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地元のクラシックファンに愛されるお店、ビブリオ.クラシック〜移転前レポート〜

地元のクラシックファンの人で賑わうお店「ビブリオ.クラシック」。
店内にあるたくさんのレコードの中から、自分の気分にぴったりの1枚を流してくれるお店です。
ビルの取り壊しのため移転することになったお店の最終日にお伺いし、マスターの新倉さんや、常連の市川さんにお話をお聞きしました。
移転前のお店の様子やビルの趣ある姿もお楽しみください。

明治通り沿いにひっそりと佇むレトロなビル。エレベーターで3階に上がり、目の前にあらわれた深緑の扉を開けると、そこにはたくさんのレコードに大きなスピーカー、ヴィンテージのグランドピアノが。

地元のクラシックファンの人で賑わうこのお店の名前は「ビブリオ.クラシック」。店内にあるたくさんのレコードの中から、自分の気分にぴったりの1枚を流してくれるお店です。入った時もちょうど、「この曲が聴きたい!」と、お客さんがマスターにリクエストをしているところでした。

実はこのお店は老朽化したビルの取り壊しのため移転することになり、お邪魔した日は移転前の最終日。お店を愛するお客さんが集まる中、マスターの新倉さんや、常連の市川さんにお話を伺いつつ、移転前のお店の様子やビルの趣ある姿を記録しました。

マスターのこだわりがつまったビブリオ.クラシック

マスターの新倉さん

 

新倉さんのクラシックとの出会いは小学生の時でした。

ー「小学校高学年のときに音楽の時間で鑑賞課題があったんです。その時チャイコフスキーの”アンダンテカンタービレ”が流れてきて、素敵な曲だなと思ったのがクラシックに興味を持ったきっかけでしたね。そのあと学校の先生に教えてもらってレコードを購入したところ、裏面の”死と乙女”がさらに良くて、そこからクラシックにはまっていきました。大人になって働き始めてからはレコードを集めるようになって、そうして30数年間集めたレコードがおよそ1万2000枚。この集めてきたレコードを人に聞いてもらえる場所を作りたいと思って、定年後にこのお店をはじめたんです」

店内の棚にはずらっとたくさんのレコードが並び、そのすべてが新倉さんのコレクションです。全レコードはデータベース化されており、まるで図書館で本の検索をするように、タイトルや作曲者名で曲の検索ができるようになっているんだそう。

ー「クラシック初心者の方でもリクエストしやすいように、こんなリストも作っていますよ」

そう言うと新倉さんは、全レコードのリストをまとめた分厚いファイルと、初心者向けに作られた、クラシック音楽を気軽に楽しむためのリストのファイルを持ってきてくれました。2つめのファイルの中身はフィギュアスケートでよく使われるクラシック曲リスト、ドラマ”のだめカンタービレ”で使用された曲リスト、また心理テストで判断するオススメ作曲家など面白いものがたくさん! どんな人にでもクラシックを楽しんでもらいたいという、新倉さんのあたたかい心遣いを感じます。

ー「今日の気分を伝えてくれたらこちらでオススメを選んだりもします。初心者の方が気軽な気持ちでまずは聴いて、そして自分のお気に入りの曲を見つけてくれたらと思っています」

新倉さんこだわりのオーディオ機器

店内に置かれたヴィンテージのピアノは1936年製のベヒシュタイン・グランド・ピアノ

人々に愛される場所

豊島区要町の自宅や都内のカフェで、発酵やパンのお料理教室をしている常連の市川さん。お店に入ったきっかけは、雑司が谷在住のお友だちから「おもしろいお店ができたよ~!」と連れて行ってもらったことだそうです。
市川さんはお店に並々ならぬ想いがあるとのこと。その想いについてコメントをいただきました。

市川さん(写真右)

 

