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「誰でも表現者になれる、おもしろいまちづくりのハブになりたい」―まちを巻き込む楽しさを作り続ける、くすのき荘の山本山田さんにインタビュー

外観

 今回は池ブルックリンさんととしまscopeの合同企画として、まちを巻き込んだ楽しいプロジェクトを

 多数開催しているシェアアトリエ『くすのき荘』の山本山田さんにお話をお聞きしました。

 (執筆:池ブルックリン/写真:としまscope編集部)

 

 

 

シェアアトリエ「くすのき荘」

イラスト

山本山田さん イラスト:織田博子

 

北池袋駅から徒歩5分。くすのき公園の横にたたずむ昔ながらの建物が、異彩を放っています。

 

これがシェアアトリエ「くすのき荘」。物々交換でご近所づきあいを生み出すイベントや、まちを巻き込むアート「10億円のメリーちゃん」を池ブルックリンの記事でも紹介しました。

 

「木賃ズ・トーーーク!」「地域のお祭りで流しそうめん・提灯づくり」など、ユニークな、まちを巻き込む楽しいプロジェクトを多数開催しているくすのき荘の山本直さん、山田絵美さん。

 

関連記事:池袋ローカルゲートに10億円の作品が搬入された(http://ikebrooklyn.jp/2020/03/13/localgate20200313/)

物々交換から生まれるご近所づきあい。「みそのわ」の新しい試み(http://ikebrooklyn.jp/2018/06/22/misonowa/)

 

今までリアルやSNSで「いつも面白いイベントをしている」という印象だったくすのき荘。

今回のお話を聞いたことで、そのクリエイティブな発想や、原点となっている考えを聞くことができ、「面白いだけじゃなく、文化を作っている」という印象になりました!

 

時代の最先端どころか、未来を歩いているお二人の言葉は、まちづくりに携わる人たちにインスピレーションを与えてくれます。そんな楽しいインタビューを、「豊島区を面白がるプロジェクト・池ブルックリン」の織田博子、めぐが記事にしてみました。

 

 おださん

<<織田さん>>

記事作成:織田博子(記事一覧http://ikebrooklyn.jp/tag/%E7%B9%94%E7%94%B0%E5%8D%9A%E5%AD%90/)

食を旅するイラストレーター/マンガ家。「世界家庭料理の旅」をテーマとして、ユーラシア大陸一周半旅行に行ってきました。

池ブルックリンでは絵と食べるの担当。

公式サイトはこちらマンガ「世界を旅する母ちゃん駒込で子育て」(しろいぶた書房)、旅のコミックエッセイ「女一匹シベリア鉄道の旅」、「女一匹シルクロードの旅」、「女一匹冬のシベリア鉄道の旅」「女一匹冬のシベリア鉄道特製余録」「北欧!自由気ままに子連れ旅」(イースト・プレス)出版。

 めぐさん

<<めぐさん>>

記事作成:めぐロッカー(記事一覧http://ikebrooklyn.jp/tag/%E3%82%81%E3%81%90%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC/)音楽や映画が好き。最近はキャンプやアウトドアにはまってます。

得意分野は、映像編集。

 

かんばん

レトロな風合いの看板

リース

「ハチ営業日」………何だろう、ハチって

しつない

あふれるクリエイティビティと楽しい雰囲気で、入り口から「ここは普通のアーティストレジデンスじゃない」と感じさせてくれます。

しょうどくえき

アルコール消毒装置も独創的です

 

階段をのぼっていき、リビングでお二人にお話を聞きました。

古くて新しいライフスタイル「木賃文化」を提唱する「くすのき荘」

たいだんのようす

くすのき荘を語るうえで必ず出てくるワード「木賃文化」について説明します。

 

「かみいけ木賃文化ネットワークは、豊島区上池袋地域にある木賃アパート「山田荘」の活用から始まったプロジェクトです。「足りないものはまちを使う」木賃の生活スタイルを木賃文化と考え、アクションと場と人をつなぎ、ネットワークが広がっていくことを目指しています。」―――サイトより引用

 

たとえば、山田荘にはお風呂がありません。でも、「お風呂がない」と考えるのではなく「まちの銭湯が私のお風呂」と考えるのが木賃文化流。自分の生活で“足りない”と感じることや機能を、空いている木賃や、まちのあらゆる場を使って楽しむライフスタイルの提案です。

まちの人が誰でも表現者になれるまちづくりをしたい

 

こういう場所を作ろうと思ったきっかけはなんですか?

