ホーム > 区政情報 > ようこそ区長室へ > 区議会招集挨拶 > 令和5年第2回区議会定例会 招集挨拶・所信表明

更新日:2023年9月19日

ここから本文です。

令和5年第2回区議会定例会 招集挨拶・所信表明

招集あいさつ
(新しいウィンドウで開きます)

録画中継は上記画像をクリックして、ご覧ください。

1 区長就任にあたって

去る4月の豊島区長選挙におきまして、多くの区民の皆様からご支援をいただき、区長として区政運営を担わせていただくこととなりました。

本日、令和5年第二回区議会定例会の開会にあたり、私の区政運営に対する所信の一端を申し述べ、区議会ならびに区民の皆様のご理解とご協力のお願いを申し上げたく存じます。

冒頭に2つ、感謝とご報告を申し上げます。

まずは、6月8日に豊島区・豊島区民合同で執り行いました「故高野之夫豊島区長を偲ぶ会」につきまして、1,500名を超える多くの皆様にお集まりいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。

当日、高野前区長のご遺影の前に立ち、託されたバトンをしっかりと引き継ぎ、豊島区の輝かしい未来に向け、挑戦を続けることを改めてお誓い申し上げました。

高野前区長は、これまでのご功労に対し、この度、天皇陛下から従四位に叙され、旭日中綬章が授与されました。偲ぶ会に先立ち、死亡叙勲・叙位伝達式を行い、私からご遺族に伝達いたしたことについても、会場で皆様に報告をいたしました。

さらに、今定例会の最終日には、「その功績が卓絶で、区民の尊敬を受ける者」として、豊島区名誉区民条例に基づき、高野前区長の名誉区民選定に係る議案を提案したいと考えております。

次に、5月25日の区議会臨時会においてご同意をいただきました、上野雄一副区長が6月1日付で就任いたしました。関係者や団体との面談や現場視察など、日々、精力的に取り組んでおります。国や東京都をはじめ、地域や民間企業等と連携しながら、ウォーカブルなまち、安全・安心なまち、環境都市の実現を牽引するリーダーとして、大いなる活躍を期待しております。

さて、豊島区長に就任し、早2か月が経とうとしています。この間、区民の皆様から、温かなご指導、ご助言、ご要望など、沢山のお声をいただき、区政に対する期待の大きさと、直面する課題の多さを改めて実感するとともに、区長としての責任の重さに身の引き締まる思いでございます。

豊島区には、これまで6期24年、高野前区長が区議会、そして、区民の皆様とともに積み上げてこられた成果、先進的で素晴らしい取組、誇れる宝が沢山あります。私は、その財産を基盤とし、大切に継承するとともに、変化を恐れず、時代や区民ニーズに合わせて、新たな発想、新しい工夫を重ね、区民目線で考え抜いた政策を総合的に実施することで、豊島区を更に発展させてまいります。

高野前区長が大事にされてきた「区民の幸せ」と、「魅力あふれる、価値あるまちづくり」の推進。私も同じ思いであります。

すべてのゴールは、「区民のために」「区民福祉の増進のために」。

それを信条とし、初の女性区長として、また、これまで民間企業、東京都政、本区副区長の経験を通じて培ってきた視点や、一人の娘であり、孫であった思いも活かしながら、区を取り巻く課題と真摯に向き合ってまいります。

これからの4年間、豊島区の一層の進化・発展に向け、区議会の皆様、区民、企業、団体等の皆様と議論を交わし、しっかりと連携しながら、区民の負託に応え得る区政の実現に、職員とともに、全力を尽くしてまいる決意でございます。

はじめに、令和5年度の区政運営に関する基本的な考え方を申し上げます。

令和5年度は、次なる100周年に向けた第一歩として「4つの重点テーマ」を掲げました。

その第一は、区民生活を支える「福祉・健康・教育の充実」、第二は、持続可能なまちづくりをさらに加速させる「SDGsの推進」、第三は、区民サービスと組織の生産性向上に向けた「デジタル化の推進」、そして四番目として、人が主役のウォーカブルな「池袋の都市再生」を位置づけました。

