文化・芸術の秋特集 心揺さぶる、文化の世界 文化・芸術を極めた、豊島区にゆかりのある方々へインタビュー。 その道を深く愛するからこそ知る魅力や、楽しむコツを教えていただきました。 皆さんも、文化・芸術を通して心揺さぶられる体験をしてみませんか。 狂言の世界 失敗も、愚かさも前向きに笑い飛ばす 「堅苦しさや敷居の高さはありません。フラットに楽しんでほしいです。」 狂言師 野村 万之丞さん 祖父野村萬(人間国宝)および父万蔵に師事。三兄弟の長男。若い世代への狂言の普及にも尽力。 狂言は人間の失敗や本音を笑いに変える喜劇です。現代社会では、ちょっとしたことがすぐに問題視され、SNSでの誹謗中傷や世間からのバッシングなどにより、息苦しい思いをしている人も多いと思います。そんな時代だからこそ、狂言の「失敗を笑い飛ばす寛容な姿勢」は心に響くはず。公演中はどこで笑ってもどこで拍手をしても構いません。忙しい日々に疲れた方には、ぜひストレスを吹き飛ばしに来てほしいですね。当家は豊島区に居を構えて約80年。最近は区内の小・中学校でアウトリーチ公演を行うなど、若い世代への文化の継承にも注力しています。幼少期に触れた「楽しかった」体験があれば、いつかまた狂言を観に来てもらえると信じています。私たち三兄弟が企画する「ふらっと狂言会」では公演前に簡単なあらすじなどを解説し、高度な知識がなくても“フラット”に楽しめる工夫をしています。ぜひ皆さんも気軽に、“ふらっと”観にいらしてください。 100点満点の理解を目指さなくてもいい 鑑賞中にわからない言葉があっても大丈夫!50〜60点の理解度でも十分ついていけるので、肩の力を抜いて楽しんでください。 狂言アウトリーチ公演 区立小・中学校を対象とした狂言の派遣型公演を実施しています。昨年度は小学校6校で、万之丞さんをはじめとした和泉流野村万蔵家による狂言「柿山伏」を、6年生が鑑賞しました。今年度は小学校8校で実施予定です。 演劇の世界 生きた感情を目の当たりにする 「劇場という非日常に自分の身を置く。それだけでも楽しいはず。」 劇場「シアターグリーン」 代表 朝比奈 文邃さん 南池袋にある仙行寺で住職を務めながら、劇場運営、演劇作品のプロデュースなどを手掛ける。 シアターグリーンは先代住職の時代に、池袋を文化人が集まる豊かなまちにしたいという思いから始まった劇場です。2005年には3つのシアターを持つ劇場へとリニューアル。ふらっと立ち寄った方が興味のある演目を選んで観劇できるようになりました。 演劇を観に行くという「非日常」はそれだけで楽しいものです。また、古来より演劇は人の心を癒してきました。例えば、私が主宰する劇団「ざ☆くりもん」では江戸を舞台に、自然への畏怖と感謝、人情の温かみといった日本の本来の良さを描いています。笑いあり涙ありのハートフルな物語は、観る人の心を整えて明日の活力となってくれるはずです。 小劇場での観劇には敷居の高さを感じる方もいるかもしれませんが、毎年9月に開催する池袋演劇祭のような、手軽に様々な演目に触れられる機会もあります。ぜひ一度劇場に来てみてください。 劇場が集まるまち としま 豊島区には大小様々な劇場がたくさんあります。一度近くの劇場へ足を運んでみれば、好みの作品や応援したくなる役者さんに出会えるかもしれません。 池袋演劇祭 演劇・劇場文化の裾野を広げるため平成元年から行われている地域に根差したユニークな演劇祭です。毎年9月の約1か月間に区内で公演を行う団体が参加、また一般公募で選出された審査員の採点により大賞をはじめとする各賞を決定します。 撮影…直江雨続 茶道の世界 最上のおもてなしを五感で味わう 「季節のお花や掛物、素敵なお茶碗。お茶をいただくほかにも、楽しみは尽きません。」 豊島区茶道華道文化連盟 松村 喜久子さん 18歳より茶道を始め約50年。 豊島区立目白庭園 赤鳥庵にて「かるがも茶席」を設ける。 親の勧めで習い始めましたが、お稽古を続けていくうちに茶道にはたくさんの魅力があることに気が付きました。私の一番の楽しみはお菓子。季節やお祝い事に合わせて色々なものを用意します。お茶とお菓子をいただくためだけに、ありったけの趣向を凝らして支度をする。この贅沢な体験が茶道の魅力です。 お茶の席やその前後では、静かな空間で心を落ち着ける以外に、会話を楽しむ温かな時間もあります。例えばお茶碗が作られた場所についての会話が旅行のきっかけになったり、掛物に込められた意味を考えたりと豊かな楽しみ方があります。和装をするのもその1つで、だんだんと着付けにも慣れていき、美しい所作が身につきます。 まずは、区の地域文化創造館でのお茶席や月釜などから、気軽に立ち寄っていただけたらうれしいです。 月釜でお茶席体験を 月釜は、寺社や茶室などで月に一度開かれる茶会です。洋服でも参加可能で、特別な道具も必要ありません。初めてのお茶席体験にうってつけです。 豊島区茶道華道文化連盟 1951年の設立より、豊島区での茶道・華道文化の普及・発展に努めています。華道分野では、区立小・中学校で日本文化を体験する機会を提供しています。また、毎年東京芸術劇場にて「いけばな彩花展」を開催しています。 書道の世界 筆遣いの美しさに魅了される 「読めなくても、見ていてかっこいいと思えればいいんです。」 豊島区書道会 井上 蓉花さん 豊島区にて井上蓉花書道教室を主宰。NHK文化センター講師も務める。 展覧会への出展や個展も多数。 作品の制作は、書きたいと思う文字を見つけるところから始まります。時代劇のセリフや、歌の歌詞などから気に入った言葉を書いてみることもあります。先日の展覧会では、作品を見て涙を流している方もいて、きっとその方の心に響いたのだと思い、うれしくなりました。 作品の中には、読めない文字や意味のわからない言葉もたくさんあると思いますが、書道は視覚芸術ですから「筆遣いや線の形がなんとなくかっこいいな」と思うだけでもいいんです。会派によって字形や書き方が全く異なるので、自分が好きな書体を探してみるのも楽しいと思います。 手ぬぐいやTシャツなどのデザインに使う筆文字を書かせていただくこともありますので、そこから興味を持ってもらうのもいいですね。 そして、見ているとだんだんと自分も書きたくなってくるはずです。日常から離れて没頭する、濃密な時間を過ごすことができますよ。 言葉の意味がわかればもっと面白い 書道作品では、偉人の言葉や詩などが引用されることが多いです。書かれた言葉の意味を調べると、作品の味わいがぐっと深まることでしょう。 豊島区総合美術展 12月8日(火)〜13日(日) 東京芸術劇場ギャラリー1・2 豊島区書道会、豊島区美術家協会、豊島区茶道華道文化連盟の展示です。書・美術・いけ花など、様々なジャンルの珠玉の作品をお楽しみください。 広報としま 令和8年(2026年)10月1日号 No.2133