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豊島区内の障害福祉施設11事業所が、モノづくりを通してつながるネットワーク「はあとの木」。今回は「はあとの木」委員会の役員を務める斎藤健さん、天摩賢一さん、二川康大さんと、コーディネーターの加藤未礼さんにお話を伺いました。
「はあとの木」は豊島区の障害福祉施設を利用する知的・身体・精神・発達障害のある人たちの社会参加と、工賃(作業して得られる収入)を上げることを主な目的としてつくられたネットワークで、豊島区役所などで販売会を行っています。月に2回、豊島区役所で行われる定例のはあとの木マルシェのほか、年2回は全11の事業所が集まる拡大版の「はあとの木マルシェ+(プラス)」を開催。利用者が作ったアクセサリーやハンドメイド雑貨、パンやクッキーなどバラエティに富んだ商品が並び、イートインカフェや利用者によるワークショップなども行われています。
―「2007年に、豊島区の福祉事業として区内の事業所で何かいっしょにやりましょうと声をかけていただいて集まったのがきっかけで、はあとの木が始まりました。各事業所の目的や事業所の規模もバラバラなので、最初の頃はまとまってひとつのことをするというだけで大変でした。」(はあとの木委員会 委員長、ふれあいファクトリー「Caféふれあい」店長 斎藤健さん)
はあとの木に関わる各事業所のスタッフのほとんどは福祉の専門家で、モノを売ったり、販売したりということに関しては専門外です。そこで豊島区の紹介により、セレクトショップの店長などの経験をもち、福祉施設のコンサルタントとしても活躍する加藤未礼さんがコーディネーターとして参加するようになりました。
―「障害のある人が作っているモノを売る、ということだけで満足するのではなく、お客さんの目線に立って売ることや、商品そのものも工夫して魅力あるものにできないかということなどを、スタッフといっしょに考えています。たとえば、最初は“統一した値札を全商品につける”という基本的なところから始めました。また、事業所ごとに商品を並べるのではなく、まちの雑貨店のように商品のジャンル別に見やすくディスプレイし、毎回テーマを決めて、それに関連した商品を一番目に付く場所に置くようにしました。3月のマルシェだったらひな祭りとか、返礼品のシーズンだったらギフトにぴったりな商品を集めるといったように。
ただ、普通のお店と違って売れ筋の商品を作り、売上を上げればいいというものでもありません。商品に関していえば利用者さんの作れるもの、作りたいものがベースとなりますし、なによりも参加するみんなが楽しむことが大事です」(加藤未礼さん)
試行錯誤を繰り返し、回を重ねるごとにたくさんのお客様が来場するようになり、以前の福祉の販売会といったイメージから、“すてきなモノ、おしゃれなモノ、かわいいモノが売っていて、お菓子やコーヒーも楽しめるマルシェ”に変わっていきました。また、複数の事業所が協働してプロジェクトに参加することで、各事業所間のコミュニケーションも次第に深まっていったようです。
―「それまでは自分たちの施設のことで手一杯で、他の事業所のことまではよく知らないというところがありました。同じ福祉施設でも精神障害と知的障害ではかなり違いがありますが、マルシェや勉強会で顔を合わせて話をするようになってから、お互いをより理解できるようになりましたね」(はあとの木委員会 副委員長、あとりえ ゆうかり 天摩賢一さん)
―「スタッフもお揃いのTシャツやパーカーを作ったりして、ひとつになって何かをするというのはこれまでになかった経験です。マルシェ+は他の事業所が作っているモノを一度に見られるので楽しいですし、お互いに刺激にもなります。各事業所の個性や技術をマルシェ+やイベントで生かすにはどうしたらいいかと考えるようになりました」(はあとの木委員会 副委員長、共同作業所オーク 二川康大さん)
―「私のところはカフェをやっていてお客様との接点が多いので、どういうものが欲しいか聞いたりして、お客様の目線での考え方ができるようになりました。福祉関係のお店、ではなく、まちに普通に売っていてもお客様に興味をもってもらえるようなモノ、場所にするにはどうしたらいいかなどを考えるようになったのは、今までにない変化ですね」(斎藤さん)
マルシェ+などのイベントはイベント業者にはまかせず、自分たちで主体的に考えて行っています。
―「スタッフの方は慣れないことも多く大変だと思いますが、みんなが主体的に、いっしょになって動いているということがとても大事だと思います。誰かから言われてやるだけではバラバラになって手詰まりになってしまいます。マルシェ+が終わるたびに、ここはうまくいかなかったから次はこうしよう、これをやったらどうだろう?と話し合い、悩みながらも自分たちで解決してきたからこそ、ここまで続いてきたのだと思っています」(加藤さん)
区役所内で行うマルシェのほかに、豊島区が窓口となり、池袋マルイやISP(池袋ショッピングパーク)などでのイレギュラーな販売会も行ってきました。また、最近では区内の企業からノベルティ用のギフトセットの注文も増えてきているようです。「はあとの木」を通じて、人とモノ、人と人、障害のある人と社会とのつながりが枝葉のように広がっています。
2月28日豊島区役所で行われたマルシェの様子
「利用者さんの中には人前に出ることが難しい方もいますが、『緊張したけど知らない人と話して自信がついた、楽しかった』という方もいて、少しずつでも社会参加につなげていければいいなと思います」(加藤さん)
最後に「はあとの木」の将来の目標を伺うと、少し意外な答えが返ってきました。
―「目標はニューヨークです!『あとりえ ゆうかり』さんの作るビーズ製品や『オーク』さんの革細工など、まさに匠の技といえる技術があります。これをひとつの日本の文化として、ニューヨークなどにもっていきたい。福祉製品の枠を超え、魅力的なクラフトワークとして発信していきたいと思います。皆さんも、区役所内のブースやマルシェ、まちなかのお店などで『はあとの木』をみかけたら、ぜひ声をかけてくださいね」(加藤さん)
左から天摩賢一さん、齊藤健さん、加藤未礼さん、二川康大さん
文:切替智子
写真:西野正将
加藤未礼さん
コミュニケーションデザインワーク 「おおきな木」(新しいウィンドウで開きます)代表
一般社団法人「Talk Tree」代表
個人事業として、障害者福祉施設の商品企画・販売・ショップ・カフェ・アート活動・広報などのコンサルティング・コーディネートを行う。2015年より「はあとの木」のコーディネーターを務める。
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