これらの「4つの重点テーマ」と、これまで磨き上げてきた「中長期的な4つのテーマ」を両輪として、力強く区政を推進することにより、魅力と価値あるまちづくりを着実に進めてまいります。

2 区政運営に対する基本姿勢

まず、私の区政運営に対する基本姿勢について申し上げます。

この度の選挙において、「“ひと”が主役みんなでつくる“としまの未来”」を訴え、また、それを支える区政運営の基本姿勢として、「3つの“つながる”」をお示ししました。

このまちに暮らし、働き、活動する「ひと」を主役に、みんなで「としまの未来」をつくっていく。そして、コロナ禍において、私たちの暮らしや地域経済活動が大きな影響を受けてきた状況にある今だからこそ、人と人を、人と区政を、そして、これまでの経験を豊かな未来へ、しっかりとつなげていく。誰も孤立させない、寄り添い合える豊島区としていく。その重要性を全職員が胸に刻み、区政運営に臨んでまいります。

これまで豊島区は、消滅可能性都市の指摘を受けて以降、「文化を基軸としたまちづくり」をはじめ、「子どもと女性にやさしいまちづくり」「高齢者にやさしいまちづくり」「安全安心なまちづくり」の4つの中長期的なテーマにより、持続発展するまちづくりに取り組んできました。

私は、この基本方針を引き継ぐとともに、「誰もが住みたくなる8つのまちづくり」として、選挙において、区民の皆様にお示しをしてまいりました主要課題の実現に取り組んでまいります。

短い間ではありましたが、初めての選挙活動を通じ、多くの皆様とお会いする中で、子どもや若者、女性の方々など、区に伝えたいことがあるものの、まだ届いていない声、受け取れていない声があると改めて思いました。私は、町会、商店会、民生委員・児童委員はじめ、高野前区長が大事にされてきた地域の皆様と緊密に連携するとともに、これまで以上に、子ども、若者、女性の方々の声と向き合いながら、区民の皆様に実感いただける、「ひと」にやさしいまち、一人ひとりが主役となれるまちづくりを、皆様とともに進めてまいります。

また、昨年の区制施行90周年事業において、280社を超える企業の皆様と、SDGsや社会貢献、まちづくり、ひとづくり等について語り合い、つながることができた経験は、本区の未来に向けて大きな財産となりました。企業の発想やスピード感、ネットワークには大きな力があり、企業同士、また区民や各種団体、大学等との連携により、さらに活動が拡がっていくと確信しています。

先月15日、企業実行委員会を継承・発展させるための企業連携プラットフォームの発起人会が開催されました。新たなプラットフォームでは、各企業が経営資源を持ち寄り、区とともに「チームTOSHIMA」で社会課題の解決に取り組み、持続可能なまちづくりに参画していくことを目標に掲げています。今後、多くの女性や若い方々にも参画いただき、それぞれの個性を活かし、豊島区にしかできない、わくわくするような取組やビジネスが生まれてくると期待しております。

そうした連携の輪に、豊島区の各部局の職員も、積極的に参画していくよう、私が先頭に立ち、取り組んでまいりたいと思っております。区の職員が、これまで以上にまちに出て行き、区民や企業、大学等、様々な方々と出会い、意見交換することで、地域の課題をリアルに、自分事として捉え、戦略的な施策の展開につなげていく。意見交換に必要な情報は積極的に発信していく。それも、今後の区政運営の柱としてまいります。

3 区政の主要課題

次に、区政の主要課題について申し上げます。

豊島区は、巨大ターミナルを擁する池袋副都心、地域の魅力を活かした商業街、閑静な住宅街、文化と歴史が薫る街並みなど、多様性と寛容性を併せ持ち、多くの人々が集う、様々な可能性に満ちたまちです。

