更新日:2025年2月20日
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令和7年第一回豊島区議会定例会の開会にあたり、区政運営に対する所信の一端を申し述べ、区議会並びに区民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
はじめに、新しい「基本構想・基本計画」について申し上げます。
1月23日の基本構想審議会において、立教大学教授の原田久会長から、新しい「基本構想・基本計画」の答申をいただきました。
基本構想・基本計画は、将来のまちの姿を描き、その基本となる考え方や実現に向けた方向性を示す区政運営の最高指針です。現在の「基本構想」は平成15年に、「基本計画」は平成28年に策定され、いずれも令和7年度末を計画期間としていました。しかしながら、コロナ禍を経た社会情勢やライフスタイルの変化などへの対応に加え、私の区政運営に対する考えを早急に反映させるべく、1年前倒しでの検討を決断いたしました。
策定にあたって、何よりも重視したのは、区民の皆様と共に考え、意見交換を行いながら、共につくり上げていくことです。基本構想審議会では、区民の皆様より公募する委員を6名と、前回検討した際の1名から大幅に増員し、学識経験者や区議会議員の委員の皆様と共に、豊島区ならではの特性や課題を踏まえ、魅力をさらに高めていくための方向性などについて、1年というタイトな期間内で、様々な視点から活発なご議論をいただきました。
また、審議会の議論と並行して、区民の皆様の豊島区への思いを積極的に把握し、構想・計画の策定に反映することにも力を入れてまいりました。大学生や外国人等を対象に実施した「未来としまミーティング」、10代から80代までの幅広い世代にご参加いただいた「区民ワークショップ」、そして子どもたちが「10年後の豊島区」を考えてくれた「としま子ども会議」など、多数のご参加をいただき、幅広いご意見・ご提案をいただきました。
こうして取りまとめた「基本構想・基本計画」の素案について、第4回定例会において区議会へ報告させていただいた後、パブリックコメントを実施するとともに、区内3か所で区民説明会を実施いたしました。パブリックコメントでは、「広報としま」やSNSでの発信に加え、区内各団体の皆様へも直接周知するなど、積極的な広報を展開した結果、若い方からご高齢の方、また企業・団体の方などから424件にのぼるご意見をいただきました。こうした策定過程を通して、多くの皆様に区政への関心を寄せていただき、区政参画への機運がこれまでにも増して高まっていることを実感いたしました。
いただいた声を一つひとつ受けとめ、庁内一丸となって区民目線で考え抜き、このたび「豊島区が目指す将来の姿」を「基本構想・基本計画(案)」として取りまとめました。
「豊島区基本構想」は、区政運営の「最高指針」であり、これまでの基本構想の精神を引き継ぎながら、時代や区民ニーズの変化を的確に捉え、将来の豊島区を取り巻く環境を見据えた、中長期的なまちづくりの「羅針盤」です。
そしてここに掲げる「理念」や「まちづくりの方向性」は、持続可能な都市として豊島区の新時代を切り拓き、未来につなげ、発展していくための、区に関わるすべての主体にとっての「共通の指針」となるものです。
まず、基本構想では、全体を貫く、まちづくりの基本的な考え方や行動指針であり、豊島区に関わるすべての人が共有するものとして、3つの「理念」を掲げています。
1つ目は、「誰もがいつでも主役」です。
変化の激しい、不確実性の高い時代だからこそ、公共の福祉の根幹であり、豊かなコミュニティの基礎となる平和や人権が尊重されたまちであることが極めて重要です。
本区では、声なき声にも耳をすませ、誰もが平和を享受し、ジェンダーをはじめ年齢、国籍、心身の状況、社会的・経済的状況、意見や価値観の違いなどの多様性を認め、尊重し合い、区民一人ひとりが幸せを感じ、あらゆるライフステージにおいて、健康で自分らしく過ごせるまちの実現を目指します。
ジェンダー平等の実現にあたっては、すべての区民の意識向上を促すとともに、性別等に起因した様々な困難を抱える方々への支援の充実を図ります。さらに、「女性のエンパワーメントの推進」を初めて掲げ、全ての女性が尊厳と誇りをもって、自らの生活や人生を決定する権利を保障し、あらゆる参画の機会において、一人ひとりが持つ力を十分に発揮できる社会の実現を目指します。
