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板絵着色大森彦七図

大森彦七図

<東京都指定有形文化財>

桐材、縦145センチメートル、横182センチメートルの庵形。『太平記巻二三』に記され、後に浄瑠璃にもなった「大森彦七の事」の一場面を描いたもの。

物語の内容は湊川合戦で楠木正成を自害に追い込んだ大森彦七は、その恩賞を受け、遊興に尽くす。ある夜、一族が催す猿楽に行く道中で美女に逢い、美女を背負って楽屋に向かおうとすると、美女は俄かに鬼となり彦七を脅す。腕に覚えのある彦七は難を逃れるが、この後も楠木正成の亡霊に度々脅かされ、彦七が持つ足利尊氏の世を滅ぼすことができるという刀を奪われそうになる。結局彦七はその刀を守り通し、大般若経の功徳によって亡霊を鎮め、この刀を足利直義に献上したというもの。

落款に「鳥山石燕豊房図」とあり、元文3年(1738)に奉納された。石燕は、江戸中期の浮世絵師で、門人に喜多川歌麿・榮松齊長喜・戀川春町などがいる。人物の描写を得意とし、ことさら妖怪の図で名を博した。石燕の肉筆画は数が少なく、浅草観音・湯島天神などにあったが、みな亡失し、現在ではこの一面が唯一の遺作である。

なお、雑司ヶ谷鬼子母神堂(建造物)の附指定となっている宮殿内部の壁画は石燕の師匠である狩野玉燕によるもの。

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庶務課文化財グループ

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更新日:2022年10月25日