一方で、29万区民の命と暮らしを守り、ここで暮らし、働き、活動する、「ひと」が主役のまちとして、発展を続けていくためには、対応すべき課題が山積しております。

本日は、区政の主要な課題について、問題意識と取組の方向を述べさせていただきます。

1.子育て支援の強化

はじめに、子育て支援の強化についてです。

昨年の人口動態統計では、出生数も合計特殊出生率も過去最低となり、政府は「異次元の少子化対策」を打ち出し、今月13日、その具体的中身である「こども未来戦略方針」を正式公表しました。少子化は、確実に社会の衰退に繋がっていく深刻な問題であり、猛スピードで進む少子化を黙ってみているわけにはいきません。子ども・子育て政策を社会全体で支える仕組みづくりは、最優先の課題です。

コロナ禍の影響もあり、子育てに不安や負担感を持つ区民が増えています。保護者の疲弊感や地域コミュニティの希薄化は、子どもたちが健やかに、社会性を身に着けながら育っていくことにも影響を及ぼします。そのような中で、大きく進む、国や東京都の取組の方向を見定めつつ、区民が暮らす地元自治体としてできることを、積極的に推進し、安心して子どもを産み、育てられる環境を整備してまいります。

今、最優先で取り組むべき、子育て支援の具体策といたしましては、まず、児童福祉と母子保健の連携を強化し、妊娠期から出産、子育てまで、切れ目のない支援の充実をさせることです。令和6年度より設置が努力義務となった「こども家庭センター」については、同年4月の開設を目指します。

また、育児中の孤立を防ぐため、おむつの支援を通じ、0歳児を育てるご家庭の見守りとつながりを強化するとともに、地域の保育園を「子育て支援の拠点」と位置づけ、現在実施している「マイほいくえん」事業による在宅での子育て支援や、家庭で育児をされている方が通院等の際にお子さんをお預かりする一時預かり事業を充実してまいります。

2月に開設した児童相談所では、6月10日までの速報値として、相談受付件数が424件、このうち約55%は児童虐待に関するものとなっています。引き続き、子育て家庭を支援する行政各部署や警察署、学校等をはじめとする関係機関と連携し、虐待の早期発見・予防に向けた体制整備を推進してまいります。

なお、児童相談所を有する本区といたしましては、児童養護施設等社会的養護の下で育った子どもたちの退所後の自立支援についても取り組むとともに、公正中立な第三者的立場として、子どもの権利の回復に努める「としま子どもの権利相談室」を、本年9月、千登世橋教育文化センター内に設置いたします。子どもの権利擁護委員に加え、相談員を配置し、勇気をもって声を上げた子どもに寄り添い、対応してまいります。

このほか、インクルーシブ公園やプレーパークなど、子どもたちがいきいきと遊ぶことができる環境整備も重要です。子どもたちや保護者、関係者の皆様のお声も伺いながら、子どもの成長に応じた子育て家庭への支援に取り組んでまいります。

本来、国が行うべき区立小中学校給食費の無償化につきましては、国の無償化に向けた検討が動き出したことを踏まえ、長引く物価高騰による子育て家庭への影響を鑑み、区において先行実施することとし、今定例会において補正予算案を提案いたしました。今後、9月からの開始に向け、準備を進めるとともに、国に対しては、早期に、国の責任において無償化を図るよう求めてまいります。

また、国において保険適用の検討が示された出産費用につきましても、都内の平均額が全国で最も高いことなどを鑑み、区独自の上乗せを検討してまいります。

2.教育の充実

次に、教育の充実についてです。

豊島区の未来を切り拓いていくのは子どもたちです。笑顔で元気な「としまっ子」を育てていくため、豊島区の全ての子どもたちが、個人の能力に合わせた、深い学びと豊かな心を育む教育、一人ひとりが幸せを実感できる教育を推進してまいります。

そのためには、例えば、区内大学とのつながりを強化し、子どもたちが、留学生などの外国人との交流により国際感覚を身につける「区内留学」への取り組みなど、豊島区ならではの本物の体験、本物の教育を進めてまいります。

