===== P4-5 ===== 座談会 12月3〜9日は、「障害者週間」です やさしいつながりを感じられるまちへ 区では障害のある人も無い人もともに支え合うまちの実現に向けて、様々な事業を行っています。今回は、知的障害のあるお子さんをお持ちの区内在住の3名が集まり、座談会を開催。世代の異なる3名に、それぞれの生活や体験について語り合ってもらいました。 障害福祉課管理・政策推進グループ電話3981−1766 (写真右から) ●塚田 恵介さん 目白福祉作業所に通う家族の会「さつき会」会長。初めての男性会長として、作業所と行政側との調整などに尽力。40代の知的障害者のお子さんを持つ。 ●礒崎 たか子さん 豊島区手をつなぐ親の会会長。障害者が地域で自立して生活していくための創作や生産活動を支援するNPO法人「麦の家」理事長。50代の知的障害者のお子さんを持つ。 ●木村 日和さん 豊島区障害者地域支援協議会に当事者家族として参加。私立大学キャリアセンターでキャリアカウンセラーを務める。20代の知的障害者のお子さんを持つ。 [キャプション] ▲目白生活実習所分室「ぷらす」で座談会を開催 制度を活用して障害者の働く場を広げる −木村さんのお子さんは豊島区のチャレンジ雇用(※1)で経験を積んで、11月からは民間企業での仕事が決まったそうですね。 木村●チャレンジ雇用の任用期間の終わりが近づき、民間企業の就職活動をしましたが、なかなか決まらず本人はつらい思いをしたと思います。涙ぐみながらも「僕、次もがんばる」と言う姿を見て、働くということが彼にとってとても大事なことなのだと感じました。最終的に彼の意思が尊重されて、働ける職場ならと、民間企業で清掃の仕事をすることに決まりました。 −働くことへの目覚めはチャレンジ雇用がきっかけですか。 木村●はい。働いてお金をいただくという目標を持ったことが彼の意識の変化として大きいと思います。仕事が決まってすごくうれしそうです。 礒崎●障害者の雇用を促進するための障害者雇用制度(※2)は、とてもよくできた制度だと思うんですよ。ところが制度はあるけれど、その制度を利用する企業が少ない。そこが一番問題ですよね。今ならジョブコーチ支援事業(※3)というのもありますし、「意思の疎通がうまくいかないのでは」「仕事の内容を理解できないのでは」などの不安があるなら、こうした制度も利用して取り組んでいただけたらと思いますね。 障害者との関わりから生まれる変化 塚田●私は流通関係の企業に勤めていましたが、障害者の雇用には積極的でした。印象的だったのは、障害者を受け入れた職場の社員がすごく成長することです。最初は「仕方ないな」といった気持ちでやっていたと思うのですが、それがみるみる変わっていく。人間的な豊かさを得るという意味で恩恵を受けているのは、実は社員の方かもしれません。 木村●実は私も、息子を育ててすごく変わりました。それまでは「できない」ことにもどかしさを感じていたんです。それが今では、「できるようにするにはどうすればいい?」「できないならどんな道がある?」と柔軟に考えるようになりました。 塚田●私は息子のおかげで仕事一辺倒の人間から家庭を顧みるようになり、今があります。最初は息子の将来を非常に悲観していたのですが、小学校の校長先生の「障害があってもお子さんなりに成長していきますよ」という言葉に勇気をもらいました。それから休日は、仕事上の付き合いを一切やめて、子どもと過ごす時間のために使うようになりました。 礒崎●障害者と健常者の関係の理解が進めば、関わり方も変わってくるのかなと思います。雇用に関していえば、企業から「こういう仕事があるのだけれど」とご相談いただければ、私たちも協力できますし、そうしたつながりや連携こそが大事なのではないでしょうか。 誰もが輝くために社会や地域で支え合う 木村●私は息子が小学校のうちは、働きたくても働くことができませんでした。中学校に入って一人で通学ができるようになって、少しずつ仕事ができるようになって。今は様々なサポートが増えてきているのですが、障害が重ければそれだけ負担が多く、家族の社会参加は難しくなるのが実情ではないでしょうか。 礒崎●私の場合は娘の障害が最重度でしたので、小学校の時はまったく目が離せない状態でした。でも中学校に入ると先生やお友だちがとてもよく面倒をみてくださって、PTAに参加したのが社会的な活動の一歩だったかもしれません。PTA活動からのご縁で今の仕事があります。障害者に携わる仕事は、障害のある子どもを育ててきた私だからこそできることも多いと思っています。 塚田●私たちが子育てをしていた頃は、障害者や高齢者を社会や地域で支えるという意識がうすく、家族が犠牲になって面倒を見るといった考え方が強かったように思います。でも今は違います。制度やサポートを利用する、社会や地域で支え合うというように変わってきています。当事者である私たち自身も「家族が犠牲になって」という呪縛(じゅばく)から自由になりつつあると感じます。 