また、総人口の約12%が外国人である本区における「多文化共生の推進」にあたっては、暮らしへの支援を基礎として、地域社会での交流や活躍を促進するなど、国籍や生活習慣等が異なる多様な人々が、互いの違いを認め合い、地域社会の構成員として、共に生きていく社会の実現を目指します。
2つ目の理念は、「みんながつながる」です。
誰一人取り残さず、子どもから高齢者、障害のある方、外国籍の方など、あらゆる人たちをつなげ、孤独・孤立を防ぎ、みんなで地域課題の解決にあたるとともに、地域団体、「チームとしま」をはじめとする企業、他の地方自治体等、多様な主体との協働の輪を拡げることで、共創社会や、自律的な好循環が生まれる持続発展するまちの実現を目指します。
コロナ禍を経て、これまで以上に社会課題が複雑化・多様化する中、持続可能な地域経営を行うには、公と民が連携したまちづくりの重要性がますます高まっています。そして、多様な主体による多くの皆様の区政参画をさらに推進するには、区が信頼され、身近な存在であり続けるとともに、双方向でのコミュニケーションが確立していることが、その前提条件となります。
そのためにも、区民の皆様の声を丁寧に受け止めることを区政運営の基本姿勢とし、いただいた声を積極的に施策に反映する仕組みを強化するだけでなく、正確で分かりやすく、迅速な区政情報の発信を徹底いたします。
さらに、多様な主体と区による、新たなネットワークやプラットフォームを形成することにより、連携分野をこれまで以上に拡げ、地域が必要とするニーズをよりきめ細かに汲み取り、誰一人取り残さない、みんなでつくるまちを目指します。
3つ目の理念は、「出会いと笑顔が咲きほこる、憧れのまち」です。
多様な表情を持つ高密都市豊島区において、先人達が創造してきた地域に息づく文化や歴史を継承しつつ、それぞれの個性を生かしながら、地域の魅力と活力をさらに高めていきます。そして、安全・安心でにぎわいあふれる居心地の良い都市空間の中で、未来を担う子どもたちを地域全体で育み、地域全体に新たな出会いと笑顔があふれるまちを目指します。
豊島区は、若者や外国人をはじめ、多様な人々が行き交い、集うことで様々な出会いや交流が生まれるまちです。また、伝統的な文化と最先端の文化との出会いにより、新たな魅力の創造と発信を続けているまちです。
こうした区の有する個性とポテンシャルを最大限に活用し、強みはさらなる強さへ、弱みは新たな可能性へと変革を続けることで、人も地域社会も、健康で幸福な状態となり、まち全体に笑顔があふれ、区民が自分のまちを誇れる、「住み続けたい」と思える、そして区外の方からは「住みたい。訪れたい」と思われる「憧れのまち」を目指します。
この3つ目の理念には、豊島区の未来を担う子どもたちからの「笑顔あふれるまちを目指してほしい」という思いが込められています。
これが、私が目指す「ひと」が主役の区政を実現するため、区に関わる多くの皆様の声と共に作った、豊島区が目指すべきまちづくりの基本的な考え方です。
そして、この「3つの理念」を土台として、区民ニーズや社会の変化、地域特性などを踏まえて、これからの区政が進める「7つのまちづくりの方向性」を、政策の分野ごとにお示しいたしました。
今後、これまでの取組みを区民目線で進化させるとともに、組織の縦割りを無くし、分野横断で施策の総合的な対応を図るなど、様々な課題へ総力を挙げて向き合ってまいります。
まちづくりの方向性の1つ目は、「地域と共に支えあう安全・安心なまち」です。
7つのまちづくりにおいて、区民の皆様の生命・健康・財産を守ることを最優先に考え、いの一番に掲げたのが「安全・安心」です。
近年は多発する地震や異常気象による豪雨災害、新たな感染症等、様々な危機的事象の発生リスクが、これまで以上に高まっています。
日本一の高密都市に暮らす区民の皆様が安心して生活し、生命の危険に脅かされない強靭で安全・安心なまちの実現に向け、救援センターの運営体制や備蓄確保の強化、建物の不燃化・耐震化、道路・公園等の整備、さらには防犯活動への取組みなど、まち一体となって、ソフト・ハードの両面から実効性の高い対策を講じることにより、安全・安心なまちづくりを進めます。
また、地域区民ひろば等の地域拠点を中心として、国籍を問わず、多様な世代の地域活動への参画を促進し、地域コミュニティの活性化を図るとともに、地域課題の解決に向けて地域一体となって支え合えるまちを目指してまいります。
