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更新日:2025年10月1日

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広報としま2025年10月1日号 特集 みんなで紡ぐ としまの文化

文化でまちをつなぐ豊島区の挑戦

豊島区では、毎年11月1日を「としま文化の日」と定め、文化を基軸としたまちづくりを推進しています。
今回は、「としま文化の日」の意義や区が描く未来像などについて、高際みゆき区長、鈴木順子東京芸術劇場副館長、合場直人としま未来文化財団理事長の3名が語り合いました。

広報としま10月1日号集合写真2

(左から合場直人さん、高際区長、鈴木順子さん)

対談者プロフィール

東京芸術劇場 副館長 鈴木 順子さん

東京芸術劇場 副館長。
サントリーホール、王子ホール、東京国際フォーラム等にて立ち上げ時の演奏会企画やホール運営に携わり、
「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」の総合プロデュースを担当。
2014年より東京芸術劇場に勤務し、コンサートホール・ジェネラルマネージャーとして劇場自主事業を推進、2021年より副館長に就任。

東京芸術劇場公式HP(新しいウィンドウで開きます)

としま未来文化財団 理事長 合場 直人さん

公益財団法人としま未来文化財団 理事長。
1977年三菱地所入社、代表取締役専務執行役員を経て、2018年サンシャインシティ代表取締役社長に就任。
2020年から2024年までとしま未来文化財団の評議員を務め、2025年理事長に就任。

としま未来文化財団公式HP(新しいウィンドウで開きます)

全文

6年目となる「としま文化の日」。文化によるまちづくりをさらに発信

「としま文化の日」は、今年で6年目になりました。豊島区にとって「としま文化の日」はどのようなものですか?

(以下、敬称略)

高際:もう6年目になるんですね。「としま文化の日」は、豊島区の文化を守り、育み、次世代に継承していこうという想いを、区全体で共有する日です。制定された当時、私は副区長でしたが、「さすが豊島区」という思いがしましたね。今年は、新たな豊島区の「基本構想・基本計画」ができた初年度の「としま文化の日」です。22年ぶりに策定したこの基本構想・基本計画の中でも、文化は大きな柱の一つ。みんなで文化を大事にしていこうという想いを、例年以上に強く発信したいと考えています。

鈴木:「としま文化の日」というのを制定したと聞いて、非常にびっくりしました。自治体が独自に「文化の日」を制定する例は珍しいですよね。豊島区が文化に注力する姿勢を示す、素晴らしい取組みだと思います。池袋西口エリアにある東京芸術劇場も、色々なコンサートや演劇の公演をやっていますので、その一員として、豊島区を活気づけていきたいです。

合場:先ほど区長からもありましたが、豊島区の新しい基本構想・基本計画では、多彩な文化を推進していくことが示されました。新しい文化の姿を、区と「としま未来文化財団」が“両輪”となって推進していくということが非常に重要です。連携を強めるためには、情報共有を密にし、信頼関係を築くことが欠かせません。また、今年は財団創立から40周年の節目です。これを機に、組織の存在意義を見つめ直し、変革を進めるとともに、多くの方々と一緒に、文化の日に実施する事業を盛り上げていきたいです。

行政・企業・地域が手を取り合い 幅広い人々に文化を届ける

連携が大事ということを仰っていただきました。地域や企業とはどのように連携していきますか?

高際:文化を推進していくには、地域の文化団体だけではなく、学校や企業など、幅広く多様な団体と力を合わせる必要があると思っています。文化の力が今まで届いてなかったところに届けていくことは、区として最重要テーマの1つです。子ども・若者から高齢者、さらには障害のある方まで文化の裾野を広げたいと考えています。「チームとしま」の参加企業とのつながりにも大いに期待しています。今年度「企業等による事業提案制度」を新設しましたが、企業がもつノウハウやネットワークを活かし、文化事業に積極的に関わっていただけることを願っています。

