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更新日:2025年10月24日

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地方消費者行政の維持・強化のための対策を求める意見書

 令和6年版消費者白書によれば、2023年の消費生活相談件数は90.9万件であり、前々年の85.9万件に比べると約5万件増加している。消費者被害・トラブル額の推計は、2023年過去最高の約8.8兆円(前年約6.5兆円)に達した。65歳以上の相談件数が契約当事者全体の30.5%となり、高齢者の消費者被害・トラブルが大きな割合を占めている。被害態様についても、インターネット通販の「定期購入」に関する相談やSNSをきっかけとする被害の相談件数が過去最多となるなど多様化・高度化している。

 高齢者が自分で問題解決することは難しい場合が多いことや、多様化・高度化する消費者被害に対応するためには専門的知識や経験が必要であることなどから、住民にとって身近な地方公共団体の相談体制の維持・拡充が重要であることは明らかである。

 国は、地方に対する支援策として、地方消費者行政活性化交付金、地方消費者行政推進交付金(以下「推進交付金」という。)を措置した。推進交付金は、補助率10割で相談員の人件費にも充てることができるものであったが、地方消費者行政予算を徐々に自主財源に移行させる政策方針下で2017年に自治体ごとの活用期限が定められ、2018年以降は、現行の地方消費者行政強化交付金に移行した。

 消費者行政推進事業(以下「推進事業」という。)に対する強化交付金は推進交付金によって立ち上げた事業に対して推進交付金と同様に支援を継続するとされたが、上記活用期限もそのまま引き継がれた。

 推進交付金と推進事業に対する強化交付金は、啓発や消費者教育などの事業だけでなく、消費生活相談員の人件費にも充てることができることから、長い間消費者庁創設後に新設・増設された相談体制を下支えしてきた。

 しかし、全国的にその活用期限が迫っており、全国で、どこにいても専門家(消費生活相談員)による相談が受けられる体制を維持していくことができるのかが大きな課題となると指摘されている(日本消費経済新聞2023年12月5日号)。

推進事業分の強化交付金に引き継がれた交付期限は、地方公共団体における消費者行政予算を自主財源に移行するための呼び水として設定されたものだが、全国の地方公共団体の自主財源は、交付金がなくなっても現状の施策を維持できるほど十分な程度に達していない。

 このような状況のまま強化交付金が終了してしまうと、自主財源への移行が難しい小規模自治体において、相談窓口の維持が困難になる、あるいはそうでないとしても、交付金で実施してきた啓発・消費者教育、消費者被害防止対策等の事業の継続が困難となり、縮小される可能性が高いと予想される。

 また、国は2026年移行を目指して、PIO-NET刷新及び消費生活相談のデジタル化を進めているが、これらについては、地方公共団体に多大な経済的負担を生じることが危惧されており、その負担によっても消費生活相談業務をはじめとする地方消費者行政が縮小・後退するおそれがある。

 PIO-NET情報は、国の法執行の端緒や立法政策の根拠となるものであって国の事務の性質を有する消費者行政費用といえ、全国各地の消費生活相談情報の収集が適時・適切・安定的に行われることが国の消費者行政にとっても必要である。また、PIO-NET情報は、地方公共団体が相談窓口を維持し、多大なコストをかけて得られた貴重な情報であることから、地方と国のコストの分担の観点からも、国の費用負担が行われるべきである。

 よって、豊島区議会は、国民生活の安心安全を担う地方消費者行政が安定的に遂行されるよう、下記事項について強く要望する。

                  記

1 地方消費者行政推進事業に対する地方消費者行政強化交付金の交付期限を相当期間延長し、少なくとも、同交付金と同様に消費生活相談員の人件費にも充てることができる交付金等の財政支援を早急に措置すること。

2 PIO-NET刷新及び消費生活相談のデジタル化において地方公共団体に生じる費用を国において措置すること。

3 消費生活相談情報の聴取及びPIO-NET登録事務等、国と地方公共団体相互の利害に関係がある事務であって、国全体の消費者被害防止の意義を有する事務として円滑な運営を推進する必要があるものについて、地方財政法第10条を改正して国の恒常的な財政措置を検討すること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 令和7年10月24日
 豊島区議会議長 島村 高彦

衆議院議長

参議院議長

内閣総理大臣                 

内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)

財務大臣  あて