さらに、ファミリー世帯の定住化支援をはじめとする住環境の整備を推進し、誰もが安心して暮らし続けることができるまちを目指します。
まちづくりの方向性の2つ目は、「子育てしやすく、子ども・若者が自分らしく成長できるまち」です。
「消滅可能性都市」を脱却した本区が「持続発展する都市」となるには、子どもと子育て家庭に寄り添ったぬくもりのあるきめ細かな子育て環境と、子ども・若者目線のまちづくりが必要です。
出産から子育てまで切れ目のない支援、一人ひとりを大切にした質の高い保育により、安心して子どもを産み育てられる環境づくりに、引き続き取り組んでまいります。
教育の充実に向けましては、今年度策定いたしました「豊島区教育大綱」、さらに現在、教育委員会において策定を進めている「豊島区教育ビジョン2025」、「豊島区特別支援教育推進計画」を踏まえ、子どもたち一人ひとりが、個性や特長を生かして、笑顔で元気に、たくましく未来を切り拓いていけるよう、学校・家庭・地域・関係機関等が連携して、全ての子どもの学びと成長を支えてまいります。
また、子どもや若者たちが抱える困難は多様であり、その一つひとつに寄り添った対応が求められています。豊島区の未来を担う子どもや若者が安心して過ごせる居場所を創出するとともに、自分らしく夢や希望を持って成長できる、子ども・若者の笑顔あふれるまちづくりを進めてまいります。
まちづくりの方向性の3つ目は、「生涯にわたり健康で、地域で共に暮らせる福祉のまち」です。
少子高齢化や核家族化、単身世帯の増加が進む中、地域の人間関係の希薄化に伴って、孤独・孤立対策などへのきめ細かな支援や、自ら健康を守り育む環境づくりが求められています。
2025年は、団塊の世代が全員75歳以上となり、今後、介護を必要とする高齢者が増えていくとされています。高齢者人口がピークを迎える2040年代を見据え、健康寿命を延伸し、自分らしい生活を続けていくため、介護予防・フレイル予防の取組みを区内全域で展開するほか、専門職によるアウトリーチを強化するなど、身近な地域における効果的な取組みを支援します。
また、支援を必要とする方が適切な相談支援につながるよう、介護が必要な方や障害のある方、医療的ケア児、生活にお困りの方、さらに犯罪被害に遭われた方など、すべての福祉相談窓口で様々な悩みごとを受け止め、包括的に支援する体制を強化し、本人が望む社会とのつながりや自立した生活を地域で支え合うまちづくりを進めます。
一人ひとりが自らの健康を意識し、生活習慣等の改善につながる取組みの展開とともに、感染症など健康危機への備えも大切です。
区民の健康を守る新しい拠点として、令和8年5月、南池袋二丁目C地区再開発ビルへの池袋保健所の移転を予定しています。一人ひとりが健康に対する高い意識を持ちながら、健康的なライフスタイルを身につけ、そして実践へとつなげていくために、区民の皆様の健康づくりを全力でサポートできるよう、体制を整えてまいります。
また、感染症等から身を守るため、予防接種についても、国や東京都の動向を踏まえながら、接種費用の助成を継続してまいります。
まちづくりの方向性の4つ目は、「豊かな心と活発な交流を育む多彩な文化のまち」です。
これまで築いてきた「文化を基軸としたまちづくり」を継承し、地域の歴史・文化を守り伝え、発展させることは、まちに元気と心に潤いをもたらします。若者を中心に次々と生まれる新たな文化を受け容れ続けるとともに、区民一人ひとりが文化を身近に感じる豊かな暮らしの実現に向けて、様々な文化の担い手が地域一体となってまちを盛り上げていく多彩な文化活動を支援します。
今後も、企業・団体・地域からアイデアをいただきながら、これまで以上に、次世代を担う子どもたちが気軽に文化芸術に触れ、体験できるイベントや事業を実施いたします。実施にあたっては、来年度、「としま文化応援団(仮称)」事業を展開するとしま未来文化財団と区が両輪となり、子ども、若者をはじめ、障害のある方、外国籍の方など、世代や障害の有無、国籍等を問わず、文化芸術を身近に感じ、体験・応援できる取組みを進めることにより、誰もが良質で多彩な文化芸術に触れ、様々な形で文化活動に参加し、心豊かな生活を送ることができるよう、文化の裾野をさらに拡げてまいります。