また、一人ひとりにあわせた教育を実現するため、インクルーシブ教育において、これまでの「交流及び共同学習」に一層磨きをかけるとともに、不登校やヤングケアラーなど、様々な困難を抱える子どもたちへの支援につきましても、スクールソーシャルワーカーのさらなる充実とともに、各学校に派遣している様々な支援員について、役割分担を明確にしながら強化いたします。

引き続き、教育委員会との密接な連携のもと、全ての子どもたちのウェルビーイングの実現を図ってまいりますが、そのためには、子供たちの放課後支援の充実が欠かせません。

小学生の放課後支援については、これまでも学校と一体となった支援を行ってまいりました。今年度から、中学校についても、「居場所づくり」「学習支援」「部活動改革」を「中学生の放課後支援」として取り組むこととしており、この一体的な取組は先駆的であるとの評価もいただいております。

「居場所づくり」といたしましては、5月23日に西池袋中学校内に「にしまるーむ」を開設しました。中学校における「サードプレイス」の第一弾となります。オープニングには私も出席し、中学生たちが楽しそうにしている様子を拝見いたしました。

また、「教室以外の別室ならば登校できる」生徒に対して、年齢の近い大学生が学習支援をする「校内別室支援指導員」を配置する事業について、今定例会に補正予算案を提案いたしました。現在、区内大学との連携に向け、準備を進めております。

さらに、「部活動地域連携推進協議会」も先月30日にスタートし、地域や民間と協働して実施する、休日における部活動のモデル事業を評価しながら、中学校の部活動改革について検討してまいります。

教育の充実には、教育環境の整備も重要となります。本区の区立小学校児童数は、平成25年度から増加を続けており、特に朋有小学校と南池袋小学校では教室空間の確保が課題です。このうち、朋有小学校につきましては、隣接する総合体育場管理棟の改築と合わせて、別棟機能を新管理棟の中で整備するための補正予算案を、今定例会において提案いたしました。子供たちの安全を確保しつつ、必要な教室やスキップの空間をしっかりと確保するだけでなく、体育施設との複合による効果が感じられる施設となるよう、鋭意検討を進めてまいります。

3.高齢者への総合的な支援

3点目は、高齢者への総合的な支援です。

豊島区は、人口の5人に1人が65歳以上の高齢者です。65歳以上の方のうち、認知症の方は2012年に7人に1人でしたが、2040年には4人に1人になるといわれています。

また、一人暮らし高齢者の割合が日本一の本区において、高齢者が住み慣れた地域で、いつまでもいきいきとした生活を送ることができる環境を整備することは、極めて重要です。

まずは、自分や家族が認知症になっても、安心して暮らせる地域づくりを進めます。認知症の早期発見・早期対応に努めるとともに、生活改善に向けた支援や見守り等、包括的な支援を充実させてまいります。今年度は、認知症の適切な医療と支援につながるよう、認知症検診の対象年齢を拡充するとともに、認知症の方やそのご家族が交流できるプログラムを実施します。

さらに、フレイル対策の充実とともに、仲間と共に食事を楽しめる「だれでも食堂」の拡充や、シニアのスポーツ支援など、年齢によることなく、いきいきと暮らす高齢者を応援してまいります。

今や健康維持にも、日常の買い物から旅行にも、スマートフォンは欠かせないものとなりました。区民ひろばや地域文化創造館にフリーWi-Fiの設置をさらに拡充するとともに、区民ひろばにおける「地域共生カフェ」の設置、「スマホ・タブレット教室」や個別相談会、スマートフォンをお持ちでない方に一定期間貸与するなど、高齢者でも使いやすいデジタル環境の整備と、サポート体制の充実を進めてまいります。

また、西巣鴨体育場敷地を活用した高齢者施設の整備につきましては、ニーズの検証や必要な機能などについて検討を行っており、着実に準備を進めてまいります。

こうした取組をはじめとして、地域で互いに支えあう仕組みづくりや、予防による健康寿命の延伸、医療・介護の連携による安心して生活できるサポート体制の構築など、高齢者の地域包括ケアシステムの構築を総合的に進めてまいります。

