===== P2-3 ===== 特集 みんなで紡ぐ としまの文化 区民の皆さんに豊かな文化芸術体験を届けるために、 区では様々な取組みを行っています。 皆さんもイベントへの支援や参加を通じて、 一緒にアートあふれるまちをつくりませんか。 東京芸術劇場 副館長 鈴木順子さん 豊島区長 高際みゆき としま未来文化財団 理事長 合場直人さん TALK SESSION 文化でまちをつなぐ豊島区の挑戦 豊島区では、毎年11月1日を「としま文化の日」と定め、文化を基軸としたまちづくりを推進しています。今回は、「としま文化の日」の意義やまちと文化のこれからの姿について、高際みゆき区長、鈴木順子東京芸術劇場副館長、合場直人としま未来文化財団理事長の3名が語り合いました。 豊島区の 新しい基本構想・基本計画はこちら 全文はこちら 6年目となる「としま文化の日」文化によるまちづくりをさらに発信 豊島区にとって「としま文化の日」はどのようなものですか? 高際 「としま文化の日」は、豊島区の文化を守り、育み、次世代に継承していこうという想いを区全体で共有する日です。令和2年より始まり、今年で6年目を迎えます。今年22年ぶりに策定した豊島区の新しい基本構想・基本計画でも、文化は大きな柱の1つ。みんなで文化を大事にしていこうという思いを例年以上に強く発信したいと考えています。 鈴木 自治体が独自に「文化の日」を制定する例は珍しいですよね。豊島区が文化に注力する姿勢を示す、素晴らしい取組みだと思います。池袋西口エリアにある東京芸術劇場も、その一員として豊島区を活気づけていきたいです。 合場 豊島区の新しい基本構想・基本計画では、多彩な文化を推進していくことが示されました。区と「としま未来文化財団」が“両輪”となって進めていくことが非常に重要です。連携を強めるためには、情報共有を密にし、信頼関係を築くことが欠かせません。また、今年は財団創立から40周年の節目。組織の存在意義を見つめ直し、変革を進めるとともに、文化の日に実施する事業を多くの方々と一緒に盛り上げていきたいです。 行政・企業・地域が手を取り合い幅広い人々に文化を届ける 地域や企業とはどのように連携していきますか? 高際 地域の文化団体だけでなく、学校や企業など、幅広く多様な団体と力を合わせながら、子ども・若者から高齢者、さらには障害のある方まで、文化の裾野を広げたいと考えています。「チームとしま」の参加企業とのつながりにも大いに期待しています。今年度「企業等による事業提案制度」を新設しましたが、企業がもつノウハウやネットワークを活かし、文化事業に積極的に関わっていただけることを願っています。 鈴木 当劇場も、学校や福祉団体と連携するなど社会共生の取組みを進めています。今後は企業との連携も進め、新しい仕組みをつくりたいと思っています。 合場 財団としては、区民の皆さんに一番近い存在を目指して活動していきたいです。まちを知り、人を知り、財団のことも知ってもらう。そうやって、地域の要望を拾い上げていくべきと感じています。 高際 私も同じ思いです。まちは時代とともに変わっていきます。その流れに置いていかれないよう、現場に出て区の魅力を発掘し、広く発信していくことが大切だと思います。 子どもをはじめ区民全員が文化の力で心を豊かに 基本計画の「文化の裾野を広げる」という言葉にはどのような意図があるのでしょうか? 高際 背景には、コロナ禍の3年間で浮き彫りになった「区民の孤独・孤立」があります。経済的な事情を抱えるご家庭、障害のある方、日本語が不自由な方だけでなく、生活に困っていると感じていない方々の中にも、人との交流が減少し、心の不調が見られました。この出来事をきっかけに、文化と人、人と人、“みんながつながる”まちを目指し、基本構想・基本計画において、「誰もが文化に触れられるまちづくり」を掲げました。暮らしの中に文化を広げて、区民の皆さんに文化芸術のもつ豊かさを届けていきたいですね。 鈴木 当劇場では「誰もが文化にアクセスできる」ことを意識し、入館してすぐの位置に「アクセシビリティデスク」を新設しました。障害のある方、高齢者、日本語が不自由な方などをサポートしています。これまで劇場に足を運びにくかった方々にも来ていただきやすくなったと思います。 合場 文化は心の栄養であり、日々の食事や住まいと同じくらい大切なものです。だから豊島区はコロナ禍でも「文化の灯を消さない」と強く宣言されてきたと思います。財団が運営する地域文化創造館※でも、幅広い人々に文化を届けるべく、区民の皆さんの声に耳を傾けて取組みを模索しています。 文化の裾野を広げるにあたって、特に力を入れるところはありますか? 鈴木 子どもたちに文化的な体験を届けたいですね。次世代への投資は、豊島区の未来のためにも必要なことです。 高際 その通りだと思います。新しいことを知り、好奇心を育む「学び」も文化体験の1つです。地域文化創造館や図書館を活用し、豊かな学びの機会を提供できる体制を強化したいと考えています。