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更新日:2025年9月18日

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目次

 

令和7年第3回区議会定例会 招集挨拶

 

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 令和7年第三回豊島区議会定例会の開会にあたり、区政運営に対する所信の一端を申し述べ、区議会並びに区民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。

 まず、冒頭に、9月4日にご逝去された片桐昌英豊島区町会連合会会長に、謹んで哀悼の意を表します。

 片桐昌英さんにおかれましては、地元駒込第一町会の町会長を29年間、務めてこられました。平成14年からは、第十地区区政連絡会の委員長、令和3年8月からは第7代豊島区町会連合会の会長として、全129町会をとりまとめられてこられました。

 また、町会関係にとどまらず、豊島消防団長では、そのご功績により平成30年に消防総監賞、秋の叙勲で瑞宝双光章を受章され、その他にも「染井よしの桜の里駒込協議会」会長やNPO法人「ソメイヨシノの里ひろば駒込」の理事長、豊島区民社会福祉協議会の副会長を歴任され、長きにわたり、広く地域の代表として、区政に対し、数々のご提言を賜るなど、多大なご尽力をいただきました。

 ここに、片桐昌英さんが力を尽くされた、人と人とがつながる地域づくり、安全安心なまちづくりへのご貢献に、心から感謝を申し上げます。

1 令和6年度決算について

 今定例会の決算特別委員会では、私が区長として、初めて編成した令和6年度予算に対する決算についてご審議いただきます。

 一般会計決算額は、歳入が1,545億円、前年度比72億円の増、歳出は1,497億円、前年度比56億円の増となっております。

 歳出は、国の各種給付金に加え、物価高騰に直面する事業所の支援など、区独自の物価高騰対策に取り組むとともに、11次に及ぶ補正予算を編成しながら、「出産費用の実質無償化」など、区民の声に寄り添った施策を展開してまいりました。

 歳入は、基幹歳入の特別区民税が定額減税の影響を受けたことから、3億円の減となる328億円、特別区財政調整交付金は、0.6億円の減となる376億円となりました。

 また、財政状況を表す指標のひとつである「経常収支比率」は、人件費や物価高騰に伴う物件費の増加により、81.7%と昨年度比で2.1ポイント上昇し、「公債費負担比率」は、昨年度と同様の2.6%となっております。

 このほか、健全化判断比率である、「実質赤字比率」「連結実質赤字比率」「実質公債費比率」「将来負担比率」は、いずれも国の基準を大幅に下回っております。

 なお、基金は、今後も見込まれる物価高騰や計画している学校改築を見据えて、義務教育施設整備基金と公共施設再構築基金を取崩さず、財政調整基金残高は176億円を確保しております。起債発行額が、前年度比12億円の増、21億円となったことなどから、区債残高は、3億円増となる205億円となりました。

 今後は一層、既存事業の再構築を繰り返しながら、新たな行政ニーズに対応する施策を展開するとともに、健全な財政を維持し、各種財政指標の変化に留意しつつ、基金や起債を最大限に有効活用しながら、中長期的な視点に立った持続可能な財政運営の実現に努めてまいります。

2 安全安心について

 次に、安全安心に関する取組みのうち、まず、防災対策について申し上げます。

 これまで本区では、救援センターの機能強化のため、備蓄物資の増強や施設環境の改善などに取り組んでまいりました。これに加え、今後、新たな「基本構想・基本計画」に掲げる「区民防災力の向上」を目指し、様々な実践的訓練により、災害に対する区民全体の対応力を高めてまいります。

2-1 全救援センターでの開設訓練実施

 まず、これまで2年に一回行っていた救援センター(避難所)の開設訓練は、町会連合会からのご要望を踏まえ、今年度から、34か所の全ての救援センターで毎年実施いたします。参加者には、町会や救援センター配備の職員のほか、救援センターとなる学校に通う児童・生徒や保護者、防災士、女性防災リーダーが加わっています。

 訓練は、学校の鍵を開けて入るところから、施設の点検、避難者の受付・受け入れという過程を辿りながら行い、あわせて、ペットの同行避難を想定した訓練を取り入れるなど、より実践的な内容としております。

