ホーム > 区政情報 > 重点プロジェクト > 「わたしらしく、暮らせるまち。」から「SDGs未来都市」へ > としまなひとびと - としまscope > マスターの優しさと音楽へのこだわりに溢れるお店、ビブリオ.クラシック~移転後レポート~
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地元のクラシックファンの人で賑わうお店「ビブリオ.クラシック」。
店内にあるたくさんのレコードを、マスターこだわりのオーディオ機器で堪能できるお店です。
クラシック初心者からマニアまでたくさんの人に愛され、移転する際も多くの人の協力があったそうです。
前回に引き続きマスターの新倉さん、常連客の市川さんにお話をお聞きしました。
<前編>はこちら
副都心線の雑司ヶ谷駅2番出口から2分。明治通り沿いを歩くと見えてきたのは、「ビブリオ.クラシック」と書かれた深緑色の看板です。エレベーターで3階に上がり、品のある緑色の扉を開けると、素敵なマスターが優しく出迎えてくれました。
移転前の店舗から通りを面して向かいに引っ越した「ビブリオ.クラシック」は、地元のクラシックファンの人たちに愛される名店。3月22日より本格的に営業再開となったお店に伺い、マスターの新倉さん、常連客の市川さんのお話をお聞きしました。
関連記事:地元のクラシックファンに愛されるお店、ビブリオ.クラシック~移転前レポート~
マスターの新倉さん
柔らかい表情でお客さんを迎える新倉さんですが、お店を”クラシック音楽が楽しめる空間にしたい”という想いは熱く、お店は並々ならぬ工夫で満ちています。
移転後の店舗での音へのこだわりは、どういったものがあったのでしょうか?
ー「まずは音の調整ですね。移転前と後とでは部屋の広さ、天井の高さやレイアウトが違うので音の聴こえ方も異なります。スピーカーの位置や方向を少しづつ変えてみたり、アナログプレーヤーやアンプの調整を一からやり直しました。
あとは防音対策。防音ドアの設置と、窓を特注の三重窓にしたんですよ。それと別の意味で今回こだわったのはトイレですね。トイレの音は利用する側も、店内で音楽を聴いている側も気になってしまうという女性のお客様からの声があったんです。自分では気が付きづらい視点でしたが、使う人が遠慮しなくていいというのは”なるほど”と思いました。ですからトイレの防音はかなりしっかりやったんです」
こだわりは音だけではありません。移転前のお店でも棚やテーブルなど、ピアノとイス以外の全てをマスター自らDIYしていましたが、今回新たに作ったものも多いんだとか。
ー「お店のシンボルでもある深緑の扉は新しく特注したものになります。移転前と雰囲気を揃えたくて、前に使っていた扉から飾りのモールを外して付けてみたりしてね。それと新しく本棚やキャビネットなんかも自作しました。店内の雰囲気に合わせて白や深緑、茶色といった落ち着いた色調にまとめています」
レコードが収納された棚はまさに書庫のよう!その上には展覧会の図録などの美術書が。最上部の本棚は、音楽書用に新たに作ったものです
移転前からあるピアノは一度分解し、運んでから組み立てたそうです
ー「引越しの際は大変な作業も多かったんですが、お客さんが”手伝いたい!”と手をあげてくれて、色々助けてもらいました。そんな様子を見て、窓の職人さんから
『こんなに手伝ってくれる人がいるなんて羨ましい。自分もそんな人になりたいです』と言われて。手伝いたいと思ってもらえるお店づくりができているのは嬉しいなと思いました」
音響やお店の雰囲気を追求し続ける新倉さん。しかしお店の敷居は決して高いわけではなく、フレンドリーで誰しもが音楽を楽しめる空間です。
それはマスターのあたたかくやさしい人柄と、音楽へのこだわりのなせる技。
移転についてのお話を聞く中で、お店や新倉さんがたくさんのお客さんに愛されているのが伝わってきました。
今回の取材では、常連の市川さんと一緒に自粛明けのお店にお伺いしました。
前回に引き続き、常連の市川さんからコメントをいただきましたのでご紹介します。
市川さん(写真右)
『新しいお店の移転先は、同じ街がいいと思ってるんですよ』
そんなことを移転計画が上がった時に、お話しされていた新倉さん。
同じ街どころか、前のお店の通りを一本挟んだ向かい側に店舗が見つかり、再スタートを切られることになったなんて、また新たなレジェンドを作ってくださりそうです!
