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としま会議[2019 JUN]vol.40【大集合!祝40回記念スペシャル】|ゲストスピーカーのお話を聞いてきました

6月28日(金曜日)18時30分〜21時00分、としまセンタースクエア(豊島区役所 1F)にて、としま会議 [2019 JUN] vol.40【大集合!祝40回記念スペシャル】が開かれました。2014年のスタートから回を重ねてきたとしま会議。その軌跡を祝って、歴代の登壇者とともに多くの参加者が集いました。スペシャル企画として普段より多い7人のスピーカーが登壇した今回。その多彩なスピーチをお伝えします。《としま会議:豊島区の新しいプレーヤーが集まるトークライブ&パーティー》

動き出した3つの拠点が、椎名町・西池袋のまちをつなぐ

シーナと一平、アホウドリ、NishiikeMart 日神山 晃一さん(株式会社シーナタウン 代表取締役)

―「うっかりとしま会議に出て、リノベーションスクール@豊島区(まちづくりを目的に空き物件を活用したリノベーション事業のスクール)にも参加してみたら、人生が変わってしまいました」と当時を振り返るのは、2度目の登壇となる、日神山晃一さん。前回、インテリア・内装を扱う家業について紹介したのは2015年6月のこと。その頃に出会った4人の仲間と株式会社シーナタウンを設立したことで、日神山さんのワークスタイルは激変しました。

2015年10月に誕生したシーナタウンの基本理念は「まいにちを再編集」。あたりまえの価値を再編集しながら、“きっかけ”をつくる場所として、ひとつずつ拠点を増やし、まちの個性に合わせた事業を展開しています。初めて手がけたのは、リノベーションスクールの案件でもある《シーナと一平》(新しいウィンドウで開きます)。国内外の旅行客をまちぐるみでもてなす宿として、多国籍、多世代の人々が交差するきっかけを生み出しています。続いて2017年には、ケータリング・お弁当の拠点《アホウドリ》(新しいウィンドウで開きます)の運営をスタート。「誰かの仕事を食で支える仕事」をコンセプトに、改装した古民家で、“食”と“仕事”を創出する仕組みを作っています。

そして今春、築50年を越える木造マーケットの跡地をリノベーションして、3つ目の拠点となるNishiikeMartを開業しました。「再び笑顔の集まる場所になってほしい」という大家さんの願いを引き継ぎ、まちの人が集まるイベントを開きながらプランを練ること3年。ブリュワリー&パブ、ギャラリー、ラジオステーションを併設し、個性的な漫画家や画家が多く暮らした、椎名町と西池袋の文化を再編集して発信する、クリエイティブなサロンに仕上げました。

シーナタウンがまちに登場させた施設はどれもじつに個性的。まちに潜在するプレイヤーや大家さんとの連携を大切にしながら、個々の専門性を活かし、自分たちが実現したいことを少しずつ形にしてきました。―「4年前の僕が欲しがっていたのは“力”。でも活動を通して、力とは“人”だということがわかってきました」と語る日神山さん。有機的な場が身近に増えることに期待がふくらみます。

アーティスト×コラボレーションがつくる新たな可能性

東京獣舎 鈴木 掌さん(アーティスト、プロデューサー)

アートの世界に新境地を開く、アートプロデューサーの鈴木掌さん。かつてはファッションデザイナーの道を歩み、ウェディングドレスや舞台衣装の制作を手がけていましたが、当時痛切に感じていたのは「日本には自分の居場所がない」ということ。意を決した鈴木さんが選んだのは、青年海外協力隊/外務省日本NGO連携無償資金協力事業に従事するため、アフリカ・ルワンダに渡ることでした。

5年間、現地の人の自立支援として、デザインから縫製まで洋裁の技術指導に打ち込んだ鈴木さん。そのかたわら、バーを営んだり、音楽活動や映画出演をしたりと、ジャンルを越えた挑戦もしました。しかし、ルワンダの生活を満喫していたさなかに、襲撃事件に遭ってしまいます。資産の半分以上を失った鈴木さんは、大きな挫折感を背負って帰国。―「何もかもが嫌になってしまい、残っていたのは“絵”を描くことだけでした」と、苦悩の末、新たな道に進むことを決断します。

アーティストとなって3年目。鈴木さんがモチーフにするのは、アフリカの動物や人々、東アジアの龍や鳳凰などで、ライブペインティングや壁画・天井画などの大規模な作品を制作しています。一心に作品を描くうち、制作の場は全国各地に広がっていきました。アートを介してつながった音楽家やクリエイターと組んだグループ東京獣舎では、「ネオ東京」を意識したライブパフォーマンスを展開し、即興で唯一無二の空間を表現しています。