また、学びのスタイルの多様化に応じて、知の拠点、さらには地域コミュニティの拠点ともなる図書館や地域文化創造館を生涯学習の「場」として整備するとともに、スポーツに親しむことができる機会や環境を整えることで、学びやスポーツを通じた生き生きとした生活と地域とのつながりを支えてまいります。
まちづくりの方向性5は、「活気とにぎわいを生みだす産業と観光のまち」です。
個性あふれる商店街の活性化、多様な企業の集積、魅力ある観光資源の活用と発信は、まちの成長の要です。区といたしましては、社会経済状況やニーズをしっかり見ながら、ものづくり産業を担う事業者等の経営基盤の強化や多角的なビジネス支援、スタートアップを支援するとともに、商店街の活性化に力を入れ、地域経済の持続的な発展を促進してまいります。
また、マンガ・アニメ等の地域資源を地域の企業・団体・大学等と連携しながら、本区のブランドとして磨き上げ、戦略的に発信することで、国内外から多くの人々を惹きつけるまちとしていきます。
多発する消費者トラブルの未然防止に向けては、国民生活センター、東京都消費生活総合センター等の関係団体と連携を強化するとともに、特に、子どもや高齢者、障害のある方、外国籍の方への消費者教育の充実を図ります。
まちづくりの方向性6は、「共につくる地球にも人にもやさしいまち」です。
地球温暖化の影響が拡大する中、本区は高密都市だからこそ、限られた資源を有効に活用し、環境負荷の低減やみどりを守り続ける責任があります。
このたびの基本計画の分野別計画である、新たな「豊島区環境基本計画」は、策定にあたり、「2050年ゼロカーボンシティ」の担い手となる子ども・若者の声を数多く反映しており、また、「区の率先行動」を目標として位置付けたことが大きな特徴です。
多様な主体が相互に協力しながら、省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入等を促進するとともに、民間事業者や大学等と連携した環境保全・環境行動に向けた啓発・教育を推進することで、未来を担う子ども・若者が、環境を自分事として捉え、環境都市づくりに多くの場で参画することを促すなど、新しい発想も活かしながら、脱炭素社会の実現を目指します。
また、循環型社会の構築に向けた3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進するとともに、外国人を含めた適正分別・適正排出の意識啓発を進めてまいります。
さらに、都市のみどりを保全し育てるとともに、地域美化の推進により、クリーンで美しいまちを創出し、良好な生活環境を、次世代へ引き継いでまいります。
まちづくりの方向性7は、「誰もが居心地の良い歩きたくなるまち」です。
今日、誰もが安心して快適に楽しむことができる魅力ある都市づくりを推進していくことが求められています。本区の歴史や文化などの地域特性や地域課題、地域資源を踏まえつつ、個性と魅力あふれる、特色ある地域拠点を創出してまいります。
池袋駅周辺エリアでは、これまでHareza池袋や4つの公園の整備などを進めてまいりましたが、池袋駅を中心に、各地域の魅力あるスポットを結び付けることで、区内全体の回遊性を高めるとともに、交通安全の普及啓発を推進することで、居心地の良い、魅力あふれる、ウォーカブルな都市空間を形成します。
昨年11月、池袋再生の起爆剤として位置づけてきた、池袋駅西口再開発事業の都市計画決定がなされ、長年にわたる検討を経て、次なるステップへと進むことができました。今後は、東西デッキ整備や東口の駅前広場の再編、いわゆるクルドサック化の実現を目指してまいります。都市づくりには長期間を要しますが、多くの皆様に喜んでいただける更なるまちの価値向上に向け、池袋エリアプラットフォームなど公民が連携し、居心地の良い、魅力あふれる、ウォーカブルな都市空間を形成してまいります。
また、公園の再構築を進め、地域の人々に親しまれる、魅力あふれる公園づくりを進めてまいります。今後、千葉大学の竹内智子准教授のご助言のもと、住民とみどりとの関わり合いを深める「都市型農園」の取組みなど、様々な事例をご紹介いただきながら、一つひとつの公園の用途に特色を付けて、特徴のある公園づくりを行うことで、区民の皆様に愛される空間づくりを目指してまいります。
