ホーム > 区政情報 > 重点プロジェクト > 「わたしらしく、暮らせるまち。」から「SDGs未来都市」へ > としまなひとびと - としまscope > 好きな場所で、好きなことをカタチに。自分らしい仕事のつくりかた。|JUBAN DO ONI代表 黒川紗恵子さん
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西池袋に近い、目白の閑静な住宅街。大家さんが手塩にかけた庭には季節の草花が咲きほこり、窓の向こうには歴史あるお屋敷街の木々を眺められる家に、建築家の夫と2匹の猫と暮らす黒川紗恵子さん。クラリネット奏者として、そして、長年の夢を形にした下着ブランド〈JUBAN DO ONI(ジュバンドーニ)〉代表として、暮らすこと、働くこと、そしてこのまちに期待することについてお話を伺いました。
緑いっぱいの素敵な家に暮らす黒川さんが、山手線の中でも屈指の、落ち着いた環境の住宅街である目白に引っ越してきたのは2011年のこと。はじめは、この「家」が魅力だったそうです。
ー「もともと、この家には友人が暮らしていて、遊びに来るたびにいいなと思っていたんです。家の造作も素敵ですし、窓の外の眺めも最高。引っ越しするなら声をかけてと友人にお願いしていました。それともうひとつ、私は音楽をやっているのですが、練習時にはどうしても大きな音がでてしまうんですよね。でも、ここの家の1階がもともと音楽教室として開放していたこともあり、ご近所さんとの関係も安心で。そしてついに、友人が引っ越すタイミングで、私たちがここで暮らせることになりました。気がつけば、もう6年になります。初めて目白の街に来たときに、パチンコ屋さんがなくて、とても落ち着いている環境だなと思ったのですが、住み始めて本当に暮らしやすいなと実感しています。池袋や高田馬場、雑司が谷にも歩いて行けるのですが、ちょっと足を延ばすとガラリと違う雰囲気のエリアに出られるのも楽しいですよね。また、山手線とは思えないほど、このあたりは緑が多いエリアだと思います。ハクビシンやたぬきをたまに見かけますし、家の庭には、しらさぎがやって来たことも!」
東京藝術大学在学中にブラジルに渡り、本場の音楽を体験することで学んで来たという黒川さん。現在はいくつかのバンドに在籍するほか、テレビや映像の音楽のレコーディングにも参加するなど、フリーランスのクラリネット奏者として活躍しています。そしてもうひとつは、昨年にスタートした下着のブランド〈JUBAN DO ONI(ジュバンドーニ)〉の代表としての顔。ほかの誰にもできない、ふたつの仕事はどのようにしてカタチになったのでしょうか。
ー「私の周りに、楽しそうに仕事をしている先輩がたくさんいたんですよね。それで、自分の好きなことを仕事にするのは、それほど特別なことではありませんでした。音楽も“こうでなくてはいけない”ということはなく、クラシックとジャズの中間のようなスタイル。たまに、何のジャンルですか?と聞かれると困ってしまうんですが(笑)。他にはいないから、自分たちの音楽は自分たちで自由につくっていけるという楽しさがあります。ニッチでマイナーな存在だとは思うんですが、必要としてくれる人はいて、同じ楽しさを共有してもらえることが喜び。そしてそれは下着〈JUBAN DO ONI(ジュバンドーニ)〉にも共通して言えることなんです。
もともと、20歳くらいの頃から、仕事はひとつでなくてはいけないとは思ってはいなくて、なにかもうひとつ好きなことを見つけられたらいいなとは考えてはいたのですが、下着を自分でつくり始めた頃は、まさか仕事になるとは思ってもみませんでした。心地よいと思うパンツがなくて、じゃあつくってみようと、既成のパンツを分解して研究、自分のためにつくりはじめたのがきっかけです。周りの人に感想をきいてみたり、パタンナーの友人に相談したりと、だんだんと本格的に。
そして、5年目にして、ついにブランドとしてスタートすることができました。研究・改良を重ねたパンツは、オーガニックコットンを採用し、縫い目は外側に、お腹にゴムは使用しないで、まるで履いてないかのような、圧迫感のない理想の履き心地に。
今のところ、たくさんの在庫は抱えられないので、主にインターネットでの販売です。ほとんど卸しはしていないのですが、徐々にリピーターの方も増えてきましたし、今後は卸しも視野に入れて仕事としてもう少し規模を大きくすることも考えているところなんです」
無理することなく、でも着実に自分のスタイルを確立して仕事に結びつけてきた黒川さん。憧れていた家に暮らし、住み心地も満足しているというこの街に、今後、期待することはなんでしょうか。
ー「あるとき、窓際でクラリネットの練習をしていたら、庭の向こうの家に暮らすイタリア人の方が手を振ってきてくれたことがありました。その方は自宅にて音楽会を開催するほどの音楽好きだということもあり、すぐに仲良くなって、お家に招いていただき演奏することに。とても幸せなハプニングでしたが、このような特別な体験ではなくても、日常で音楽に出会えるチャンスがたくさんあればいいなと思うんです。海外では公園などのオープンな場所で日常的に音楽に触れられる機会が多いのを目にしてきました。豊島区には多くの劇場があり、これからも増えるそうですが、“ここに来れば何か楽しいことに出会える”そういう街になっていけばいいなと期待しています。それは、海外から招聘されるような一流といわれる音楽家の演奏会だけでなく、まだまだ知られていないような素晴らしいミュージシャンのライブこそ、積極的に行われているような街になればと。50人とか100人とかそういう規模の場所がたくさんあって、いつでも気軽に演奏でき、聴きにもいけるような場所が増えるといいですね。ブラジルに住んでいた頃に体験したような、日常生活に音楽が溢れているような、そんな街になったら嬉しいです」
取材・文:田口みきこ
写真:西野正将
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