―「実は、探していた自分の居場所は、ルワンダにもありませんでした。でも、洋裁を教える弟子たちと一緒に暮らすうち、僕が誰かの居場所になれば、そこが自分の居場所にもなるんだという答えが出せたんです」と語る鈴木さん。つい先日、3年ぶりにルワンダに渡りました。現地の子どもたちに絵を教え、その作品を現金で買い取り、日本で販売する社会活動を始めたのです。なかには才能を発揮しながらも重い病を患う子どもも。絵の代金で手術を受けさせてあげたいと奔走しましたが間に合わず、命を落とした彼から鈴木さんは大きな学びを得ました。―「時間は有限。自分がやりたい事を思いきりやるために、今すぐ動こう」。豊島区でも多様なコラボレーションを次々と創出する鈴木さんの描く世界、ぜひホームページ(新しいウィンドウで開きます)をのぞいてみてくださいね。

求む、サンカクシャ。地域とともにある、孤立する子どもたちを支援するしくみ

サンカクシャ 荒井 佑介さん(NPO法人サンカクシャ 代表理事)

学生時代、ホームレスの男性に声をかけたのをきっかけに、荒井佑介さんは社会から孤立する人々に寄り添い、子どもの支援へと歩を進めてきました。―「大きな困難を抱える子どもたちに、まずは元気になってもらいたい」と語り、としま会議[2019 JAN]vol.35に登壇した際も今回も、気負いのない明るさが印象的な荒井さん。自分から援助を求めることのできない、孤立した子どもたちを支援するため、2016年、NPOを仲間とともに設立。そして、2019年5月には単身で独立し、NPO法人サンカクシャを立ち上げました。

家庭の事情で不登校となりほとんど学力が身についていない中学生や、妊娠・出産でドロップアウトする女の子など、子どもの力ではどうにもならない、負のスパイラルに陥った現状を、荒井さんは数多く見てきました。―「一時期だけの関わりではなく、細く長く支援を続ける必要があるんです」と訴えます。孤立する子どもたちに溶け込むように支援するうちに、孤立している子どもになかなか出会えないという課題も見えてきました。

「支援」の特性を前面に出しても、本当に支援を必要とする子どもには届かない――。そうしたジレンマを抱えるなかで荒井さんが手応えを感じたのは、「若者や子どもが興味関心のあることを、大人と一緒に楽しむ場」をつくることでした。専門家の協力を得て開催したゲーム制作イベントや料理教室、フットサル部を立ち上げて大人と対戦する機会をつくるなど、多様な大人と交わることで、子どもたちの生き生きとした姿を見ることができました。

―「特に支援が足りていない年代は高校生です」と現状を危惧する荒井さん。サンカクシャでは、社会との接点を切り拓こうと、家庭訪問や溜まり場に出向くなどして就職のサポートを行う一方で、協力したいと名乗り出てくれた大人とのマッチングを目指しています。「支援」を突き詰めて見えてきた「参画」の可能性。サンカクシャという団体名には荒井さんの期待が込められています。―「普段、子どもと接する機会のない大人にこそ参画してもらいたいし、あらゆるジャンルの方とコラボしていきたい」と結びました。

隣にある存在にもっと温もりを感じるために

こまごめ通信 柴田 悠紀さん(こまごめ通信 発起人、バリスタ)

駒込にある百塔珈琲Shimofuriの店長を務め(2019年6月まで)、日々コーヒーを淹れながら、店に訪れる人との何気ない交流を大切に育くんできた柴田悠紀さん。カフェの営みを通じて駒込の人々の魅力に触れるなかで、ある頃から、―「こんなに面白い人がたくさん住んでいるのに、駒込を意識的に楽しむ人が少ないのでは?」と感じるようになります。駅を中心に豊島区・北区・文京区が複雑に入り組む駒込は、まちなかのことが話題になっても、どこのエリアを指しているのかが曖昧になりがちなのだとか。そこで柴田さんは、ここが駒込です!と声を上げて、駒込のまちの輪郭を浮かび上がらせてみることにしました。

興味を示してくれたカフェのお客さんたちと何気ない日常を話題にし、やがて7人のメンバーでFacebookグループ《駒込を楽しみ隊》(新しいウィンドウで開きます)を立ち上げました。駒込に関わる人々がまちの情報を投稿するページは、あえて広報せずとも自然とメンバーが増え、240名を越えるまでに(2019年6月現在)。―「その自然な盛り上がりがいいな、面白いな、と眺めていました」と柴田さんはしみじみ語ります。

