5%