2-2 内閣府主催 避難生活支援リーダー/サポーター研修

 また、7月には、内閣府が主催する「避難生活支援リーダー、サポーター研修」に、本区が都内の自治体として初めて参加しました。

 この研修は、長期化する避難生活で、避難者の身体・精神の両面で発生する様々な問題を学ぶ2日間の実践型研修であり、避難所運営を考える面から大変有意義なものでした。当日は、救援センター訓練の中核となる防災士や女性防災リーダーの他に車椅子利用者や目の不自由な方、区内在住の外国人など、高校生から80代までの幅広い世代から52名が参加し、多くの気づきやご意見が寄せられました。

 この度の研修で得た、避難者の健康や、女性を含めた多様な被災者のニーズ、避難生活での不安や悩みなど、様々な問題への対応方法については、今後、防災士や女性リーダー等の育成及び区民主体の訓練の強化に活かしてまいります。

2-3 としまDOKIDOKI防災フェス2025・ジュニアリーダー講習会(防災キャンプ)

 来月13日には、医療関係者、企業、消防、警察等 55団体が参加する「としまDOKIDOKI防災フェス」を開催いたします。防災フェスでは、初期消火や起震車などの体験、区の災害医療が学べる展示、感震ブレーカーなどの防災用品の普及啓発、その他にも区民提案事業で選定された防災マップの作成に挑戦できるなど、遊びながら学べるブースが用意されております。

 また、8月にみらい館大明で実施したジュニアリーダー講習会では、初めて防災をテーマとしたキャンプを実施しました。キャンプでは、参加した小中学生が防災備蓄品の使い方や夜の避難訓練などを経験し、「段ボールベッドの組立が想像より簡単だったので災害時に手助けできると思った」「防災に対する意識が高まった」などの感想が寄せられました。

 これからも、子どもから大人まで楽しみながら防災を学べる事業を実施し、区民一人ひとりの防災意識の向上や備えにつながる機会を数多く設けてまいります。

2-4 総合防災訓練

 災害時の司令塔である区役所の訓練として、今月2日、470名に及ぶ職員体制で、総合防災訓練を実施しました。今回の訓練は、都心南部を震源としたマグニチュード7.3、最大震度7の首都直下地震が発生した想定で、災対各部が迅速かつ適切に役割を果たせるよう、発災から7時間の初動対応と全庁的な動きを、実際の行動により検証しました。

 訓練に先立ち、昨年度任用した、防災・震災対策専門員と災害時広報対応アドバイザーが中心となり、災対各部へのヒアリングを実施し、課題の抽出と解決に向けた検討を進め、発災時に想定される動きを確認しました。さらに当日は、組織横断の4つの部会、トイレ対策検討部会、生活再建支援検討部会、震災復興検討部会、遺体取扱検討部会が、救援センターでの実働訓練等を実施しました。

 訓練終了後には、災害時広報対応アドバイザーから「色々な訓練を見てきたが、行政を挙げてこのような防災訓練に取り組むのは豊島区だけではないか」、また、防災・震災対策専門員からは、「全ての部局を挙げて、同時並行で訓練するというのは、本区初となる試みで、それぞれの部局・検討部会が課題に対し真摯に取組み、全体として大きな成果があったのはないか」との講評をいただきました。今回の訓練で見えた課題は、災対各部で改善を続けるとともに、区自らの災害時の機動力を強化すべく、より実践的な訓練を重ねてまいります。

2-5 区公式LINEを活用した防災機能

 また、今月下旬から区公式LINEを活用した、オンライン申請やチャットによる相談、配信内容と利用者ニーズをマッチさせるセグメント別の情報配信など、行政サービスがスマートフォンで完結できる運用を開始します。さらに、救援センターの避難者情報を事前に登録できる機能をはじめとした、防災面の新たな機能も実装されます。

 避難者情報の事前登録は、区民の皆様がお手持ちのスマートフォンからご自身の氏名、住所、生年月日、性別を事前に登録することで、発災時にスマートフォンを利用した救援センターでの避難者受付が可能となることに加え、登録情報が瞬時に災害対策本部で集約されるため、各救援センターの状況が迅速かつ的確に把握できます。この機能は登録者が多ければ多いほど、各救援センターにおける受付時間の大幅な短縮につながりますので、「としまDOKIDOKI防災フェス」や各地域の防災訓練、区政連絡会、各種イベント等、様々な機会を捉えて事前登録の勧奨を行ってまいります。

2-6 東京芸術劇場前公衆喫煙所の開設

 次に、東京芸術劇場前公衆喫煙所の開設について申し上げます。

 コロナ禍後、来街者の増加に伴い、池袋駅周辺など繁華街の一部で、路上喫煙やたばこのポイ捨てが目立ち、まちの美化や受動喫煙防止の観点から、改善を求める声が数多く寄せられています。そうしたお声に応えるべく、今月1日、かねてより地域の皆様からのご要望が多かった池袋駅西口の対策として、東京芸術劇場前に区内初となるコンテナ型の公衆喫煙所をオープンしました。