鈴木:当劇場もそうです。学校や福祉団体と連携するなど、社会共生の取組みを進めています。お互いにプラスになるような、そんな関係を作れればいいなと思います。たとえば、「芸劇オーケストラ・アカデミー・フォー・ウインド」というプログラムを10年ほど前からやっています。今年は、そのメンバーが、外部で演奏できるようにプラットフォームをつくりました。団体から問い合わせをいただいたら派遣をするというような、我々から提供できるものを発信していきたいと思っています。

合場:財団としては、区民の皆さんに一番近い存在を目指して活動していきたいです。もっとまちへ出て、まちのことを知ろうじゃないかと。まちを知り、人を知り、財団のことを知ってもらう。そうやって、区民の皆さんが本当に欲しているものは何か、今やらなければいけないことは何かを肌で感じて、地域の要望を拾い上げていくべきと感じています。

高際:私も同じ思いです。まちは変わらないところもあれば、時代とともに変わっていくところもあります。先日区内の子どもたちから意見を聞く機会があったのですが、その中の一人が、「イケバスを使ってまちを紹介したい」と言っていました。その子は、「もちろんトキワ荘とかもあるけど、まだ知られていない豊島区のいいところを発掘して、それを知ってもらうツアーを組みたい」と提案してくれて、とても関心しました。文化事業は、大規模なイベントだけではないです。文化財や地域のお祭りのように、地域の方が大事にしているものも含めて、もっと皆さんに「豊島区にはこんな良いものがあったんだ」と知ってほしい。そのために区は、知ってもらうような場を提供したり、あるいは機会の創出、活動してもらう場の提供を、積極的にやっていかなきゃいけないと思っています。全てを区が仕切るわけではないけど、現場に出て、区の魅力を発掘し、広く発信していくことが大切だと思います。

広報としま10月1日号対談の様子1

子どもをはじめ区民全員が文化の力で心を豊かに

基本計画の「文化の裾野を広げる」という言葉には、どのような意図があるのでしょうか?

高際:背景には、コロナ禍の3年間で浮き彫りになった「区民の孤独・孤立」があります。経済的な事情を抱えるご家庭、障害のある方、日本語が不自由な方だけではなく、生活に困っていると感じていない方々の中にも、人との交流が減少し、心の不調が見られました。そういう時こそ、文化の力がすごく大きいと痛感しました。自分でどんどん文化や芸術に接することができる方たちも、もちろんいます。一方で、自分たちの力では手が届かない方も、私たちが思っている以上に多い。行政としては、そのような差を埋めていくことが大事だと思っています。新しい基本構想・基本計画でも、「豊かな心と活発な交流を育む、多彩な文化のまち」を大きな柱としていて、文化と人、人と人、“みんながつながる”まちを目指しています。暮らしの中に文化を広げて、区民の皆さんに文化芸術のもつ豊かさを届けていきたいですね。

鈴木:誰もが文化にアクセスできるというのは大事ですね。当劇場も、アクセスシビリティ向上に力を入れて取り組んでいます。今回のリニューアルでは、入館してすぐの位置に「アクセシビリティ・デスク」を新設しました。これまでも鑑賞サポートとして字幕や音声ガイドをつけるなどは実施していましたが、障害のある方や高齢者、日本語が不自由な方などをサポートするもの、たとえば耳の不自由な方に音声を拡大できる機械の貸し出しや、コミュニケーションツール、ヒアリングループなど、こういったものを整えています。

高際:素晴らしいですね。入ってすぐにあるっていいですね。

合場:真似したいですね。

鈴木:これまで劇場に足を運びにくかった方々にも、来ていただきやすくなればと思います。

合場:豊島区は、コロナ禍でも「文化の灯を消さない」と強く宣言されてきたと思います。文化は心の栄養であり、日々の食事や住まいと同じくらい大切なものです。財団も、文化を通じたまちづくりを強く推進していきます。そのためには、文化ということに関して、区民の皆さんが何を望んでいるのかを探ることが重要です。一方通行で、皆さんに響かないようなことをやっていたら、非常にもったいない。なかなか文化に触れにくい方たちにも手が届いているのかどうかということも、しっかり見ていかないといけないと思います。財団が運営する地域文化創造館は、区民の皆さんの声が直接聞ける大事な接点の1つです。幅広い人々に文化を届けるべく、区民の皆さんの声に耳を傾けて取組みを進めていきます。

文化の裾野を広げるにあたって、特に力を入れるところはありますか?