数年前、学生生活を送った長野県松本市を舞台に小説をつづり、短編集仕立てで松本のガイドブックを出版した柴田さん。その経験を生かして、駒込在住の漫画家、織田博子さんと共に、2019年4月、「こまごめ通信」を誕生させました。月一回発行される紙面には、駒込を愛する人々のまなざしで、まちの人の横顔や、飾り気のない暮らしの感覚がつづられています。―「地元以外の人が読んで、何が面白いの?となっても、地元の人が読むとすごく面白い。それがいいなと思っています」と柴田さん。商店街の店主が有志で増刷してくれるなど、こまごめ通信は、まちの人の手から手へと行き渡っています。

インターネットを検索すれば、あらゆる情報が手に入り、とかく実感を伴わない情報に埋もれがちな昨今。柴田さんは―「お子さんが、生まれて初めてあなたのために作ったインスタントコーヒーに、私の淹れたコーヒーは絶対にかなわない」とたとえながら、クオリティや流行への偏重に警鐘を鳴らします。―「自分の目の前にあるものを、自分の価値基準で評価することを大切にしたい。カフェがそうした価値を発見できる場所になればいいなと思っています」。バリスタとして新たな道を進みはじめる柴田さん。「まちはいつでもおもしろい」そして、「世界はいつでもおもしろい」とくくりました。

日本に息づく表装文化を、遺し、育み、もっと届けるために

マスミ東京 横尾 靖さん(株式会社マスミ東京 代表取締役社長)

大塚駅北口から折戸通りを進んだところに、掛軸、巻物、屏風などの表装を扱う《株式会社マスミ東京》(新しいウィンドウで開きます)はあります。先代が営んでいた襖の製造販売業は、戦後、活況に沸くも、ハウジング事情の激変によって苦境に追い込まれました。廃業もやむを得ない状況を知った横尾靖さんは、もったいないと考え、家業を継ぐことを決心しました。前職は大手電機メーカー勤めという横尾さんは、アフリカで通信網の整備プロジュエクトを指揮したキャリアの持ち主。表装の世界へと大きな転換を果たし、これまでにない切り口で、日本の伝統文化の継承に力を注いでいます。

右も左もわからぬまま足を踏み入れた表装の世界は、横尾さんにとって可能性に溢れていました。知れば知るほど奥深い表装文化。前職の駐在経験を生かして海外の美術館とのパイプを作り、各地の美術品の修復を自社の職人に託すなど、積極的に普及活動を展開してきました。こうした活動から、アメリカ合衆国公認のチョコレートブランドが、パッケージに和紙と桐でできたマスミの茶箱を採用することに。職人の熟練の技術が洋菓子とのコラボレーションで多くの人の手に渡るようになっています。

伝統文化を学びながら次々と販路を広げた横尾さん。自らの設計で商品化した、組み立て式の「茶室屏風」は、江戸時代に編み出された、屏風を立てて設える茶室の技法をヒントにしました。移動式の茶室で表装文化の継承に一石を投じた横尾さんは―「多くの人に茶室ならではの異空間を味わってもらえるのがうれしい」と、日本の茶室が海外でも高い評価を得ていることに手応えを感じています。

―「表装というのは、丁寧に手をかければ、誰でも作ることができるんです」と横尾さん。マスミでは伝統文化を学べる場として、さまざまな表装の体験教室を定期開催しています。屏風や掛軸などの表現技法の豊かさや、職人の技を体感してもらうことで、表装文化が現代の生活に溶け込むことを目指しています。―「とかく敷居が高いと思われがちですが、ぜひ気軽に立ち寄っていただきたいです」とのこと。かつて襖作りで使っていた室(むろ)は、壁に和紙を張り重ねたホールに生まれ変わり、コンサートなども開かれています。日本の伝統美、日常に取り入れてみたくなりました。

これからの時代のピアノ教室とそのネットワークの可能性

全日本ピアノ指導者協会(ピティナ) 福田 成康さん(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会 専務理事、株式会社東音企画 代表取締役)

巣鴨駅南口のすぐそばに位置する《株式会社東音企画》(新しいウィンドウで開きます)は、音楽教育を主軸に、国内におけるクラシック音楽のシーンを多角的に創ってきた企業です。ピアノ奏者の間で名高い《ピティナ(PTNA)》(新しいウィンドウで開きます)こと一般社団法人全日本ピアノ指導者協会は、東音企画から独立した団体。ピティナの専務理事と東音企画の代表取締役を兼務する福田成康さんは、指導者の研鑽の支援と、後進の育成に力を注いできました。