不登校の子どもでもアクセスしやすい、学校でも自宅でもない「第3の居場所」という意味でも広げていきたいです。 合場 財団では、今年から「としま文化応援団事業」を始めました。区民の皆さんや企業から賛同金を募り、その資金で文化団体や個人の活動を助成するものです。特に、子どもや若者が参加しやすい文化体験の場をつくることを目指しています。すべての子どもや若者が文化を体験できるきっかけにしたいですね。 高際 「としま文化応援団事業」は、体験する側と支える側の両方を応援する新しい仕組みです。区全体で文化を盛り上げていく風土を一層広げていきたいと思います。 多様な地域特性も活かしながら新しい文化を育む 豊島区には、最先端のカルチャーから伝統文化まで幅広い地域特性があります。 これを踏まえ、今後どのように文化施策を展開していくのでしょうか? 高際 池袋だけを見ても、東と西で異なるカラーの文化を持っています。東口はアニメなどのサブカルの聖地、西口は東京芸術劇場における一流の芸術。それぞれの地域には、特色ある伝統芸能やお祭りもあり、幅広い特性がありますね。文化の支え手も多く、多彩な活動が日々まちに彩りを添えています。「自分たちで文化を育てていく」という区民の皆さんの強い思いが、このまちの文化を支えていますよね。区は、その力を後押ししながら、文化の裾野をさらに広げていきたいです。 鈴木 当劇場の隣にある池袋西口公園には素敵な野外劇場があり、無料でコンサートが行われていることがあります。劇場から出てきたお客様が公園でも音楽を楽しむ光景はとても良い雰囲気です。 合場 都の施設(東京芸術劇場)が豊島区にあるというのを最大限活かし、まちに出ると文化を感じる、そんな雰囲気をつくれたら良いですよね。 高際 そうですね。「人」が主役のウォーカブルなまちづくりを推進している豊島区としては、“外”で音楽を聞いたり、色々な体験をしたりすることも大切にしています。各地域の持ち味を活かしながら、「まちなかに文化・芸術があふれる」豊島区をつくっていきたいですね。文化はまちづくり、教育、福祉などすべての分野に通じる大事な軸です。区民、地域団体、財団、劇場、企業が連携し、文化の力で今まで以上にまちを盛り上げていきます。 ※地域文化創造館…地域の皆さんが文化・学習活動や交流を通して豊かな地域社会の実現のために活動する施設(区内5館)。 TOICS 東京舞台芸術祭2025 11月3日(祝)まで 東京芸術劇場ほか 今年から生まれ変わった秋の東京を彩る東京舞台芸術祭。舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」は、演劇の街=池袋の東京芸術劇場を中心に開催されます。 問 東京都生活文化局文化振興部文化事業課 ?03-5000-7232/7233 (公財)東京都歴史文化財団 東京芸術劇場 事業企画課 ?03-6812-1638 としま未来文化財団の新事業 「としま文化応援団事業 」スタート 区では、今年、新たな基本構想・基本計画を策定し、誰もが文化に触れられるまちを目指しています。その実現に向けてとしま未来文化財団が新たに始める重要な事業が、「としま文化応援団事業」です。この事業は、子どもや若者が参加しやすい文化体験の場をつくることを目指すものです。区民の皆さんや企業の皆さんからご賛同をいただき、その支援金をもとに、文化団体や個人の文化芸術活動を支援する仕組みです。区ととしま未来文化財団と両輪で取り組むことで、質の高い文化体験を提供します。文化体験機会の拡充を目指す「としま文化応援団事業」の活動にご注目ください。支援活動助成金の募集要項や選考委員会区民委員募集要項など、詳細は2次元コードを参照してください。 問 としま未来文化財団・03-6914-2250 公募 多様な背景をもつ子ども・若者などに文化芸術体験を提供する活動を公募(新たな挑戦をしたい若いアーティストによる活動も積極的に支援) 賛同金 文化芸術活動を支援するため、賛同金を募集し活動を助成 COMMENT 文科のチカラで、まちと未来をつなぐ としま未来文化財団理事 花塚 久美子さん(株式会社小学館 専務取締役) 豊島区の魅力は多様な人・物・事を受け入れる包容力と豊かさであり、貴重で希少な文化体験が区内各所でできることだと思います。今期からスタートします「としま文化応援団事業」は、これら豊島区ならではの文化体験を子どもや若い世代を中心に提供し、次代を担う感性や想像力を養う種まきをするという、当財団の志高き事業です。これら体験を通して豊島区ファンが広がって、いずれは大きな実に育つことを願いつつ、出版業での私の経験がお役に立てますように及ばずながら努めてまいります。 花塚 久美子さんは令和7年6月に、東京芸術劇場 鈴木順子副館長とともにとしま未来文化財団の新理事に就任されました。 2 広報としま 令和7年(2025年)10月1日号 No.2109 3