 新喫煙所の設置を機に、「特別強化週間」として、シルバー人材センターのシルバースターズによる新たな試みとなる、周知や啓発活動をスタートさせるとともに、警備員による注意・指導も強化し、朝7時から22時まで活動時間を1時間延長して対応にあたりました。さらに、私や職員をはじめ、地域や周辺企業の皆様とも連携して、夜間の清掃活動及び喫煙所への誘導を行いました。また、先週からは、環境清掃部が中心となり、池袋西口エリアの飲食店に新喫煙所の周知のご協力をお願いしております。

 今後は、来月まで環境美化の「重点取組月間」とし、受動喫煙及びポイ捨て防止の観点から、環境清掃部、保健所、治安対策課、道路及び公園所管課等、庁内連携体制のもと、地域や地元企業の皆様、警察が一体となって、喫煙所の周知やマナー啓発等を行い、環境美化とまちの安全安心の実現に取り組んでまいります。また、苦情が多い地域におけるコンテナ型喫煙所の設置については、引き続き検討を進めてまいります。

2-7 民泊条例の改正に向けた検討状況

 次に、民泊条例の改正に向けた検討状況について申し上げます。

 本区では、平成30年に「豊島区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」を制定しましたが、民泊営業の区域や期間の制限を規定していませんでした。こうしたことなどから、現在の届出住宅数は、条例制定時の2.5倍以上となる1,750件を超える状況にあります。その数は、インバウンド需要と共に増加しており、それに伴い、苦情の件数も増加の一途を辿り、区内全域の多くの区民の皆様より、迅速な改善を求める声が寄せられております。

 そうした声を受け、できるだけ早期に条例の見直しを行う必要があると考え、6月に全町会を対象としたアンケート調査を実施しました。約7割の町会からいただいた回答では、「グループが宿泊し、夜遅くまで盛り上がっていてうるさい」「道路へのたばこのポイ捨てが増えた。事業系ごみが、地域のごみ集積所に出されていてルールが守られていない」「民泊に荷物を搬入するため、レンタカーで細い道に進入したり、一方通行を平気で逆走して危険」などの切実な訴えが多数寄せられ、「区域を定め期間を制限すべき」という意見が約9割を占める結果になりました。

 7月には、豊島消防署や池袋消防署と手続きルールの強化に向けた意見交換を行い、そして、今月9日には、立教大学法学部長の原田 久教授を座長に迎え、豊島区観光協会や町会連合会、警察、消防、区内の民泊経営者等を委員とする条例改正等検討会を開催しました。検討会では、生活環境の悪化を防止するため、区内全域で営業期間を制限する方向で意見がまとめられたところであります。

 多くの区民の皆様から寄せられた不安の声に応えるため、条例改正案については、パブリックコメントを実施し、次の第四回区議会定例会で上程できるよう、スピード感を持って準備を進めてまいります。

3 池袋保健所移転について

 次に、池袋保健所移転について申し上げます。

 新たな保健所は、名称を「豊島区保健所」に改め、災害時における医療対策本部機能の整備や相談体制の充実など、専門機能の強化を図ります。さらに、区民の皆様の健康づくりを支援する拠点となる「わたしメンテラボ」を設置し、基本計画に掲げる「健康に関する気づき」「こころと体の健康づくり」を一層推進する、予防に重点を置いた健康づくりの場といたします。

 「わたしメンテラボ」は、保健師などの専門職コンシェルジュが常駐し、常時6つの測定機器による健康測定ができるほか、思春期など心と体に不安を抱きやすい若い世代から、シニア世代まで、女性のライフステージに応じた悩みが相談できる体制を整えます。

 また、「明らかな病気と思わなければ病院には行くのは敷居が高いが、自分自身の健康状態について、気になることを専門家に聞いてみたい」という「病気未満」の方や、若い世代をはじめ、多忙で、自分の健康のことは後回しになりがちな方に対する、健康づくりのサポートができる場としていきます。あわせて、保健師等が常駐することを生かし、いわゆる「ユースヘルス相談」(思春期の若者向け相談)の機能も充実してまいります。