区民の皆様と共に、この「3つの理念」と「7つのまちづくりの方向性」による区政運営を進めていくことで、豊島区を舞台に生活、活動するあらゆる方々が心豊かで、人と地域がつながる「ウェルビーイングなまち」を目指してまいります。
次に、7つのまちづくりの方向性を踏まえた取組みとして、緊急性や重要性から、来年度、特に重点を置く事業について申し上げます。
まず、区民の皆様の関心が高く、緊急性も高い防災対策です。昨年は、能登半島地震や、友好都市協定・防災協定の締結都市である山形県遊佐町を襲った豪雨災害など、各地で大規模な自然災害が発生し、本区においても、災害対策強化の緊急度が高まっております。
区では、これまで、被災地への支援を通じ、多くの教訓を得てきました。こうした経験と、今年5年ぶりに修正を行う「地域防災計画」を踏まえ、備蓄・物流の強化、避難所対策の推進、区民防災力の向上など、様々な施策を進めてまいります。
まず、防災備蓄用品や避難所運営の拡充策として、昨年5月に設置した「女性の視点から見た防災プロジェクトチーム」における検討を踏まえ、プライバシー保護対策としての間仕切りテントや、保湿クリーム、おりものシート、防犯用の笛などに加え、避難所の居住性向上に向けたエアベッドや蓄電池など、備蓄の充実に努めてまいります。さらに、簡易トイレ、たん吸引機、乳児用肌着、オストメイト備品など、福祉救援センターの資機材の備蓄も進めます。
防災訓練につきましては、これまでは2年に1回のペースで各救援センターの開設・運営訓練を実施してまいりましたが、今後は、希望のある地域を対象に、毎年実施いたします。今年度開始した医療救護所開設訓練は、豊島区医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護師会、柔道整復師会をはじめ、医療機関の皆様のご協力をいただきながら継続するとともに、ペット同行避難訓練については、実施回数を増やします。
先月実施した帰宅困難者対策訓練では、一時滞在施設及び一時待機場所となる各事業所の担当者の方にもご参加いただきました。今年度末から本格稼働する東京都の帰宅困難者対策オペレーションシステムを活用し、一時滞在施設を開設して帰宅困難者を受け入れるところから、交通機関が運行を再開し、帰宅困難者が一時滞在施設から出て、施設を閉じるまでの一連の流れを実際に確認することができました。
また、今年度の区民提案制度で選定された事業として、発災直後の駅周辺におけるデジタルサイネージを活用した情報発信に取り組んでまいります。まずは、来年度、区民センター及び池袋西口公園の公設サイネージの活用に向け、システム改修や、運用ルール、発信情報を整備するとともに、池袋駅周辺にある民間サイネージの活用について、関係企業との協議を進めてまいります。
救援センターの運営強化については、防災士資格取得の助成対象者を従来の7名から14名に拡大し、さらに資格取得者などに救援センターの防災リーダーや運営委員として活躍いただけるよう取り組むとともに、女性やLGBTQの方など、様々な避難者に配慮した工夫をしてまいります。
区民防災力の向上に向けた対策として、高齢者や障害のある方に対する家具転倒防止器具や、ガラス飛散防止フィルムの購入・設置助成を新たに行うとともに、区民提案をもとに「防災を楽しく学ぶ体験イベント」や「防災マップ作り」を事業化し、子どもから高齢の方まで防災をより身近に感じてもらえるよう、取組みを進めてまいります。
次に、区民の皆様の生活の基盤となる住宅施策についてです。
来年度より、子育て世帯の定住促進施策として、子育てファミリー世帯を対象とする家賃助成に区内居住要件を設けることと併せて、所得要件の緩和や助成月額の拡充を行うとともに、親世帯と子育て世帯が共に支え合いながら住み続けられるよう、新たに同居や近居する子育て世帯に対し、転居費用等の助成を行います。
また、セーフティネット専用住宅のオーナー様へ、空室保障や成約謝礼金を支給するなど、セーフティネット専用住宅の供給を促進していきます。
老朽化した区営住宅については、複数世帯用の居室に単身高齢者が入居しているなど、住戸規模に合っていないケースが増えていることから、建て替えに合わせ、単身の高齢者への見守りなど福祉サービスの提供や、若者・子育て世帯のニーズへの対応、また多様な世代、世帯が交流することができる居場所などを有する「新たな公営住宅」を検討し、造りかえてまいります。それとともに、現在財政負担が大きくなっている「借り上げ住宅」にお住まいの方の新たな住宅への転居を進め、すべての入居者が転居した借り上げ住宅は返還していく考えであります。