半世紀にわたって日本のピアノ教育に貢献してきたピティナ。その事業は、ピアノの先生向け(セミナー・eラーニング・ライセンス・生徒募集)と、生徒向け(コンクール・発表の場・先生紹介)を展開し、少子化の現代において、会員数は右肩上がりに増えています。全国に600を越える拠点を構え、コンクールは世界最大の規模を誇るまでになりました。―「大手の音楽教室に所属せず、個人事業としてピアノの指導にあたる先生は、当然主体性が高い。一方で、指導力を評価する基準がなく、自身の立ち位置を確立しにくいんです」と福田さん。そうしたデメリットを補うべく、学びやコミュニケーションの場を設けるなど、指導者の資質向上に取り組んでいます。

昨今、脳科学の分野でも学習効果の高さが認められているピアノ学習。―「それだけでなく、ステージに上がれば、ひとりで責任を取ることを経験できるのが演奏。大きなプレッシャーを乗り越える力が期待されています」と福田さんはピアノ教育の醍醐味を広めてきました。また、ピアノ教育のさらなる充実を図るため、レッスンの管理ツールや学習ツールなどの電子化にも取り組んでいます。―「音楽は世界共通の言語。これからのピアノ教育を、巣鴨から世界に広げていきたい」と、ピアノの学術面の顕在化を目指しています。

教育だけでなく、様々なコンサートのマネージメントも手がけてきた福田さん。レストランやオフィスビルの一角で開くコンサートから、丸の内仲通りで誰もがピアノに触れられるストリートピアノの企画まで、音楽を介した地域のプロモーションを行っています。今後は、そうした取り組みを巣鴨、大塚界隈でも展開したいとのこと。様々な可能性を秘めたピアノをもっと身近に。いつものまち中に、ピアノの音色が響く日が楽しみです。

公園とストリートからつくる、池袋のまちの新しい日常

nest  飯石 藍さん(株式会社nest 取締役、公共R不動産 コーディネーター)

飯石藍さんが豊島区民になったのは9年前。当初、まちへの関心は全くなかったという飯石さんですが、住んでいたシェアハウスのコミュニティを通して、まちのために行動する人々と知り合い、次第に暮らし方が変化していきました。遊休化した公共施設を民間の事業者とつなぐ《公共R不動産》(新しいウィンドウで開きます)の立ち上げに携わりながら、としま会議の発足や公民連携のリノベーションスクールまちづくり、日の出ファクトリーの立ち上げなどに次々と参画。―「としま会議をきっかけに、たくさんのプロジェクトとのつながりが生まれました」と振り返ります。

そんななか、相談をもちかけられた、南池袋公園リニューアルのプロジェクト。としま会議発起人の青木純さんを中心に、オープニングイベントを盛り上げるための企画を手がけることになります。ともすると、完成させること自体が目的となる公共空間。飯石さんたちは、イベントだけで終わらせず、オープン日から始まる、新しい「まちの風景」の創造を目指しました。たくさんの豊島区民が関わったこのプロジェクトを起点に、まちの人とつくり育てる活動の歯車が動き出します。

続いて始動したのは、グリーン大通りの賑わい創出プロジェクト。普段何気なく使う通りや公園を、もっと心地よい空間へと生まれ変わらせる、公民連携の大事業です。プロポーザルに応募するため、飯石さんたちは《株式会社nest》(新しいウィンドウで開きます)を設立。公共空間の活用方法を模索しながら、多くの人が体感できる「社会実験」を繰り返しました。イベントと称した実験は、nest marcheやIKEBUKURO LIVING LOOP、ストリートファニチャーの設置、キッチンカーを配してランチ需要や過ごしやすさを検証するSTREET DINING WEEKの開催など様々。地元企業の協力を得ながら、公民連携だからできる仕組みを築いていきました。

―「まちにたくさんの実験を散りばめていったら、いろいろな兆しが生まれてきました」と語る飯石さん。こうした取り組みを受けて、ハードの整備も始まっています。現在、植栽と照明のリニューアルが進むグリーン大通り。それを囲むようにして点在する4つの主要な公園が生まれ変わろうとしています。飯石さんは―「大きな計画を推し進めるのではなく、小さな実験を繰り返し、まちの人と一緒に、少しずつ空間の価値を上げていきたい」と呼びかけています。

この日の会場は、豊島区役所1階にある《としまセンタースクエア》。としま会議初となる、公共施設での開催となりました。広々とした空間を活かして、過去会場となった上池袋のくすのき荘から「木賃屋台 足りなさ荘」、西池袋のNishiikeMartから「コレデイイノダラジオ」が駆けつけるなど、40回記念スペシャルを盛り上げていました。

文/写真:後藤 菜穂

 

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更新日:2021年3月30日