鈴木:子どもたちに文化的な体験を届けたいですね。次世代への投資は、豊島区の未来のためにも必要なことです。
先日まで、スコットランドのエジンバラに行ってきたんですよ。エジンバラは舞台芸術のフェスティバルが盛んで、その中に「ストーリーテリングフェスティバル」というものがあって、子どもたちがたくさん集まっていたんです。
公民館のようなところで読み聞かせをして、そこに音楽が入ったり、ダンスが入ったり、そういうことを、地域文化創造館を通じてできたらいいなと思いました。子どもたちにとって温かい気持ちを育むことができるのではないでしょうか。

高際:幼少期から文化や芸術に触れる機会を持つことで、子どもたちがたくましく、未来を切り拓く創造力を培っていけると思っています。小さい時から、どんな環境にある子も、文化芸術のワクワクする体験ができるように、裾野を広げていきたいです。
だからこそ、新しいことを知り、好奇心を育む「学び」も文化体験の1つだと思っています。新しいものを知る、「面白い」と追及してみる、学びを通じて今まで会ったことのない人と出会える、知っていくことは、ワクワクの最たるものです。地域文化創造館や図書館といった施設を活用して、豊かな学びの機会を提供できる体制を強化していきたいと考えています。不登校の子どもでもアクセスしやすい、学校でも自宅でもない「第3の居場所」という意味でも広げていきたいです。

合場:財団では、今年から「としま文化応援団事業」を始めました。区民の皆さんや企業から賛同金を募り、その資金で文化団体や個人の活動を助成するものです。特に、子どもや若者が参加しやすい文化体験の場をつくることを目指しています。すべての子どもや若者が文化を体験できるきっかけにしたいですね。としまの新しい文化の形として定着させていけたら本当にいいなと思います。既に、プレイベントもいくつか実施しています。区民の力によって、区民が行動するという形がうまくできると、豊島区らしい活動になるのではと思います。

高際:「としま文化応援団事業」は、体験する側と支える側の両方を応援する新しい仕組みです。区全体で文化を盛り上げていく風土を一層広げていきたいと思います。

多様な地域特性も活かしながら、新しい文化を育む

豊島区には、最先端のカルチャーから伝統文化まで、幅広い地域特性があります。
これを踏まえ、今後どのように文化施策を展開していくのでしょうか?

高際:豊島区の面白さは、「雑多な感じ」。地域文化の最たるものであるお祭りや伝統工芸もあれば、一方で、サブカルチャーをはじめとした新しい文化もある。サブカルチャーは日本一だと豪語したいぐらいです。Hareza池袋やサンシャインシティで、企業の方々が次々とイベントを企画してくれて、すごく盛り上がっています。今年は盆踊りにもたくさん参加しましたが、地域によってもカラーが違って面白いんです。面積は比較的小さい区なのに、多彩な文化があることが、豊島区の魅力です。各地域の持ち味を活かしながら、「まちなかに文化があふれる」豊島区をつくっていきたいですね。
また、これだけワールドワイドな人たちがいる、国際色豊かなことも、豊島区の魅力です。それぞれの魅力を伸び伸び発揮してもらって、みんなで楽しめるようにしたいです。

鈴木:地域の人たちが喜んで参加して盛り上げているお祭りがあることは素晴らしいです。私も毎年、よさこいの審査員をやらせていただいていますが、全国から踊り手たちが集まってきてまちが盛り上がる、そういうお祭りを大事にしているのは本当に素晴らしい。昔からお祭りは人の交流を生み、新しい文化を生んでいく役割を果たしてきました。
あとは多文化共生ですね。外国の方々と演劇のワークショップをやると、最初は日本語で話すことにすごく躊躇しているのですが、3時間ほどすると最後は日本語で話しているんです。芸術文化を使って、まちに溶け込んでもらうという役割を当劇場でやっていきたいです。