あわせて、誰一人取り残さないための対策として、先の臨時会で補正予算を計上した物価高騰にかかる支援給付金をはじめ、生活に困窮する方への相談・自立支援にも力を入れてまいります。また、障害のある方の重度化・高齢化や、親亡き後を見据えた支援を行う地域生活支援拠点コーディネーターを本年4月に配置し、今後、このコーディネーターを中心に支援を強化していくとともに、重度の障害があっても身近な地域で暮らすことのできる新たな拠点整備を検討してまいります。

4.区内産業の活性化

4点目は、区内産業の活性化についてです。

本年5月に区が行った中小企業景況調査では、都内の中小企業の景況はわずかに持ち直しているものの、コロナ禍による経営悪化や、物価上昇による収益低下などの課題が残り、依然としてコロナ前の水準には至らない見通しとなっております。

このような状況を踏まえ、区では、事業者の皆様によりきめ細かな支援が行き届くよう、国や東京都の中小企業支援メニューの活用に資するサポートに加え、としまビジネスサポートセンターでの相談業務や販路拡大支援、セミナー・勉強会、さらには相談員が直接、事業者を訪問し、事業の悩みに速やかに対応するなど、サポート体制をより重層的に充実してまいります。

起業・創業は、地域経済の起爆剤として、右肩上がりの成長を期待することができます。イケビズに設置しているスタートアップオフィスや女性起業家を支援するサクラーヌ・ビズ等、既存の支援メニューを充実させながら、新たな価値の創造に向けて支援する仕組みを構築してまいります。

昨年度はじめて参加した地域に眠る商品を磨き上げる「日本の宝物プロジェクト」では、豊島区の商品が全国グランプリに輝きました。引き続き、こうした地元の名物商品の掘り起こしや豊島の宝である伝統工芸品への応援を積極的に行うなど、地域産業の活性化に向け、支援に取り組んでまいります。

商品券事業を展開する商店街は、商品やサービスを提供するだけでなく、「人と人」や「人と地域」をつなぐ役割を持ち、まちのコミュニティとして安心感をもたらしています。「顔が見える商い」が利用者のまちへの愛着を高め、「商店街の元気がまちの活力につながる」ことから、商店街の支援とともに区民の皆様の消費喚起につながるよう、商品券事業をはじめ様々な事業を積極的に展開してまいります。

他自治体へ流出するふるさと納税の寄附額は、年々右肩上がりとなっており、今年度の減収は約25億円に及ぶと見込まれています。現在、区のPRと産業振興につながる手法として、豊島区らしい返礼品の導入に向けた検討を進めており、今定例会において補正予算案を提案いたしました。まずは地域に根差し、先人が培ってきた優れた文化である伝統工芸品をふるさと納税の返礼品として12月から新たに加え、その後、区内地場産業の品物や、豊島区らしさを反映した体験型の返礼品を順次導入していけるよう、準備を進めてまいります。

5.文化によるまちづくり

5点目は、文化によるまちづくりについてです。

豊島区は、各地で開催されるふくろ祭りや御会式などの祭事や先人から受け継がれてきた郷土芸能から最先端のメインカルチャー・サブカルチャーまで、あらゆる文化を受け入れる寛容さと、東京芸術劇場・ハレザ池袋・グローバルリングシアター・トキワ荘などの豊かな文化芸術資源を兼ね備えた、アート・カルチャーが街中に広がる首都東京の文化拠点となっています。

これまで「文化を基軸としたまちづくり」を区政の中心に据え、様々な事業と文化を連携させることにより築き上げてきた、豊島区独自のまちづくりをさらに発展させてまいります。

今や日本のマンガ・アニメは世界中で人気のコンテンツです。

唯一無二である「トキワ荘」のマンガミュージアムを起点としたマンガ文化の発信と地域活性化を進め、地域と区が一体となって、街を訪れた方々が歩いて楽しんでいただけるよう、南長崎エリア全体の魅力向上に取り組んでまいります。

