資料第6号 「新たな障害者雇用モデルの実証実験」の報告【概要版】 1.実証実験の目的 新たな障害者雇用モデルの提案に向け、豊島区地域における有用性を検証するため、令和6年11月に「実証実験」を実施した。 モデル1 遠隔操作型分身ロボット雇用モデル モデル2 超短時間雇用モデル(豊島区版) 新たな障害者雇用モデルを活用することにより、「働きたくても働けない」から「この働き方なら働ける」といえる就労機会の創出を目的に取り組みを開始した。 2.実証実験の内容 ・令和6年9月6日に株式会社サンシャインシティと新たな障害者雇用モデルの実証実験に関する協定を締結。 ・令和6年11月中の1か月間、株式会社サンシャインシティ内に、実際に障害者が働く場を、実証実験のフィールドとして提供していただき、実験参加者などにアンケートを実施することで、効果検証を行った。 ※協定の正式名称:「豊島区と株式会社サンシャインシティとの障害者就労支援事業の実証実験に関する協定書」 実験モデル1 遠隔操作型分身ロボット雇用モデル 【対象者】障害等により、外出して就労することが困難な方 【内容】対象者が、自宅等遠隔地から分身型ロボット「OriHime」を介して、サンシャインシティ内で接客対応を行う。 「OriHime」の写真 ⒸOryLab Inc. 実験モデル2 長短時間雇用モデル(豊島区版) 【対象者】障害等により、長時間労働が困難な方 【内容】対象者が、サンシャインシティの事業所内で短時間就労を行う。 実証実験協力機関など ・豊島区地域支援協議会就労支援部会 ・都立北特別支援学校 ・近藤武夫教授(東京大学先端科学技術研究センター社会包摂システム分野) ・立教大学コミュニティ福祉学部 ・株式会社サンシャインシティ ・株式会社サンシャインエンタプライズ ・株式会社オリィ研究所 ・東日本電信電話株式会社 3.課題とその対策 遠隔操作型分身ロボット雇用モデル【1名】 【課題】 通信環境 接続不良が発生し、通信環境の調整に想定以上の時間が発生した。 設置環境 ロボット単体では、見守り位置や利用者に対する適切な距離が保てない。 操作・接客 障害特性によりスムーズな操作ができない。来場者(お客様)との対話が継続しない。 【対策】 通信環境 Wi-Fi設置場所の変更。ロボットの再起動。 設置環境 専用台の配置。わかりやすいポップの作成。 操作・接客 プログラムに組み込まれているリアクションボタンを押すことで、無反応にならないようにした。操作者の会話のヒントになるマニュアルの作成。 超短時間雇用モデル(豊島区版)【7名】 【課題】 事前準備 開始直前で不安の高まりから、辞退する参加者が1名発生した。 実験中 当初の想定を超える詳細なマニュアルが必要となった。 中核機能(コーディネート機能)超短時間雇用中核機関(超短時間雇用のコーディネート機関)として支援機関を想定したが負担が大きかった 【対策】 事前準備 全ての関係者に対する丁寧な理念共有が必要。 実験中 参加者の支援機関と連携しながら個々の障害特性に合わせたマニュアルを作成。 中核機能(コーディネート機能)豊島区障害者就労支援センターを暫定的な中核機関と見立てて運営。 4.有用性の検証 (1)定性的評価 ・関係者全員の満足度や評価が高い実証実験になった。 ・全体の81%が効果・成果を「とても思う」(最高)評価した (2)定量的評価 ・参加者の家族を含め、生活満足度が向上した。 ・世帯(参加者+家族)「生活満足度が150%向上した」 5.今後の方向性 (1)実証実験の成果 ・両モデルともに、実証実験の目的となる障害者が社会に参加する機会の創出につながり、意義のあるものになった。 ・実証実験での体験によって、自身の成長、社会参加の機会などを得ることができ、本人のみではなくその家族の生活満足度も向上した。 (2)見えてきた課題 遠隔操作型分身ロボット雇用モデル 話題性があり、企業のブランディング醸成は見込めるが、ロボットで就業可能な業務を切り出す必要がある。導入時には、操作者のフォローが必要であり、費用対効果が問われる。 超短時間雇用モデル 本人と企業をつなぐ、コーディネート機能(中核機関)が重要である。