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すすきみみずく物語

更新日:2021年3月9日

スポット

豊島区で古くから受け継がれてきた民話『雑司が谷鬼子母神の玩具すすきみみずく』を素材に再話された紙芝居「すすきみみずく」をご紹介しています。

紙芝居「すすきみみずく」とは(紙芝居の「はじめに」記載内容より)

紙芝居「すすきみみずく」は「郷土の口承文芸」豊島の民話(豊島図書館刊)から『雑司が谷鬼子母神の玩具すすきみみずく』を素材に再話し、図書館の親子読書会の母と子がいっしょに彫刻刀を持って木版彫りの「手作りの紙芝居」を完成しました。

豊島区立中央図書館では、これらのオリジナル作品を学校教育や社会教育の郷土資料として印刷、広く配付、郷土の民話をもっと多くの子どもたちに知ってもらい「こどもの夢」と「郷土愛」を育てていただくことをお願いするものです。

昭和五十四年十二月 豊島区立中央図書館長

紙芝居「すすきみみずく」

むかし、むかし、雑司(ぞうし)が谷(や)のもりに、鬼子母神(きしもじん)というおどうがあって、としをとった一ぴきのみみずくがすんでいました。

みみずくは、大きなめだまをぐるりぐるりとくいそうにはなしはじめました。

「みなさんや、みみずくちゅうもんは、よる、めをひからせて、ひるは、ねているとおもうじゃろ。まあ、そんなところはあるが、このわしはちがうぞ。ひるまも、ちゃーんとみはっておる。

さあ、わしのはなしをはじめよう。」

雑司(ぞうし)が谷(や)に、くめというむすめがいました。

くめが、ちょうど、十さいのときです。ある日くめとおかあさんは、鬼子母神(きしもじん)のさんどうで、すずめやきをうりながら、おとうさんのおそいかえりをまっていました。

もう、とっぷりと日もくれ、いままで、にぎやかだったさんどうには、ひとどおりがまったくありません。

「あんまり、おそくまではたらかないでくださいと、あれほどおねがいしておいたのに。」とおかあさんはしんぱいそうです。

くめのおとうさんは、すずめをおいかけていて、がけからあしをふみはずして、しんでしまったのでした。

もう、すずめをとってくるおとうさんはいません。おかあさんは、ないてばかりいられません。おとうさんのかわりに、いっしょうけんめいはたらきました。くめのねているくらいうちからおきて、はたけしごとをしました。ゆうがた、おもいあしをひきずってかえってくると、よるは、くらいあかりの下で、よその人のきものをぬうのでした。

まいにち、まいにち、くろうがつづきましたので、とうとう、びょうきでたおれてしまいました。

くめは、かみさまにおねがいしました。

「かみさま、どうか、おかあさんのびょうきをなおしてください。」

くめは、おかあさんのかわりに、いっしょうけんめいおいのりしました。けれども、おかあさんのびょうきは、わるくなるばかりでした。

くめは、おかあさんのかんびょうをしたり、たべていくために、はたらかなければなりません。

「ねんねよう おころりよう」

「ぼうずのなきごえがうるさい!

はやくでていけよ」

「すみません、すこし、あまやどりさせてください。

はなおがきれてしまったの。ぼろきれもください。」

「うるさい!ただでやれるものはない!」

やっと、やっと、あたりがくらくなりました。

「ごくろうだったね。」

あかちゃんのおかあさんから、こもりのおれいにいただいた、いもや、やさいをりょうてにかかえて、くめは、おかあさんのまっているうちへいそぎます。

よみちをあるいてきて、ぽーっとともったわがやのあかり……

なんとあたたかでしょう。

くめは、ほっとしてなきだしそうでした。

くめは、お百度(ひゃくど)まいりをおもいつきました。

「くめ、おまえのからだもだいじにしてね」

おかあさんは、ふとんの中から、よわよわしいこえでなんどもいいました。

くめは、あめの日も、かぜの日も、まいばんかけるようにして、鬼子母神(きしもじん)のおどうのまえをいってはおがみ、もどってはおがみ、百(ひゃく)かいくりかえしました。

お百度(ひゃくど)まいりをはじめてから、六十日たちました。

だんだん、さむさがましていきます。

小さいくめは、いっしょうけんめいでした。

八十日がたち、九十五日がすぎて、とうとう、満願(まんがん)の日がちかづいてきました。

あたりは、いちめん、すすきののっぱらになっていました。

「おかあさん、はやく、よくなって!」

満願(まんがん)の日のよる、くめは、とうとう、さんどうにたおれて、ねむってしまいました。

どのくらいたったでしょうか。

一ぴきのちょうがあらわれて

「くめや、おまえのきもちはよくわかりました。このあたりは、すすきのおおいところですから、これをかりとり、そのほで、みみずくをつくり、おどうのまえでうるとよいでしょう。」

はっと、めがさめると、鬼子母神(きしもじん)のけやきの上で、みみずくが「ホー ホー」とないています。

くめは、すすきのほで、みみずくをつくりはじめました。つくってはこわし、またつくり、なかなかできません。

「やさしいおかあさん、どうしてもなおってほしい」

くめは、いっしょうけんめいです。そのようすを、おかあさんは、ふとんの中からじーっとみていました。

すすきのほは、だんだんおかあさんのように、やさしいあたたかなかたちとなってできあがっていきました。

「すすきみみずくをかってくださいな」

「まあ、かわいい!」

「えんぎがいいんですって!」

鬼子母神(きしもじん)に、おまいりにきた人は、だれもがかってかえりました。

すすきみみずくは、大ひょうばん、つくればつくるほど、とぶようにうれました。

やっと、くめは、おかあさんをいしゃにみせることができました。

いもでんがく、やきだんご、おいしいものをたくさんたべさせてあげられるようになりました。

おかあさんのかおいろは、日ましによくなって、おきられるようになりました。

「くめ、ありがとう。これからは、おかあさんもいっしょに、すすきみみずくをつくるよ。」

くめは、しあわせでした。

鬼子母神(きしもじん)が、ちょうに、すがたをかえてたすけてくださったのだと、くめはおもいました。

そこで、かみをきり、ちょうをつくって、すすきみみずくにそえました。

これがまた、孝行(こうこう)ちょうとよばれて、よくうれました。

「すすきみみずくをかうと、くめのようなかんしんな子になれるんですって」

「びょうきもなおるよ」

「ながいきするよ」

「まよけにもなるの」

「さて、さて、わしのはなしは、これでおしまいじゃ」

けやきの木の上のおじいさんみみずくは、まんぞくそうにまるいむねをはって、うたをうたいはじめました。

すすきっぽォ

すすきっぽォ

みみずくつくろか

うさぎにしようか

よみせのみみずく

おおいばり

きっぽォ きっぽォ

すすきっぽォ

おわり

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