次に、豊島区の未来を築く礎ともなる「子ども・若者の居場所事業」です。
区内には、子ども食堂や無料学習支援など、支援を要する子どもたちが安心して利用でき、心の拠り所となっている居場所が多く見られます。
「子どもの居場所事業」は、家庭や学校で「自分の居場所を見い出せない」と悩む子どもたちが安心して過ごせる場所を確保するために、食事や学習の機会、遊び体験を提供する地域団体への補助を行います。
また、UR都市機構が所有する東池袋4・5丁目のまちづくり地区の遊休不動産を活用した「若者の居場所事業」を開始いたします。UR都市機構より、本区が土地・建物を無償でお借りし、若者支援を行うNPO法人等に提供することで、若者の居場所の創出や若者支援の充実を図ります。
この事業は、まちづくりの進捗に伴う空き家・空地の増加による地域活力の低下という課題に対し、若者支援と地域活性化の両面から資するものと考えています。
これらの事業を着実に進めることで、子どもや若者が安心して過ごせる居場所を創出し、それぞれが自分らしく成長できるまちづくりを進めてまいります。
次に、新たな教育大綱・教育ビジョンを踏まえた教育の充実についてです。
来年度は、豊島区の子どもたちが、どのような環境であっても、元気で明るく、未来に夢と希望をもって歩みを進めていけるよう、様々な事業を実施してまいります。
まず、「小1の壁」対策です。児童の朝の見守りを「おはようクラス」、夕方の見送りを「おかえりサポート」と親しみやすい名称とし、1月8日から駒込小学校と清和小学校で試行を開始いたしました。
「おはようクラス」は、事前の利用登録者は両校合わせて10名と小規模でのスタートでありましたが、本区の取組みに関する報道を見て、来年度入学予定の保護者の方から問い合わせが寄せられております。また、「おかえりサポート」は、シルバー人材センター会員が、交通量の多い通学路、または暗い通学路を安全な場所まで児童を見送っており、児童からは「今まで通学路が暗くて怖かった。一緒に帰ってくれてうれしい。」という声が届いております。この事業は、3月までの試行を踏まえ、来年度から全小学校で実施いたします。
次に、学習環境の整備です。
新たな学校改築計画の策定を契機とし、改築が未定である区立小学校14校について、改築時期を迎えるまでの間の学習環境の向上を目的に、学習環境整備計画を策定しました。本計画では、特にICT環境、プールや学校図書館の環境整備に重点的に取り組むこととしております。
ICT環境の整備では、令和7年度から8年度の2年間で、電子黒板が導入されていない全ての学校に、電子黒板と同等の機能を持ったタッチパネルを大型モニターに装着いたします。また、来年度から3年間で児童・生徒の学習用タブレットパソコンの更新を行うとともに、教員向けには、今年度、区立小学校で導入した指導者用デジタル教科書を、来年度は、中学校の教科書改訂に合わせて、区立中学校で国語、数学など11教科で導入いたします。
プールについては、猛暑の影響による水泳指導の中止や、指導中の熱中症対策が必要な状況となっていることから、令和7年度からの3年間で、各学校の屋外プールに遮熱シートを設置するなどの対策を講じてまいります。
また、学校図書館については、調べ学習やグループ学習等による効果的な学習が可能な「学習情報センター」としての機能を、計画的に整備してまいります。なお、学校図書館の面積が狭小な学校については、他の教室との配置転換も含めた改修を優先的に検討し、「学習情報センター」として必要なスペースの確保に努めてまいります。
これらの取組みのほか、空調設備をはじめとした教室環境や校庭、子どもスキップにつきましても、計画的な整備を行うことで、子どもたちの学習環境の改善を進めてまいります。
次に、不登校児童・生徒への支援についてです。5年間で2倍に増えている不登校児童・生徒への対応の充実・強化を図ることは、現在の教育課題として極めて重要であると考えております。現在、中学校では、別室教室を居場所として用意し、そこに、「学校に行くことはできても、教室には行きづらい生徒」が通ってきていますが、担任と接する時間は少なく、自習をしている状態でした。来年度は、全ての中学校の別室教室に不登校対策支援員を配置し、生徒の学習支援や悩み相談、家庭との連絡などを丁寧に行うことにより、不登校の生徒や家庭への支援のさらなる充実を図ります。