〈山田さん(以下敬称略)〉―もともとは私が上池袋出身で、実家が所有していた木賃アパート「山田荘」を受け継ぎ、普通に賃貸するにはつまらないので、面白く使いたいと思っていました。しかし、ふと上池袋というまちを見た時、道路拡張や建物が短期間に壊されていく様があり「このまち、誰のためのまち?何かちがうんじゃないか」と思い、地元が嫌いでした。住んでる人が楽しくない、なにもない街という感じ。

やまださん

山田絵美さん

 

私は、大学では「世界遺産都市の保全計画」を研究していました。モデルはスペイン。生きているまちが、長く愛着をもって守られている理由を知りたかったんです。また、社会人になってからその感覚に近いと感じた、東京ー谷中、根津、千駄木の「芸工展※」の試みがユニークだと感じて、まちに住みながら事務局としてお手伝いをしました。

芸工展…東京ー谷中、根津、千駄木地域で1993年から開催されているアートプロジェクト。キーワードは「まちじゅうが展覧会場」。参加者は、趣旨に賛同する普通のひと、様々な職人、アーテイスト、お店、ワークショップ、学生等。ガイドマップを片手に裏路地に迷い込んで、今まで感じたことの無い気持ちや見過ごしていた景色、非日常とのノイズ、新たな発見や出会いを作り出す。

 

そこでは「まちのあらゆる場所が会場であり、まちの人、だれもが表現者になれる」という事を学びました。山田荘の使い方を考えつつ、2015年に近所の空き物件だったくすのき荘を新たに借りることになり、ここで「上池袋を、まちの人が誰でも表現者になれる、おもしろいまちにしたい。山田荘やくすのき荘はそのハブにする」という想いが形となり、かみいけ木賃文化ネットワークのコンセプトが生まれました。そこから一緒に山田荘やくすのき荘を使って活動する仲間(木賃メンバー)を集め始めました。

やまもとさん

山本直さん

 

〈山本〉僕はもともとは建築・設計事務所で働いていました。地方で開催されるアートプロジェクトの現地制作担当として、地元組織の方々や、地域のみなさんとコミュニケーションを取りながら、作品作りに関わっていました。

そこから「一見普通に見えるまちのひとが、一人一人がとても個性的で、創造性に溢れている」という、自分の暮らすまちで今活動する人たちの応援をしています。

 

お二人とも根底には「ふつうの人が表現者になる」というキーワードがあるんですね。

 

池袋で買える中で一番高い(10億円)作品『メリーちゃん』を納品するアートパフォーマンスの裏話ところで、山本さんといえば、「10億円の『メリーちゃん』※」のアートパフォーマンスが印象に残っています。池袋に激震が走りました。

メリーちゃん…かつては上野こども遊園地の看板となっていた回転木馬のモニュメント。2016年の遊園地閉鎖の後、縁あってくすのき荘に来たそう。 山本さんは、2020年3月に開催された、まちの人が池袋駅で出店する「池袋ローカルゲート」に、くすのき荘から「10億円のメリーちゃん」をうやうやしく運んできて、納品するというアートパフォーマンスを披露した。

 

関連記事:「池袋ローカルゲートに、10億円の作品が搬入された」(http://ikebrooklyn.jp/2020/03/13/localgate20200313/)

めりーちゃん

くすのき荘の1階においてあるメリーちゃん

 

〈山本〉池袋ローカルゲートに向けて、「木賃文化ランド」という遊園地を作ろうと準備を重ねていました。しかし、新型コロナウイルスの流行によりワークショップや対面のプログラムができなくなり、物販しかできないということになりました。でも、くすのき荘は物販するものがありません。そこで、「一流ブランド店もある池袋駅で買える物の中で一番高いもの」を売ろうと思い立ち、メリーちゃんを10億円で売ることにしました。10億円の「商品」なので、手軽にお客様が触れない設定にして、スーツ姿に手袋を着用しました。もちろん感染症対策としてちゃんと対策できるストーリーにしました。