新店舗にも早速お邪魔して参りましたが、入口のグリーンの扉から、テーブルは移設&同じものを自作されていて、前のお店の雰囲気はそっくりそのままに広くなり、快適さがとてもアップしていました。
オーディオ機器やピアノの運び込み、新店舗の準備の様子は、SNSでアップされ、ビブリオ.クラシックファンはわたしも含めて皆さん随時チェックしておりました。
ピアノの搬入が階段から簡単にできないことがわかり「げっ」となったり、クレーンを使っての搬入という別案を提案して「やっと設置できた!」など、投稿を見ながら新倉さんと共に一喜一憂して、新店舗ができるのを見守らせていただきました。
移転の際、常連さんも手伝いに来ていたそうで、力仕事は男性が、レコードの並び替えには元図書館勤務の方が、食器詰めは女性の方が、それぞれお手伝い。
お手伝いしたいと立候補される方が沢山いらっしゃって、これも新倉さんの人徳のなせる技なのですが、ビブリオ.クラシック好きな方は、ただのファンではなく、タダならぬ熱烈なファンなのであります!
気になる音環境ですが、設備は更に強化されていました。自作オーディオのチューニングは、元々の演奏をよくご存知の新倉さんだからこそできるのでしょう。
ホールで演奏されていたあの感じ!を再現するように、高音や低音のバランス、音の広がりと響きを多くのレコードを聴きながら調整されるのだそうです。凄すぎます!
SNSでアップされたピアノ搬入作業のようす。クレーンを使っての運び込み!
新倉さんこだわりのオーディオ機器
さて前編で、つづく!となっておりました、レコードの素晴らしさに目覚めたわたしのその後なのですが、ご縁あってお仕事として、早稲田大学の演劇博物館に所蔵されている明治~昭和時代の古いレコードを100年先にも聴けるように次世代に残していく、というプロジェクトに、本業の傍らではありましたが、携わることになったのです。
SPレコード※という、LPレコードより古い時代「蓄音機用レコード」というものがあるのですが、LPより重いのに割れやすいという特徴を持っていて、取り扱いには白い手袋をはめて、厳重に取扱います。
SPレコード…1948年頃にプラスチックを材料にmicro grooveで溝を刻んだLPレコード(long playing:LP)が登場して以降、それ以前の蓄音機用レコードを “standard playing” と呼んで区別するようになり、これを略した呼び名。(wikiより)
クラシック音楽も含め、能・狂言、歌舞伎、文楽などの日本の古典芸能、各国の民俗芸能、演芸まで、映像も残っていない、古いレコードの音声しかこの世にない音源を、デジタルアーカイブとして保存していくというプロジェクト。
日々、耳で聴き、ノイズを取り去り調整しながら電子化していくという、本当に夢のような楽しいお仕事でした!
そこで実際に役立ったのが、ビブリオで見ていた新倉さんのレコードの扱い方。
お仕事に携わる前に行われた面接では、「実際に日常的に扱ったことはありませんが、クラシックカフェでレコードを聴くのが好きで、レコードの柔らかい音色がとても好きです」
とお話ししたのが採用にプラスに働いたようです!この音源は演劇博物館のAV資料室内で、視聴できるようになっています。
レコードという新しい世界の扉をあけてくださった新倉さん。
現在、本業のお料理教室(のぞみんたべものきょうしつ(新しいウィンドウで開きます))の、新アトリエを建設中なのですが(6月オープン予定です!)レコードも聴けるようにできたらいいなと思っています。
ケーキとコーヒーや紅茶をいただきながら、クラシック音楽を聴く。
コロナ禍でしばらく休業もされていたので、ゆったりのんびりした時間を、また過ごせることのありがたみを噛み締めています。
コンサートに行かなくても、雑司ヶ谷のビブリオ.クラシックさんで、特別な時間を過ごせます。
ぜひ、一度訪れてみてください。
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これから活用していきたいという展示スペース
コーヒーや紅茶もとても美味しいお店です
最後にマスターの新倉さんに、今後やりたいことについてお伺いしました。
ー「お店に絵の展示ができるような白い壁のスペースを作ったんです。知人の画家や、まちで活動している地元アーティストの作品なんかを飾って、ミニギャラリーにできたらいいなと思って。コーヒーや紅茶を飲みながら、音楽や美術にゆっくり浸る。そんな空間にできたらいいなと考えています」
美術作品が展示されるとなると、よりいっそう芸術的な空間になりそう!とても楽しみですね。
マスターのあたたかさと、こだわりの詰まったDIYの空間、そして素敵なクラシック音楽に触れられるお店「ビブリオ.クラシック」。
このお店ならではの贅沢で落ち着いた時間を、皆さん味わってみてはいかがでしょうか。
ビブリオクラシック
https://www.biblioclassic.com/blank-1(新しいウィンドウで開きます)
文:来馬涼子
お問い合わせ
「わたしらしく、暮らせるまち。」推進室「わたしらしく、暮らせるまち。」推進グループ
電話番号:03-4566-2513