古いビルの一室に一歩足を踏み入れたら、そこには、想像を超えた豊かな音楽の世界が待っていて、大げさじゃなくて本当に感動しました。
親戚のおじさまの書斎にお邪魔したみたいな感じで、ジブリからでてきたような、サスペンダーをしたグレイヘアのとてもステキなおじさま(店主の新倉さん)が、笑顔でとびきりの美味しい紅茶をいれて下さり、「さて今日はどんな感じがよろしいですか?」と優しく聞いてくれて、気分に合わせたレコードを、すごい設備のオーディオで、さりげなくかけてくださる。元エンジニアだった新倉さんが自ら、組み立てられた特別な音響セットは、すぐ目の前でオーケストラが演奏してくれているような臨場感があって、普段はCDやyoutubeしか聞かないので、まず音の凄さに驚きました!
『レコードの音色は単一じゃなくて柔らかくて、温かみや深みがある』ということを知りました。壁一面びっしりある、一万枚越えのレコードの中から、「確かこのへんだったかな~?」と、おっしゃりながら、お目当ての一万分のたったの一枚を、それはどんぴしゃり正確に、取り出してくれるのを見るのも、とてもワクワクします。ドラえもんが四次元ポケットから、のび太くんにピッタリの道具をだす時、きっとのび太くんはこんな気持ちだったんじゃなかろうか?と思っています(笑)

移転前最終日にリクエストしたのは、ソプラノ歌手リタ・シュトライヒのレコード

 

わたしは、クラシックは好きですが、曲名はよく知らないし、たまに誘われてコンサートに行く位の、超がつく初心者です。CMでかかってたあれ、あの、ってふふふ~ん♪と口ずさんで、ああ、○○ですね!とかけていただいたこともありますし、今日は春っぽい明るい気持ちになるもので、とか、木村伊兵衛のパリ展を観に行った後に立ち寄った時は、美術館の図録もいろいろお持ちでいらっしゃるので、図録も見せていただきながら、ガーシュインの『パリのアメリカ人』をかけてくださったりして。「ボクがパリに行った時にはね~」と、街のお話もしてくださり、クラシックが詳しくなくても、とっても楽しめます。

 

レコードだけではなく、お店にはスタンウェイ(アメリカ)、ベーゼンドルファー(オーストリア)に並ぶ、世界三大ピアノの一つ、ドイツが誇るベヒシュタインが置いてあります。スタンウェイが大ホールでの音量を追及した華やかな音色、ベーゼンドルファーが柔らかく色彩感があり室内楽に向いている音色と表現される中、ベヒシュタインは、『音が消えてゆく時の美しさを表現できる透明感のある音色』なのだそうです。音楽家じゃないのでわかりませんが、唯一無二感がすごすぎます! また、消えていく美しさや儚さを愛でるのは、日本人が好む、得意とするところでもあるなぁと感じます。ドビュッシーはこの点を評価して”ピアノ音楽はベヒシュタインだけのために書かれるべきだ!”という言葉を残しているほどです。

そんなすごいピアノの音色を聴けるクリスマスコンサートや、周年コンサートなども開催されています。すぐ目の前に鍵盤が見える距離で、透明感のあるベヒシュタインの音色を堪能できるコンサートにも、家族や友人と何度かお邪魔させていただきました。ちなみに、首都圏でベヒシュタインが聴ける主な公共の音楽ホールは※杉並公会堂、ティアラこうとう、吉祥寺北コミュニティセンターと、雑司が谷のビブリオクラシックさんとなっております!(貴重!)
※ベヒシュタイン公式ホームページより

 

1人でも、友人と一緒に行っても楽しめる。折りに触れて訪れたい、通い続けたい、とても大切なお店です。
わたしは、普段は小学校で講師をしたり、お料理教室を主宰したりしているのですが、実はレコードに興味をもったことがきっかけで、とあるプロジェクトにも携わることに!それはまた、後篇に続きます。

ビルの壁は陶器の焼きタイルで、これはもう作られていないものだそう

昭和の雰囲気を感じるエレベーター

今回語っていただいた市川さんをはじめとして、「ビブリオ.クラシック」はたくさんの情熱的なお客さんに愛されているお店です。
お店のあったレトロな雰囲気のビルは残念ながら取り壊されてしまいますが、喜ばしいことにお店の引越し先は今と変わらず雑司ヶ谷エリアなんだとか。その理由について、新倉さんはこう語ります。

ー「渋谷、新宿、池袋などのターミナル駅はガヤガヤしていて、クラシックという雰囲気ではないですが、そこから歩いていける距離というのが理想としてあったんです。雑司が谷は池袋から歩いて来れる場所でしょう。それに落ち着いているからとても気に入っているんです。よくきてくれるお客さんもいるし、この街に愛着があるんですよ」

引っ越してからの「ビブリオ.クラシック」について、そして市川さんの関わったプロジェクトについては後編の新店舗でのレポートでご紹介します。

文:来馬涼子

 

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更新日:2021年3月30日