 一方、社会的孤立・孤独の予防も、心身の健康には重要です。本区は7月に、楽しみながら健康づくりへの関心を高めることを目的とした実証事業や、健康情報を獲得する技術などの研究に取り組んでいる、慶應義塾大学SFC研究所と「健康施策の推進に向けた連携協定」を締結しました。

 この連携協定に基づき、新保健所開設のプレイベントとして、来月開催する「こころまつり」や12月の「ふくし健康まつり」では、骨密度測定や体組成計測定の結果から、その方に合った健康づくりに役立つ情報が得られる「AI実証事業」を実施します。AIが、区内のおすすめスポット巡りや、身近なところで行われている文化・スポーツ活動等を紹介、それを参考に新たな体験をすることで、歩く、運動する、食事に気を付けるなどの行動につなげていただきたいと考えております。

4 区民ひろばを活用した居場所について

 次に、区民ひろばを活用した居場所について申し上げます。

 本区では、区民ひろば利用者の固定化や運営協議会役員における担い手不足等の課題解消に加え、学生や現役世代を中心とした新たな利用者の拡大を目指して、本年3月に「新たな区民ひろば構想」を策定しました。現在、本構想に基づく、「誰ひとり取り残さない、地域コミュニティ拠点の形成」に向け、区民ひろばを活用した様々な取組みを展開しています。

4-1 夏のこども居場所創出事業

 まず、夏休みを前に、第二回区議会定例会の補正予算で議決いただいた「子ども居場所創出事業」は、子どもの体験機会としてアーバンスポーツ体験会や、とうきょうこどもクリエイティブラボ(通称「くりらぼ」)、パントマイムパフォーマンス等が新たに加わり、子どもたちや現場の職員から大好評でした。その後、「区民ひろば長崎」のひろばまつりでも、今夏行ったイベントが実施されるなど、広がりを見せています。

 また、従来より子どもたちから要望が多かった「静かな自習室」は、区内5か所の区民ひろばに併設する集会室や、区民ひろばの空いている部屋を活用して実施しました。利用した子どもたちからは、「図書館など、人が多いところとは違い、ゆったり使えて、集中して夏休みの宿題ができた」という声をいただくなど、猛暑が続く中でも涼しく、落ち着いて過ごせる場を提供できたと考えております。子どもレターでも、家ではない、静かな無料の自習室を望む声が多数届いていますので、夏休み以外でも実施できるよう、検討してまいります。

4-2 区民ひろばコミュニティカフェ

 「区民ひろば朝日」と「区民ひろば南大塚」では、来月より、新たな区民ひろば構想に掲げる「多様な主体との連携」を推進するため、「コミュニティカフェ」のモデル事業をスタートいたします。

 日頃から、区民ひろばを利用されている方はもちろん、保育園に送り迎えをする保護者、学校や仕事帰りの方など、幅広い世代の皆様に気軽に立ち寄っていただける場を目指します。コーヒーや軽食を提供し、ひろばの開館時間に限らない柔軟な営業時間とすることで、「ほっと一息つけるひろば」として皆様の居場所となるよう、「地域コミュニティの場」としての魅力をさらに高めてまいります。

 さらに、多くの方のご利用につなげるため、壁面を活用した障がいのある方の作品展示や、地域の方による手作り作品の販売スペースの設置など、地域の声を取り入れながら、地域の皆様による「特色ある区民ひろば」づくりに努めてまいります。

4-3 区民ひろばフードバンク

 さらに、「区民ひろば長崎」では、フードバンクの拠点として、政府備蓄米の無償交付を活用した新たな事業を10月から開始する予定です。

子ども食堂や誰でも食堂、フードパントリーなどを行う食糧支援団体は、昨今の物価高騰の影響により、資金調達や食糧確保に苦労されていると伺っております。

 これまでも政府備蓄米の無償交付はありましたが、各団体に米の保管場所がないことや、事業規模の小さな団体は申請の対象外であったことなどから、備蓄米の活用が難しい状況でした。この度、本区と豊島区民社会福祉協議会が連携してフードバンクの運営を担うことで、区民ひろばを活用した「新たな食糧支援の拠点」をつくり、支援団体への食糧提供の枠組みを構築してまいります。

 今後も、区民の皆様に最も身近な「地域コミュニティの拠点」である、区民ひろばが、「多様な世代や属性を超えて人がつながる場」としての役割を果たせるよう、様々な工夫と挑戦を続けてまいります。

