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ふくろ祭り協議会 実行委員長 有山 茂明さん

更新日:2021年3月9日

インタビュー

大学を出て就職したんだけど、その時の社長からいつも言われていたのが「今はとにかく儲けることだけを考えろ。そして60を過ぎたら世のため人のためになることを考えろ」です。当時はさっぱり意味が分からなくて言われるたびにうるさく感じることもあったけど、60もとうに過ぎた今になってそうなんだろうなと、その意味が自分なりに分かるようになった。これまでいろいろな経験を積み重ねてきたけど、自分の原点は何かを考えるとその時の教えにたどり着きます。

ふくろ祭りに関わりを持ったのは私が30歳前後の時からですね。ちょうど「子ども縁日」というのが出来て、そこでいつも焼きそばを振る舞っていました。隠し味に○×△□なんかも少し混ぜてプロヴァンス風焼きそばって冗談で言ってたけど、子どもたちも喜んで食べてくれてね。毎年のように「おじさん、焼きそばを食べにきたよ」と声を掛けてもらえたこともあり嬉しかったね。

20年くらいそれをずっと続けていたんだけど、そのうち協議会の方で人手が足りなくなっちゃって祭りを運営する側にまわるようになりました。実行委員長になったのは2016年からです。節目となる50回目(2017年)があったり開催の日に台風の接近にやきもきしたりと毎年毎年、前のめりになりながらもなんとかこなしてきたところです。

私は実行委員長として4年間関わってきましたが、そろそろ次の世代のことも考えていかなければなりません。世の中が今後どのように変わっていくのかは分かりませんが、バトンタッチするのはしっかりした方向性を定めてからにしようと思っています。

ふくろ祭りの魅力は豊島区全体が盛り上がるところではないでしょうか。東京よさこいには毎回、約120チームが出場してくれますが、ローテーションを組んで池袋だけでなく巣鴨・大塚・目白でも踊りを披露しています。豊島区民のお祭りとして、ここまでのスケールで盛り上がれるっていうところが魅力だと私は感じています。

東アジア文化都市2019豊島の際は区長から中国・韓国の開会式でよさこいを披露してほしいと依頼がありました。大急ぎでメンバーを募って、1ヶ月くらい特訓を重ねて中国と韓国に行ってきました。

印象的だったのは中国に行った時で、会場はお城のようなところだったんだけどとにかく全てが大きい。さすが中国だと感じました。合間で現地の大学生たちが観光スポットを案内してくれたんだけど、どこかで見たことがあるような風景だなと思って記憶を探ってみると京都や奈良で見たような寺社なんだよね。日本の文化は歴史を紐解くと大陸から伝わってきたものだから、そのルーツというものを目の当たりにして感動しました。

地元のイベントをこういったかたちで海外に向けても披露したことが評価されて第1回の豊島区文化栄誉賞の受賞が決まったんだと聞いています。

しかし、こういった成果というのは私だけでなく色々な場面でサポートをしてくれた若手がいたからこそ成し遂げられたと思っています。受賞の知らせを聞いたときは本当に私でいいのか?という思いもありましたが、皆を束ねる役を勤め上げたということで指名されたのでしょう。

文化の灯をともし続けるために

振り返ってみると今年(2020年)の1月・2月の時点ではどうなるかな?という不安はあったけど、中止するまでのことでは…と疑問に思っていた部分もありました。そんななかオリンピックの中止が決定したというニュースが流れてきたことは衝撃が大きかったですね。大勢の人が集まることを実施するのはダメなんだろうなと残念な気持ちになりました。

中止を決定したのはゴールデン・ウィーク明けくらいの頃でしたが、当時はよさこいの練習ができるような施設は閉じられていることもあって、各チームでも東京よさこいに向けた練習は全くできていなかったのではないでしょうか。踊り手にとっては自分たちの演舞を披露する場所が失われることは本当に辛いことだと思います。しかし、状況が状況でしたので中止の決定はすんなりと受け入れてもらえました。

ふくろ祭りの開催は見送りましたが、次に向けてよさこいの各チームの意識をつなぎとめておきたいというのがあり「H(ひふみ※)-1グランプリ」の開催が持ち上がりました。

※ひふみ…東京よさこいオリジナル楽曲です。

イベントのオンライン化にあたっては初めての試みだったので不安だらけでした。インターネットの技術に関してはさっぱりだったので尚更です。しかし、ふくろ祭り協議会の若手を中心に多くの人たちのサポートもあって無事に成し遂げることができました。

開催を終えての感想ですが、やってみて良かったと思える手応え確かにはありました。全国から40作品を超える演舞の動画が送られてきましたが、今まで関わりのあったチームだけでなく今回初めて参加するチームのほかにアメリカ・フランスなど海外のチームからも応募がありました。「ひふみ」は確実に広まったという手応えを掴むとともに、インターネットの力というものを感じさせられました。

コロナ禍の影響でニュー・ノーマルというものが当たり前の時代になってくるなか「お祭り」はどうなるんだろう? という心配はあります。ひょっとしたら今までやってきたようなお祭りをするなんてとんでもないという事になるのかもしれない。

ただ、世の中には200回、300回とふくろ祭りよりも長く続いているお祭りもありますよね。そういうものが一斉に無くなる、なんてことは無いはず。地元の人たちが集まって元気になるような賑わいを作るというのがふくろ祭りの原点です。

イベントは時代に則してオンラインで映像配信するという流れがあってその効果は実感してもいます。でも、私はやっぱり今までのようなかたちで「ふくろ祭り」を開催したい。インターネットのアクセス数よりも実際に人が何人のお客さんが来て楽しんでくれたかの動員数の数字に心が躍る。それが私の正直な気持ちです。

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