合場:豊島区のお祭りは、どこの地域も負けないくらい活気がありますよね。地域の皆さんで力を合わせるのはもちろん、警察や消防の方も、ものすごく協力してくれるんです。地域に根ざした文化って、やっぱり祭りですよね。財団も積極的に参加していけたらと思っています。

広報としま10月1日号対談の様子2

高際:池袋だけを見ても、東と西で異なるカラーの文化を持っています。東口はアニメなどのサブカルの聖地。西口は東京芸術劇場における一流の芸術。そして、それぞれの地域には、特色ある伝統芸能や、お祭りもあり、幅広い特性がありますね。文化の支え手も多く、多彩な活動が日々まちに彩りを添えています。「自分たちで文化を育てていく」という区民の皆さんの強い想いが、このまちの文化を支えていますよね。区は、その力を後押ししながら、文化の裾野をさらに広げていきたいです。

鈴木:当劇場の隣にある池袋西口公園には、素敵な野外劇場(グローバルリング)があり、無料でコンサートが行われていることがあります。劇場でコンサートが終わって、お客さまが出てきて、グローバルリングでまた演奏をやっている。そこで立ち止まって音楽を楽しむ光景は、とても良い雰囲気ですよね。

高際:素晴らしい施設の中で素敵なものを体験することも大切です。一方で、ひと中心のウォーカブルなまちづくりを進めている豊島区としては、“外”で音楽を聴いたり、色々な体験をしたりすることも大切にしています。芸術劇場で文化芸術を体験して、外に出ればグローバルリングシアターでまた別の楽しみがある。そんなふうに、屋内と屋外がつながって、一緒に盛り上げていけたらいいなと思います。

合場:そうですね。都の施設が豊島区にあるというのを最大限生かして、まちに出ると文化を感じる、そんな雰囲気をつくれたら良いですよね。

鈴木:毎年ゴールデンウィークに開催している「TACT FESTIVAL」では、劇場前ひろばとグローバルリングでサーカスをしたり、ウィンドオーケストラをやったり、私たちも劇場をできるだけ開かれた場にしていこうとしています。子どもたちにたくさん来てもらいたいので、豊島区の学校とも連携できたらいいなと思っています。

合場:公園という開かれた場で文化を体験できるのは良いですよね。今までなかった発想も必要になってくるのかと思います。

高際:みんながびっくりするようなことをできるといいですね。この前も、中池袋公園にラリーカーが登場しました。ブレイクダンスやライブペインティングなど、ストリートカルチャーを一同に集めたトシマストリートフェスも、昨年は中池袋公園、池袋西口公園で開催されました。池袋西口公園のグローバルリングシアターは、クラシックの演奏をすることが多いですが、ここでアーバンスポーツをやる、ということに驚いた方もおられたのではないでしょうか。

最後に、区民の方に向けたメッセージをお願いします。

鈴木:東京芸術劇場も文化を基軸としたまちづくりを行っている豊島区に貢献をしていきたいと思っています。特に、子どもたちや、文化にこれまであまり近づけなかった方たち、その人たちに芸術文化を体験してもらい、一緒に歩んでいきたいなと思います。

合場:区と財団の両輪をより確かなものとして、豊島区の文化によるまちづくりを盛り上げていけたらと思います。

高際:文化は人の心の潤いであって、生きていく上での根っこの部分でもあります。豊島区が生み出している文化は、区民の皆さまの誇りであり、本当に重要なものです。文化はまちづくり、教育、福祉などすべての分野に通じる大事な軸です。区民、地域団体、財団、劇場、企業が連携し、文化のちからで今まで以上にまちを盛り上げていきます。

候補としま10月1日号集合写真1

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