いけぶくろ

たまたま納品された瞬間に池袋ローカルゲートにいたのですが、うやうやしく納品する山本さんの姿を見て、笑ったと同時に「これはアートパフォーマンスだ」と感じて記事にしたことを覚えています。

 

山本さんはとっても自然な感じでこうしたアートパフォーマンスをやられていますよね

 

〈山本〉僕がしていることは、既存の価値観から見るとちょっとずれていることに焦点を当てることです。くすのき荘も、まちの風景の中で少し異質なものとして作っています。

 

そういえば、上池袋の交差点で、メリーちゃんを運んでいる山本さんを目撃しました。なにか面白いことがこのまちで起こっている、と思いました。

ねこ

冒頭の「ハチ営業中」の「ハチ」はネコちゃんでした。普段は在宅勤務で、週1で出勤しているそうです。

 

「無目的な場所」から生まれる多様な文化

 

くすのき荘のメンバーはみな個性的ですが、彼らの才能が発揮されるためにこの場所で心がけていることがあったらお教えください。

メンバー

木賃ズと呼ばれるメンバーたち

 

 

〈山田〉使用目的を限定しないで、あえて無目的な場所にしています。メンバーによって、どう使ってもいい。

 

どんな使い方をする人がいますか。

 

〈山本〉劇場として使用したり、舞台衣装作家の作品展で身体表現パフォーマンスを行ったり。面白いのは「寝に来る」人です。正確には寝てしまう。女性が安心して、家以外で寝られる場所。そういう場所としてくすのき荘があることが面白いと思います。

 

あえて間仕切りを作らず、オープンになった工房が印象的です。空間をシェアすることはクリエイティビティにどのように影響を及ぼしますか?

アトリエ

〈山本〉メンバー間で刺激を与えあったり、違ったジャンルのものづくりをしている人の全く違う視点を取り入れることで、思わぬ発想が生まれたりすることがあるそうです。作ったもの、作った道具が見えて、その状況がシェアされていることが大切。もちろん、ものづくりだけではなく、このリビングで多様なメンバーで話し合うことで刺激をしあったり、コラボしたりが生まれていきます。

 

ここから生まれたプロジェクトはありますか?

 

〈山本〉メンバーであり、舞台美術家の中村友美さんと演出家の星茉理さん(はらぺこ満月)の「移動祝祭商店街まぼろし編」※はここから生まれました。※オンラインとオフラインを往復しながら“まぼろし”の「移動祝祭商店街」を立ち上げるアートプロジェクト。豊島区内の商店街が舞台となった。主催:フェスティバルトーキョーまた、このTシャツは、デザイナーの杉原仁さんと美術家の深山綾子さんによるオリジナルTシャツです。僕への誕生日プレゼントとしてサプライズで作ってくれました。

洋服

作品がふつうにリビングに飾ってありますね。なんの説明もなく……すごすぎる空間です。「表現することは敷居が高い」と感じている人たちが表現者に育っていくには、どのような試みをされていますか?

 

〈山本〉「みそのわ」や「マチの家庭科室」などは、参加型のワークショップで表現を身近に感じてもらえる企画です。表現というか、自分らしさをこうやって出せるんだ、と思ってもらうというか。木賃版「わたしらしく、暮らせるまち。」ですね(笑)

 

木賃メンバーは、1年ごとに募集していますが、半数以上が継続しています。最近嬉しかったのは、くすのき荘から卒業して、新しく拠点を作った人がいること。そのうちの一人は、活動場所として自ら木賃アパートの一室を借りました。

新しいことを始めるとき、例えばお店を作るために場所を借りて、改築して、開業準備をする…という大変な手間をかけるという方法があった。でも、木賃は比較的物件数も多く、安価に自分たちで新しく作っていける。今までと違う選択肢ができた、こんなやり方があるんだと気づいてもらったことが嬉しかったですし、そうやって既存の木賃が活かされるなら素敵なことです。100年後に木賃文化が重要な文化になるかもしれない、だからそのまま保存したいです。

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更新日:2021年5月21日