5 不登校対策について

 次に、今年度の重点テーマの一つである教育のうち、不登校対策について申し上げます。

 本区では、「一人ひとりに寄り添った教育」を「基本構想・基本計画」の施策に位置づけ、不登校対策に取り組んでいます。具体的には、不登校対策スーパーバイザーによる校長・教員・保護者等を対象とした研修・講演会の実施や全中学校への不登校対策支援員の配置、スクールソーシャルワーカー(SSW)による家庭訪問など、不登校の子どもたちと保護者に対する積極的、かつ、きめ細やかな支援を4月から強化し、実施しています。その結果、1学期における区立小中学校の不登校児童・生徒数は、昨年同期と比べ、小学校は5割以上の減となる64名、中学校は3割減となる94名と大きく減少しています。

 また、6月から試行実施した柚子の木教室でのお弁当支援は、保護者から、「子どもたちの大きな楽しみの一つとなり、適応指導教室に通うことへの後押しになった」「食べられなかった食材を食べられるようになった」「弁当作りの費用や食材の傷みを気にしなくて良い」といった好評の声が寄せられているだけでなく、実際に、子どもたちの教室に通う日数が増加し、保護者の負担軽減にもつながっていることから、2学期より本格実施しております。

 さらに、7月に開催した「未来としまミーティング」では、不登校の子どもたちの保護者と懇談し、日々の思いや区の事業に対する様々なご意見を伺いました。その中でも、今年度から開設したチャレンジクラス「スリジエ」は、生徒たちが安定的に登校し、学習や行事に意欲的に取り組んでいることから、「スリジエができたことで子どもが安心して登校できるようになり、様々な活動を通じて自信を取り戻している」という声をいただき、事業の効果を実感したところです。

 あわせて、早い段階からの分かりやすい情報提供や、安心して相談や支援を受けられる場所の整備、保護者同士のつながりを広げることが、保護者の心の支えになるとのご意見をいただいており、今後の取組みに向けた検討に着手しています。

 年度末に策定予定の不登校対策総合計画には、現状分析と合わせて、来月予定している不登校対策スーパーバイザーの講演会など、様々な機会を通じて保護者のご意見をいただきながら、より必要性と実効性が伴った不登校対策を展開してまいります。

6 多文化共生について

 次に、多文化共生の実現に向けた外国人児童・生徒等の支援について申し上げます。

 本区の外国人住民は、9月時点で37,867名、区民全体に占める外国人の割合は、12.8%で、これは全国でもトップクラスの割合となっております。区政の羅針盤である「基本構想・基本計画」では、地域の一員である日本人も外国人も、共に幸せを実感し、まちを舞台に活躍できる「多文化共生」を理念に掲げ、全ての施策に共通する土台としています。

 これを受け、今年度の区民による事業提案制度では「多様性の尊重・多文化共生」をテーマとし、区民の皆様から32の提案をいただきました。区民投票では、食やアートを通じて外国の文化を知る・学ぶ・出会う「多文化交流イベント」や、国籍に関わらず妊婦や子育て世帯が安心して集える「子育て世帯の居場所づくり」が上位に選ばれており、多くの区民の皆様が、外国人区民の皆様と、互いの違いを認め合い、偏見や差別のない対等な関係を築きながら、地域社会の構成員として共に生活していくことを望んでいると受け止めています。

 本定例会では、補正予算として、区内に居住する外国人児童・生徒等への支援を拡充するため、2つの事業を提案しております。

 1つ目は、区立小中学校の日本語指導の拡充です。

 豊島区の区立小中学校には、5月時点で582名の外国籍児童・生徒が通っています。こうした状況から、本区では、日本語を母語としない子どもたちへの教育支援を重要な課題と位置づけ、昨年度から、日本語学級や日本語指導教員が配置されていない18の小学校に、教育センターの指導員が巡回し、日本語指導を実施するなど、支援体制を強化しております。

 各校への巡回指導の導入により、保護者が教育センターへ子どもを送迎する必要がなくなり、在籍校での日本語指導を希望する児童が増加したことから、指導の開始までに時間を要するケースが見られるようになりました。また、巡回による日本語指導が修了しても、授業についていけず、学習が遅れてしまうという課題もあります。これらの課題については、巡回指導員を増員し、いち早く日本語指導が受けられるようにするとともに、一緒に授業を受けることで、学習で使う言葉の意味や、理解が不十分な学習内容をその場で教えるなど、巡回指導終了後の新たな学習支援を開始することにより、質量ともに、日本語学級や日本語指導教員配置校に引けを取らない、日本語指導体制を整備してまいります。