やさしいつながりを感じられるまちへ −かつては家族が犠牲になったり、障害があることを公にするのがはばかられるといった時代もあったかと思います。その時代の変化について、どんな感覚をお持ちでしょうか。 礒崎●娘に障害が見つかった時は、この子がどのように生活していくのかを誰にも相談できず、すごく悩みました。親族には「どうしてあんな子がいるの?」「施設に入れた方がいい」などと言われたこともありました。障害者を極端に嫌がる人がいるのも事実ですけれど、今では知的障害者が制作した作品がアートとして注目されたり、車椅子の方がスポーツで活躍されているのが報道されたりして、障害があるとかないとか関係ないなと少しずつ皆さん感じてくださっているのではないでしょうか。でも健常者と同じように生活できるかといったらそうじゃない。駅のホームにエレベーターはあるけれど、すごく不便なところにあるのをみると、もう少し配慮があってもよいのではないかと思ってしまいます。 木村●そうですね。たぶん障害者に対する理解は進んできているけれど、どう接すればよいのだろう?障害がある人に本当に望ましいことはなんだろう?といった戸惑いが、まだまだ多くあるのかなと思います。例えば教育の場で、障害者と健常者の子どもたちが日常的に接する機会がある環境などが整うと、これから20年、30年先の障害者との関わり方も違ってくるのではないでしょうか。 塚田●知的障害者の場合、見た目では障害がわかりづらく、周りから誤解されやすいといったこともありますね。息子は喘息(ぜんそく)を持っていますが、コロナ禍でも本人は咳(せき)をする時に配慮することができないので、ひと目で喘息持ちだとわかるマークを用意しました。 礒崎●そうですね。車椅子に乗っていたり、白杖(はくじょう)をついていたりすればわかりますが、内部障害の場合は、例えばヘルプマークのような助けが必要であることを伝える工夫は有効だと感じます。ヘルプマークをつけているのを見たら、「ちょっと助けてほしい時があります」といった感じで捉えていただき、困っているようであればぜひ声をかけてもらえたらうれしいですね。 木村●息子を育てていく中で、私自身もヘルプ信号を出す大切さを知りました。一人で抱え込むのではなく、「困っています」「大変です」「助けてください」と言っていいんですよね。そうすると皆さん温かく手を差し伸べてくださり、そうしたやさしさに支えられてきました。障害者が安心して暮らせるまちであれば、多くの人にとってもやさしいつながりのある暮らしやすいまちになるのではないでしょうか。 (※1)チャレンジ雇用  障害のある方を「チャレンジ就業」として各自治体で採用し、一般企業の就労につなげる事業。 (※2)障害者雇用制度 障害者雇用促進法において定められた制度。障害者の安定的な雇用を目的としている。 (※3)ジョブコーチ支援事業  障害のある方が企業で働くにあたり、企業や障害者をサポートする事業のこと。 塚田さん 障害者を地域全体で支えるという意識に社会が変わってきましたね 礒崎さん 娘の様子を見ているうちに、前向きに考えられるようになりました 木村さん 困った時に声を掛け合える地域になってほしいです [キャプション] 木村さんのお子さんが通所していた 就労継続支援B型作業所「いけぶくろ茜の里」 礒崎さんが理事長をしている 「麦の家」で制作された商品 「働きたい」をサポートします 豊島区障害者就労支援事業 安心して働くことができるように、障害者の就労に関する相談や情報提供を行います。利用時間や対象者などの詳細は問い合わせてください。 [問い合わせ]障害福祉課施設・就労支援グループ電話3985−8330 就労支援の一例 ●就職活動支援 応募書類の作成や面接練習などを支援します。 ●就労継続支援 面談や職場訪問などを支援します。 ●企業支援 企業に対し、障害者雇用の促進などを支援します。 [キャプション] ▲YouTube としまななまる チャンネル 「豊島区の障害者就労支援事業」 ヘルプマーク・ヘルプカード をご存知ですか? ●ヘルプマーク…障害のある方や、義足を使用している方、内部障害の方など、外見からはわからなくても援助や配慮を必要としている方が身につけるものです。 ●ヘルプカード…持ち主の情報や支援してほしい内容を書き込むことができます。ヘルプカードの提示があったら、記載されている内容にそって支援をお願いします。 障害福祉課では、ヘルプマーク・カードを一緒に持ち歩くことができるケースを作成し、配布しています。 [キャプション] ▲YouTube としまななまる チャンネル 「障害者サポート講座」 ▲ヘルプカード ▲ヘルプマーク IKEBUSで行く! インクルーシブ公園ツアー 区制90周年事業として、児童発達支援施設に通う子どもを対象としたバスツアーを開催しています。障害の有無に関係なく一緒に遊べるインクルーシブ公園「としまキッズパーク」でのびのびと過ごし、子どもたちはいきいきとした顔をしていました。 [キャプション] イルカ児童園の皆さん ▲IKEBUSに 大興奮! ▲たくさんの絵本に囲まれてわくわく ▲ミニSLに乗って遊んだよ