また、「大人数が苦手」「授業についていけない」「人間関係に悩みがある」といった様々な理由で学校に行きたくても行けない生徒の居場所として、チャレンジクラスを西池袋中学校内に設置します。フランス語で「桜の木」を表す「スリジエ」をクラスの名称としました。「私を忘れないで」という桜の花言葉から、子どもたちの声に耳を傾け、誰一人取り残さず、生徒の主体性を大切にしたきめ細かな教科指導等を行うことで、子どもたちが将来、社会に出て活躍できるよう、支援を行います。
教育センターには、「不登校対策スーパーバイザー」を新たに配置し、各学校を巡回し、指導助言を行うことにより、全ての小・中学校における不登校対応の強化を図ってまいります。さらに、東京都の不登校対応専門の正規教員である「不登校対応巡回教員」を池袋中学校と千登世橋中学校に配置し、各中学校の校内別室で学習指導を行うなど、スーパーバイザーと連携して学校を支援いたします。
また、特別な配慮を必要とする児童・生徒が安心して学校生活を送ることができるよう、特別支援学級の子どもたちの学びを支援する特別支援教育指導員を4名、通常の学級で配慮が必要な子どもの支援をする学級運営補助員を2名増員し、サポート体制の強化を図ります。
なお、本定例会では、「豊島区教育委員会の委員の定数を定める条例」を上程いたします。近年、区立の小学校では、いじめ問題など、困難事案が増加していることから、教育委員会の合意形成にあたり、より迅速かつ適正に対応するため、教育委員に法律の専門家を1名増員し、5名とするものです。
今後も、子どもたちが安心して教育を受けられる環境の整備に努めてまいります。
基本構想・基本計画で掲げたまちづくりを着実に実現していくためには、これまで以上に区民感覚に富み、区民目線で考え抜き、粘り強く最後まで成し遂げることのできる職員の育成と、変化に柔軟に対応する信頼性の高い組織の構築が重要です。
区民ニーズや社会情勢の変化などにより、行政需要はさらに複雑化・多様化しています。こうした需要に的確かつ迅速に対応できるよう、そして基本構想・基本計画の着実な実現に向け、万全の体制で取り組んでいけるよう、来年度、組織体制を見直します。
主なものとしては、これまでの豊島区の発展の礎とも言える文化政策の推進体制の強化、並びにスポーツ政策の充実のため、「文化スポーツ部」を、また、中小企業、商店街の支援強化とともに、産業と観光の一体的振興を図るため、「産業観光部」を設置いたします。新たな体制のもと、区民の誰もが文化やスポーツを身近に感じられる暮らしの実現とともに、まちの活気と賑わいの創出、観光消費の拡大による地域経済の好循環につなげてまいります。
また、スピード感をもってデジタル化を進めるため「DX推進担当課」を、文化政策を戦略的かつ機動的に展開するため「文化企画課」「文化事業課」を、法務体制を強化するため「法務担当課長」を新設するとともに、業務移管や統合、組織名称の変更などの見直しを行います。
さらに、来年度より、内部統制を本格実施いたします。法令や社会規範等に基づく適正な業務遂行のため、業務におけるリスクを可視化し、適切な予防策を講じることにより、組織全体でリスクマネジメント体制を強化し、区民の皆様から信頼される公正・公平な区政運営を実現してまいります。
次に、区民サービスの向上と業務効率化に大きな力となるDXの推進についてです。「来庁不要区役所」の実現に向けた行政手続きのオンライン化では、今年度中にオンライン手続きを300事務に拡大すべく取組みを進めております。現時点で200を超えるオンライン化が完了しており、将来的には全ての手続きでオンライン化が実現するよう進めてまいります。加えて来年度は、職員研修の実施や課題検討にあたっての技術的支援など、デジタル庁による伴走型の個別支援も活用する予定としております。
一方、情報システムの標準化では、全国的な進捗懸念を受け、国が昨年12月に基本方針を改定し、令和7年度末とされていた対応期限が一部延長されました。
本区といたしましては、区民サービスに影響が生じることのないよう、システムの安定的な移行を最優先としつつ、新しいシステムへの移行を契機とした業務の抜本的な見直しやシステム運用の最適化を進めることで、区民サービスの向上と業務効率化を実現してまいります。