実証期間が短時間であったため、本人が過剰適応※した可能性があるため、就労につながるかの見極めには期間延長が必要。 ※過剰適応:周囲の期待や要求に過度に自分を合わせようとする心の状態 (3)今後の方向性 ・今回の実証実験の試みを契機とし、障害者雇用への社会的関心の更なる向上を図る。地域と連携した障害者雇用の機会の創 出につなげるため、今後も公民連携型の実装実験として、「フィールド」「参加人数」「検証期間」等を拡大して展開していく。 5.今後の方向性 (1) 実証実験の 成果 【豊島区障害者就労支援センター(豊島区 】 ・実証実験の結果、「遠隔操作型分身ロボット雇用モデル」「超短 時間雇用モデル(豊島区版)」は両モデルとも 、実証実験の目的となる障害者の社会に参加する機会の創出につながり、意義のあるものになった。 ・実証実験での体験 によって 、自身の成長、社会参加の機会などを得ることができ、本人のみではなくその家族の生活満足度も向上した。 【豊島区地域支援協議会就労支援部会(支援機関代表)】 令和6 年 11 月、就労支援センターの実証実験として「遠隔就労」と「超短時間雇用」の実証実験を豊島区区内の民間企業と連携して行う事となり、就労支援部会として超短時間雇用希望者の募集や超短時間雇用を行うにあたっての準備等に携わらせていただいた。 超短時間雇用モデルの実証実験への参加希望者は8名あったが、実際は7名となった。 この7名は予定通りの業務を遂行し、最期に感想をいただきましたが全体を通して見えてきた物もあったように思えます。 ・支援員側には「超短時間雇用」の趣旨や目的は理解していただけたが、当事者にはまだ イメージが伝わっていなかった ・当事にとっては訓練と雇用の違いはなく、遂行すべきタスクをこなすという状況は同じであった ・そのため訓練としての成果は「就労のイメージが付いた」「自分の現時点の評価に繋がった」「就労の可能性が見えた」「自分の課題が理解できた」などの主観的ではあるが前向きな自己評価に繋がった。これを今後の個人的な課題として取り組んでいき、将来的な就労に繋がる可能性が広がったと思われる。 ・就労として考えた場合、「業務指示をする」「業務指示を受ける」などのコミュニケーションの濃淡が出てしまい、これ をマニュアルで解消するには時間が必要である事がわかった。また、業務以外での通勤経路の説明が必要な人もいたりと、どこまでを本人の責任でどこからが雇用側の責任とするかのラインが不明確であったため、就労準備性の高低によって対応が変わってしまったように感じた。 しかし、終わってみれば、支援者側も当事者も「成長」に繋がったとの評価が多く、雇用する企業側も就労する当事者側も「超短時間での雇用」という選択肢があるという事の認識に繋がった事は大きな前進であると感じる。 これからの社会においては「はたらき方」を選択していくという時代が予想いう時代が予想される中、社会参加を目的とした「はたらき方」も選択肢になっていくと思される中、社会参加を目的とした「はたらき方」も選択肢になっていくと思われる。 それを進めていくにはマッチングの重要性が改めて重要であることが判明し、そこにどうアプローチしていくか、誰がその任務を担うかなど課題も明し、そこにどうアプローチしていくか、誰がその任務を担うかなど課題も明確になった有意義な実験であったと感じている。確になった有意義な実験であったと感じている。 【株式会社サンシャインシティ(企業)】 SDGs 未来都市豊島区の企業として「障がいのある方とその家族が安心できる社会とのつながりをつくり、障がいのある方が活躍する社会を実現したい」という想いのもと、複合施設だからこその就労価値があると考 え、産官学民連携により新たな雇用モデルの実証実験に挑戦しました。メディアからの反響も大きく、勤務された当事者の方々からも 「自信がつき働くイメージがわいた」、「この頻度や働き方であれば続けられる」といった自信や自己理解につながる言葉を頂き、当社含めた中小企業の雇用促進や豊島区のインクルーシブな社会への足掛かりとなったと認識しております。 (2)見えてきた課題(地域開拓促進コーディネーター所感)(地域開拓促進コーディネーター所感) ①「遠隔操作型分身ロボット雇用モデル」 今回使用したタイプのオリヒメ ロボットで対応可能な範囲が、対話による接客に限られるため、それに完全にマッチするような業務の切り出しが 、必要となる 。 今回は1か月という実証実験期間の中で、設置場所を3カ所試してみるなど、試験的要素が強かった。そのため、各設置場所におけるロボット による接客業務が、実際に「集客増」や「現場に出勤するスタッフの削減」というような 、定量的な効果にはあらわれていない 。むしろスタッフの負担という面では、パイロットのサポートにあたる業務も少なからず発生した。 話題性があり、企業のブランディング醸成は見込めるが 、企業が ロボットを導入する場合は、 ロボットでできる業務にマッチするような業務の切り出しとその費用対効果を吟味すること、およびそのための十分な期間が必要であると考える。 ②「超短時間雇用モデル(豊島区版)」 【各モデルのシフト(C)(D)(E)(F)】 超短時間雇用においては、振り返りの際に複数の参加者から、1 日あたりの勤務可能時間・ 1 週あたりの出勤可能日数等、自身の働き方に関する具体的イメージが描けるようになったとの声があがった。 この点から、今回の実証実験は自己理解に一定の効果があったことや、の点から、今回の実証実験は自己理解に一定の効果があったことや、勤務勤務時間の障壁を取り除くことは一般就労の可能性拡大につながることがわかる。時間の障壁を取り除くことは一般就労の可能性拡大につながることがわかる。 一方で、支援者からは次のような意見も挙げられた。就労支援機関の利用者は、数週間単位の企業における職場体験実習等に参加することがあるが、短期は、数週間単位の企業における職場体験実習等に参加することがあるが、短期間であるがゆえ、本人にとって困難な状況を調整せずに我慢してしまうことが間であるがゆえ、本人にとって困難な状況を調整せずに我慢してしまうことがある。また、体調に波がある場合、不安定な時期に勤務をした場合の状況が把ある。その結果、就職後に企業と握できないまま実習が終了してしまうこともある。その結果、就職後に企業と本人の間にミスマッチが生じてしまう事例も少なくない。本人の間にミスマッチが生じてしまう事例も少なくない。 上記を踏まえると、本人と企業をつな本人と企業をつなぐ、コーディネート機能(中核機関)が重要である。今回の実証実験では、本人・企業間の勤務条件をすりあわせて調整する機会が十分でないまま実証期間が終了となっているため、困難が生じた際の調整方法の検討も含めた十分な検証を行うためには、コーディネート機コーディネート機能(中核機関)を明確にした上で、より長期間の実証をするより長期間の実証をする必要となる必要となる 【各モデルのシフト(A B)】 超短時間雇用では、振り返りの際に、自分は働くことができないと思っていたが、今回の実証実験を通して、自分は働くことができると気付くきっかけになったとの声があがった。 なお、支援者からは実証実験が始まる前に、全出勤日に参加することができるか心配という声が 一定数上がっており、実証実験参加者が 全出勤日に出勤することに 対してハードルがあるということが課題になると想定されていた 。 しかし、今回の実証実験は、全出勤日に出勤することができた参加者が多かった。支援者と振り返り分析をしてみると、その理由として、今回の実証実験では一か月という限られた期間であったため、出勤日が少な く、参加者が過剰適用したことが考えられた。実際に、企業等で働く状況に近い形で効果検証を行うためには、より長時間の実証をする必要があるといえる。 ※過剰適用:周囲の期待や要求に過度に自分を合わせようとする心の状態 (3))今後の方向性今後の方向性 今回の実証実験の試みを契機とし、障害者雇用への社会的関心の更なる向上を図る。地域と連携した障害者障害者雇用雇用の機会の創出につなげるため、今後も公民連携型の実装実験として、「フィールド」「参加人数」「検証期間」等を拡大して展開していく。