世界最大規模のアニメショップとして、3月にグランドオープンしたアニメイト池袋本店、様々なキャラクターショップが出店するサンシャインシティは、連日、賑わいを見せております。そして、今年、東京都が南池袋に整備する「アニメ」を活用した集客拠点では、「鉄腕アトム」などのセル画やフィルムなどを展示する構想であると伺っております。東京都や民間企業との連携によって、世界中のファンが集結する「アニメの聖地・池袋」が、さらに存在感を増しております。

また、秋には、国内最大級のコスプレイベントである「池袋ハロウィンコスプレ」が開催され、多くのコスプレイヤーたちが池袋のまちに集結します。

この勢いを止めることなく、豊島区を「マンガ・アニメ・コスプレの聖地」としてブランド化し、まちの魅力を強力に発信することにより、インバウンドの強化や聖地巡礼などによる賑わいの創出を推進してまいります。

あわせて、子どもからシニアまで、身近なところでアート・カルチャーに触れられる環境、公園などの公共空間に音楽があふれるまちづくりを進めてまいります。

「池袋ジャズフェスティバル」はグローバルリングシアターをメイン会場に、街の各所でジャズを中心とした演奏が繰り広げられ、音楽を誰もが身近に感じることができる屈指のイベントとして定着しております。また、「TokyoMusicEveningYube」は、4年目に入った今年度も、ウィーン少年合唱団や、N響・読響・都響の夢の競演など素晴らしい回を重ね、池袋駅西口を音楽の殿堂として、一気に押し上げる原動力となっております。

今年はコロナ禍を乗り越え、地域で様々なお祭りが開催され、街中に賑わいと活気が戻ってきます。各地で開催される祭事は、豊島区の宝であり、シティプロモーションの目玉ともなりますことから、区としてもしっかりと支援してまいります。

文化は、日常生活に賑わいと潤いをもたらします。

区民の皆様の文化活動の後押しとともに、世界中からマンガやアニメ、コスプレ、音楽等を楽しみに多くの方々が訪れる文化都市の実現に向け、取り組んでまいります。

6.人が主役のウォーカブルなまちの実現

6点目は、人が主役のウォーカブルなまちの実現です。

豊島区はこれまで、文化・芸術の発信拠点であるHareza池袋や特色ある4つの公園整備など、地域の拠点となる公共空間を再生することで、回遊性を高め、にぎわいと四季の彩りを感じるウォーカブルなまちを目指してまいりました。

池袋駅西口駅前再開発事業につきましては、昨年10月、東京圏国家戦略特別区域会議で東京都都市再生プロジェクトに追加され、今年度の都市計画提案に向け、再開発準備組合との協議を加速させているところであります。この再開発では、駅前広場の再編とともに、地下から地上へ上がるサンクンガーデンや周辺のまちへつなぐ歩行者ネットワークの整備などを行います。

さらに、区制100周年に向け、国や東京都、民間事業者、そして地域の皆様との連携を更に強化し、池袋駅を基点として、グリーン大通りとアゼリア通りをつなぎ、東西それぞれの広場に「ひと」中心の居心地の良い歩行者空間を創り、結節機能を高めることで、「エキブクロ」からの脱却や東西交流を推進してまいります。

「歩きたくなる」、「出かけたくなる」まちづくりを進めるためには、バリアフリー化はもちろんのこと、歩く人にとって快適で楽しめる歩行空間を整備していくことが求められます。地域の皆様、まちを利用する皆様の目線に立ち、民間の発想・力も引き出すとともに既存ストックも有効に活用しながら、人にやさしい環境をつくる。まさに公民連携で「都市経営」の観点から取組を進めてまいります。

また、駒込のソメイヨシノ、巣鴨や大塚の商店街、ユネスコ未来文化遺産の雑司が谷、南長崎のトキワ荘など、豊島区には地域それぞれに魅力あるスポットが点在しています。池袋を基点として、各地域を結び付け、区内全体をウォーカブルな回遊性の高いまちへと発展させてまいります。

