マンガの聖地で夢をかなえるのだ! マンガ家をめざす若者をまちぐるみで応援 「紫雲荘活用プロジェクト」 マンガ界の第一人者、手恷。虫氏、藤子不二雄A氏、藤子・F・不二雄氏、石ノ森章太郎氏、赤塚不二夫氏らのマンガ家が「トキワ荘」に住み、若手時代を過ごした南長崎地域。トキワ荘だけでは手狭になった赤塚氏が住居兼仕事場としてトキワ荘と同時に借りた「紫雲荘」は今も現存しています。この紫雲荘を活用して、まちぐるみでマンガ家のタマゴを応援するのが「紫雲荘活用プロジェクト」。今回は5月に入居した第3期生3名を中心にお話をお聞きしました。 [問い合わせ]文化観光課マンガ・アニメグループ電話4566-2758 巣立て!マンガ家。ぼくたち紫雲荘3期生! 紫雲荘の仲間は最高のライバル 高橋和希さん 27歳  会社員になってもマンガ家への夢を捨てきれずにいたところ、テレビでプロジェクトを知り、すぐに「住まわせてください」と訪ねていきました。でも審査を受けてくださいと門前払いをくらって(笑)。仲間と切磋琢磨するトキワ荘には、以前からあこがれていました。実際、2人とは腹を割って話ができる、インターネットでは得られない関係です。特に立藤くんとは同じジャンルで新人賞を狙っているのですが、手の内を隠したりはしません。率直に批評もできるし、むしろお互いに高みを目指す良きライバルです。まちの人も歓迎会を開いてくれたり、八百屋さんでバナナをおまけしてくれたり、温かく見守ってくれるのがありがたいです。  地道にキャリアを重ねていく中で、自分の思いを投影させながら、かつ大勢の人に伝わる表現を見つけていきたいです。 チャンスをつかむために突き抜けたい! 藤原絵人さん 21歳  美大に通っていた頃は、日々煮え切らない思いを抱えていました。大学を辞め、生活のあてがない時に出会ったのがこのプロジェクトです。池袋に近くて実質2万円という家賃は大きな魅力ですね。大家さんもおにぎりを差し入れてくれたり、第二の母のように接してくれます。そして何と言っても情報交換できる仲間の存在は大きいですよ。一人だと怠けてしまうので、〆切を公言して自分にカセをはめています。アイデアを話すと「そのキャラクターは違う性格かと思ったよ」など、自分では気づかない視点が返ってくることもあります。  ぼくは、とにかく早く売れたいですね。将来特撮関係にも関わっていきたいので、夢をかなえるために何にでもチャレンジするつもりです。時々「オレ、一生やっていけるのかな」と不安になります。でも仲間がいるとなんとかなる気がしてきます。それに赤塚先生のパワーでしょうか。どこかから「突き抜けろ!」という声が聞こえるんですよ(笑) この3年で最前線を目指します 立藤朋廣さん 23歳  2期生の方のTwitterでこのプロジェクトを知り、福岡から上京しました。売り込むにしても打合せをするにしても、出版社のある東京にはやはりチャンスがあります。特にここは出版社まで自転車で行けるような距離ですから。今までマンガ家は雲の上の存在でしたが、やればできるという感じがしています。今はトレーニング期間というより、この3年間で最前線に行くんだ!という気持ちです。  入居してまもなく、3人で腹を割って話したんですよ。とにかく2人が本気でマンガを描いていることがわかって刺激になりました。2人に負けずに自分もがんばろう!という気持ちになりますし、作品を誰よりも早く彼らに見てほしいと思うんです。ぼく自身、マンガから大きな影響を受けてきたので、ぼくも同様にメッセージ性のある作品を描きたいと思っています。自分の中にあるものを昇華して、大勢の人に感動してもらえるようになればうれしいです。 青春の1ページを後押ししてあげたい 紫雲荘の大家  大山朱実さん  このアパートが生まれたのは昭和34年。築50年以上になり一度は取壊しも考えましたが、地域の皆さんや区の情熱に後押しされ、今に至っています。にぎやかなことがお好きだった赤塚先生の部屋には、人を呼び寄せるパワーがあるのかもしれませんね。“紫雲”にも幸運を招き入れるという意味があるんですよ。  幸い1期生も2期生も、ここで過ごした時間を「楽しかった」「青春だった」と言ってくださいます。入居する皆さんは、多かれ少なかれ不安を感じています。そうした中から前進するきっかけをお手伝いできればと考えています。  私自身、子どものころトキワ荘に行ってマンガ家さんに遊んでいただいた記憶があります。生まれ育ったこのまちにトキワ荘が再建される日を楽しみに、これからもマンガ家のタマゴの皆さんを応援していきたいと思っています。 「トキワ荘」復元へ! (仮称)マンガの聖地としまミュージアム プロジェクト進行中  マンガの聖地としまの象徴として、地域へ・世界へマンガ・アニメ文化を発信する拠点「(仮称)マンガの聖地としまミュージアム(トキワ荘復元施設)」を平成32(2020)年3月、南長崎花咲公園に開設します。トキワ荘の外観、マンガ家の住んだ居室を忠実に再現するほか、トキワ荘ゆかりの資料の展示などを予定しています。 [問い合わせ]当グループ電話4566-2758 トキワ荘のあったまち南長崎 散策ポイント 昭和のマンガ家たちゆかりのスポットが様々あります。 当時の面影を感じながら、まちあるきを楽しんでみませんか? 文化を通じて豊かなこころで暮らせるまちに としま南長崎トキワ荘協働プロジェクト協議会 会長 足立菊保さん 幹事長 羽場宏祐さん 広報担当 小出幹雄さん  この界わいは長く住み続ける人が多いと同時に、よその人を広く受け容れる風土があります。小学校でマンガやアニメのワークショップも行なっているのも、文化が心の糧になり、地域に愛着を持ってもらえればと考えるからです。そういう意味で、このまちが“小さなとしま”になることを目指しています。時間はかかるかもしれませんが、50年後、100年後にもいいまちだと言ってもらえるようになりたいものです。