 2つ目は、外国人児童・生徒や保護者への支援です。

 日本語を母語としない子どもやその保護者の中には、日本語が不慣れなため、必要な情報へのアクセスが困難なことや周囲に頼れる人が少ないことなど、悩みや不安を抱え、孤立しやすい状況にある方が少なくありません。

 こうした支援を必要とする方の孤立を防ぐため、新たに「多文化キッズコーディネーター」を配置し、日本語を母語としない子どもやその保護者の困りごとや悩みをすくい上げ、スクールソーシャルワーカー(SSW)やコミュニティソーシャルワーカー(CSW)などと連携し、寄り添いながら適切な支援につなげていきます。

 また、「多文化キッズコーディネーター」には、多言語での相談が可能で、多文化に精通した人材を配置することで、地域の外国人支援団体や日本語学習支援団体などとも協力・連携しながら、地域と学校、行政機関が一体となり、外国人子育て家庭の悩みに寄り添いながら、必要な生活支援や日本語学習支援など、重層的な支援につなげてまいります。

 今後も、外国人が多く暮らし、多様性あふれる本区の特長を、まちの魅力として捉え、日本人も外国人も地域で輝く「多文化共生」を進めてまいります。

7 「としま文化の日」に向けた取組みについて

 次に、「文化の秋」の到来に向け、区と、としま未来文化財団が一体となった文化への取組みについて申し上げます。

 新たな「基本構想・基本計画」では、7つのまちづくりの方向性の一つに「豊かな心と活発な交流を育む多彩な文化のまち」を掲げています。これまでの区政を牽引してきた文化施策を継承することはもちろん、ソフト・ハードに関わらず、すべての施策を実施する際には、「文化」の視点を重視した展開に発展させていくとともに、区民の皆様が文化をより身近に感じることができるよう取組みを進めてまいります。

 特に、経済的支援が必要な家庭の子どもや障害のある方など、これまで芸術文化に触れる機会が少なかった方々に対し、文化体験の場を提供していくことが、体験格差の解消という観点からも、行政が果たすべき役割として重要であると考えております。

 こうしたことから、今年の「としま文化の日」のメインイベントでは、障害のある子どもを含む3名のダンスチームが、東京都交響楽団の生演奏をバックにダンスを披露する「東京都交響楽団 スペシャルコンサート2025 フューチャリング サプライフ パープルダンサーズ321」を実施します。このコンサートは、障害の有無や国籍等に関わらず、来場された全ての子どもたちにとって、間近でオーケストラの音楽を楽しめる貴重な機会になると考えております。

 また、文化政策のパートナーとして、「としま未来文化財団」の存在も欠かせません。

 7月からは、区民が区民を応援するための新たな取組みとして「としま文化応援団」事業をスタートさせています。これは、区民の皆様や企業から賛同金を募り、その資金で文化団体や個人の活動を助成するものです。去る7月19日には、「劇場で遊ぼう!こども×舞台体験」が開催され、300名を超える子どもの笑顔と元気があふれるイベントとなりました。また、11月には、手話でコーラスを行う「ホワイトハンドコーラスNIPPON」などのイベントも予定されています。

 としま文化応援団の事業開始を契機として、今後さらに「区」と「としま未来文化財団」が両輪となって、豊かな心を育む、彩りある豊島区らしい文化施策を推進していけるよう、取り組んでまいります。

8 おわりに

 最後になりますが、全国的に特殊詐欺の被害が拡大し続けており、本区も例外ではありません。最近は、お年寄りばかりでなく、若い世代に被害が広がっており、区民の特殊詐欺による被害金額は、7月末時点で約4億3,590万円にのぼり、前年同月比の2.6倍、約2億7,150万円の増となっています。これは、令和5年度の約3倍、昨年度の年間被害金額に迫る、大変深刻な状況であります。今後はより一層、特殊詐欺等被害防止に向けた注意喚起を強化するとともに、地域の皆様と共に、地域防犯力の向上に取り組んでまいります。

 なお、本定例会には、新保健所の保留床等購入にかかわる契約議案及び保健所の位置変更等にかかる条例改正を含めた、条例6件、決算認定4件、補正予算3件、その他8件、合わせて21件の議案を提案しております。

 よろしくご審議のほど、お願い申し上げます。

 以上を持ちまして、令和7年第三回区議会定例会 招集挨拶を終わります。

 

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