7.ゼロカーボンシティへの挑戦

7点目は、ゼロカーボンシティへの挑戦です。

地球温暖化への対策は待ったなしの課題です。2020年、「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」にダブル選定された豊島区にとって、良好な環境を次世代に引き継ぐ持続可能性の追求は、重大な責務であります。

豊島区は、二酸化炭素排出量を実質ゼロとする「ゼロカーボンシティ」を目指し、昨年、2030年度における温室効果ガス排出量削減目標を、2013年度比で39%から50%に引き上げました。高いハードルではありますが、SDGs未来都市として、各種補助金の活用や中小企業向けのセミナー、区民向けのワークショップの実施など、ハード・ソフトの両面から、行政、事業者、区民、地域一丸となって、達成に向け、挑戦を進めてまいりたいと思っております。

区は、率先行動として、環境に優しいエネルギーの利用促進や省エネルギー化を進めるとともに、プラスチックの資源化を契機とした脱炭素化を積極的に推進します。

「プラスチックの資源回収」は、10月の区内全域での本格実施に向け、総力を挙げて準備を進めております。区民の皆様への影響が大きいことから、広報としまの全戸配布をはじめ、各地域での区民説明会やSNSによる情報発信、イベントでのPR、さらに、9月には分別方法を分かりやすく示したパンフレットの全戸配布など、丁寧な周知や説明に努めてまいります。

また、SDGsを意識できる「ファーマーズ・マーケット」において、環境都市として魅力ある発信ができるよう、企業や各種団体との連携を強化し、3Rの推進や食品ロス対策など、区民の意識・行動変容につながる様々な取組を展開するほか、地球の未来を担う子どもたちへの環境教育や、区民ひろばにおけるマイボトル用の給水器の設置など、環境にやさしい取組を一層進めてまいります。

さらに、公園・道路・公共施設などをはじめ、民間企業も含めた緑被率や緑視率を向上することにより、暮らしの中で緑を実感できるまちづくりに取り組んでまいります。

8.誰もが安全・安心に暮らせるまちづくり

8点目は、有事に備え、誰もが安全・安心に暮らせるまちづくりについてです。

区民の命と暮らしを守る「安全・安心の確保」は、日常生活、また、選ばれるまちの大前提であり、最優先で取り組むべき課題です。このため、日本有数の繁華街を有する都市特有の犯罪抑止や、地震や風水害など自然災害への備えをソフトとハード両面から行い、区民の命と暮らしを守り抜くことに、全力を尽くしてまいります。

区長就任後、各地区の区政連絡会にお伺いした際、災害対策の強化に関するお声を数多くいただきました。今年は、関東大震災から100年の節目の年です。区議会並びに区民の皆様とともに、災害への備えを万全にする契機としてまいりたいと思っております。

災害対策の中で、極めて重要な柱の一つは発災時の避難であり、区では、高齢者や障害者など、災害時要配慮者への対策を総合的に進めます。

まず、大正大学地域構想研究所の「防災・減災プロジェクト」との共同研究により、自力での避難が困難な方の個別避難計画づくりに着手いたします。また、区内介護事業者と連絡協議会を設立し、発災時の安否確認や介護サービス提供体制の構築を進めます。

また、マンションなど集合住宅における防災対策や、妊婦の方や様々な障害への対応、感染症対策、ペットの同行避難など、これまでの震災等における教訓を踏まえた避難所運営マニュアルの再整備を進めるとともに、町会や消防署等と連携し、実効性ある訓練を行ってまいります。

ハード面の対策である無電柱化は、まちの防災力を高める有効な手段の一つとして、現在、巣鴨地蔵通りや立教通りでの工事が進んでおります。今年度は、他の路線における道路の環境調査を行うなど、検討を進めてまいります。また、区内の4割を占める木密地域の不燃化・耐震化など、東京都と連携し、都市強靭化を強力に進めてまいります。

防犯対策では、先月、区内3警察署とイケバスを運行する民間事業者との間で、テロ対策パートナーシップを締結し、テロを含むあらゆる犯罪の未然防止に向けた連携体制を確立しました。また、深刻な社会問題となっている特殊詐欺については、青色防犯パトロール車による巡回パトロールや自動通話録音機の無償貸与のほか、様々な機会をとらえ、注意喚起を行うとともに、警察との連携により被害防止に取り組んでまいります。

有事の際に最も重要なのは、「ひと」のつながりであります。町会、商店会との連携、さらには、区民ひろばを核とした地域コミュニティの強化を推進することで、災害発生時に加え、日常に潜む犯罪から、子どもや高齢者等を守る体制づくりを進めます。

去る6月5日、巣鴨、池袋、目白の三交通安全協会とともに、令和4年首都交通対策協議会の会長賞を受賞いたしました。本区が行う自転車ヘルメット購入補助や、高齢者への研修会や街頭啓発活動等、これまでの取り組みが評価されたものです。

改正道路交通法の施行により、本年4月1日から自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されました。警視庁によると、自転車に乗っている事故で死亡した人のうち、6割が頭に致命傷を負っていたとのことであり、区では、これまで13歳未満と65歳以上の方を対象としていた購入費補助を全年齢層に拡大し、安心して自転車を利用できる環境を整えてまいります。

9.もっと身近な区役所になるための改革

区政を取り巻く課題への取組をより実効性あるものとするためには、区役所自ら、区民と寄り添う視点を持ち、あるべき姿へと進化し続けなければなりません。

私自身が区民の皆様から「顔の見える区長」となれるよう取り組むととともに、区役所がもっと区民に近い存在になるための変革を積極的に進めてまいります。

具体的な取組としましては、区政運営の責任者である区長と区民の皆様との「未来としまミーティング」を実施いたします。子ども、若者、女性、子育て中の方、高齢者、障害のある方など様々な視点から、あるいは、区民の皆様からのお声の多い区政の喫緊の課題などについて、忌憚のない意見交換を行いたいと考えております。

さらに、自分の住んでいるまちを良くするために、自らのアイデアを具体的な政策形成につなげる仕組みとして、区民の皆様から、区政課題の解決に向けたアイデアを募集し、実際に予算化する「区民による政策・予算提案制度」を導入いたします。

もっと区民に身近な区役所になるための第一弾として、早速、子ども版の「区民の声」を6月16日より開始いたしました。親しみやすい様式を職員が作成し、各小中学校や図書館等に設置しています。こうしたことにより、これまで区に届きにくかった子どもたちの声に応えてまいりたいと考えております。

また、デジタル・AIの活用により、区役所に直接行かなくても申請や支払いなどの手続きができる、より利便性の高い「来庁不要区役所」にも取り組み、区民の皆様の負担を軽減するとともに、区役所内の事務効率化を図ってまいります。

4おわりに

新型コロナウイルスについては、感染症法上の位置づけが5類に移行し、社会経済活動は、本格的に動き始めました。変化が激しい時代において、また、物価高騰が長引く中で、不安を抱える区民や事業者の方へのご支援、国内各地で続く地震災害への備え、さらには、ヤングケアラーや8050問題など部門横断で取り組むべき課題等々、区民の命と暮らしを守るための課題は山積しております。

こうした数々の課題に対し、全職員が「チーム豊島区」として結束し、組織の力を最大限に引き出し、スピード感を持って対応に当たっていくことはもちろんですが、区民や企業等の皆様、そして区議会の皆様のご理解のもと、ともに手を携え、豊島区を挙げて臨んでいかなければ乗り越えていくことはできません。

私は、この所信表明を胸に刻み、豊島区の発展のため、区民の皆様のため、全力を尽くします。

議員の皆様におかれましては、豊島区新時代を切り拓くため、何卒ご支援、ご協力を賜りますよう、よろしく申し上げます。

 

本日ご提案申し上げるのは、条例5件、補正予算1件、その他3件、合わせて9件です。

各案件につきましては、後ほど、日程に従いまして、齊藤副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議のほど、お願い申し上げます。

以上を持ちまして、私の招集挨拶及び所信表明を終わります。

お問い合わせ

企画課未来戦略推進第1グループ

電話番号:03-4566-2512