また、本区のDX施策を統括する役職として、来年度からCIO補佐官を設置いたします。本職には、デジタル技術に精通した人材を任用する予定であり、人材面でも体制を強化することで、区のDX推進を加速してまいります。
そして、これらの取組みを推進するための令和7年度予算についてです。令和7年度一般会計当初予算案は、新たな基本構想・基本計画の実現に向け、第一歩を踏み出す予算として、1,705億9,300万円を計上いたしました。
一般会計と3特別会計を合わせた当初予算案の総額は、前年度と比べて188億8,900万円、率にして8.9%増の2,309億3,900万円となっております。
予算編成過程においては、全庁を挙げて「事業見直し」を実施し、有効に財源を再配分することで、行政需要の変化に柔軟に対応する予算編成をいたしました。この事業見直しは、単に予算を減らすことを目的とするのではなく、必要性・有効性・効率性などの観点から区民ニーズの変化に応じて、限りある財源を再配分するとともに、今の時代に合わせ、より有効な事業として再構築することを基本的な方針としております。事業見直しは、3か年集中して実施する予定としており、来年度は重点テーマを設定し、取組みを続けてまいります。
一方、新規・拡充事業では、特に安全・安心、教育、子どもや若者の孤独・孤立対策、住宅施策に注力いたしました。この中には、「防災・デジタル」をテーマとした区民提案制度で選定された6件の提案も含まれており、合計で190事業、64億円を計上しております。
投資的経費は、池袋保健所の本移転など、区有施設の更新と池袋の都市再生を着実に進めるため、対前年度比127億円の増となる375億円を計上いたしました。
歳入のうち、特別区民税は、対前年度比30億円、率にして9.3%の増となる353億円、特別区財政調整交付金は、14億円の減、率にして3.7%の減となる365億円を計上しております。
特別区債につきましては、投資的経費の増に対応するため、南池袋2丁目C地区市街地再開発事業や池袋保健所移転等の財源として、対前年度比43億円、99.2%の増となる87億円を計上しております。併せて、公共施設再構築基金をはじめとした基金を有効に活用することで、世代間の負担の公平性を担保しております。
学校改築など、将来的に見込まれる行政需要への備えとしては、義務教育施設整備基金への積立てを8億円増の24億円とするなど、基金へ積極的に積み立てたほか、財政調整基金の取崩しなく予算を編成いたしました。
令和7年度予算案は、基本構想・基本計画の策定のプロセスにおいて、多数頂戴した区民の皆様の声をできる限り実現できるよう、必要な新規・拡充事業を計上するとともに、中長期的視点も備えた予算案であると考えております。今後ご審議いただく本予算案をもとに、基本構想・基本計画の実現に向け、大切な第一歩を着実に進めてまいります。
また、2月3日に開催された都区協議会において、令和7年度都区財政調整協議が整いました。令和4年度以降、特別区側は「児童相談所の設置は、都区の役割分担の大幅な変更に該当するため、その関連経費の影響額について、財調の配分割合を変更」することなどを東京都に求め、協議を続けてきましたが、今年度の協議において、特別区の配分割合を55.1%から56%とすることで合意に至りました。併せて、災害対応経費等に充当される特別交付金を6%に変更し、普通交付金を94%とすることとなりました。また、1月31日の東京都の予算プレスでは、都市計画交付金予算額を200億円から100億円増額し、300億円とすることも発表されました。
これらは特別区長会が東京都との協議を粘り強く続けてきた結果であり、大変意義深いものであると認識しております。
なお、本区の特別区財政調整交付金も増額となる見込みであり、来年度の交付金額が確定する時期に、補正予算を計上したいと考えております。
次に公共施設更新計画についてです。公共施設更新計画は、基本計画の実施計画である「未来戦略推進プラン」で示してきた「これまでの施設の計画」と、学校改築計画をはじめとした「施設に関する個別の計画」を含めた、今後10年間の新設、改築、長寿命化改修を対象とする公共施設全体の計画として、このたび策定をいたしました。区民生活に欠くことのできない施設を将来に渡って整備するため、財政見通しも併せてお示しした、中長期的な更新計画となります。
この計画では、見守りなど福祉サービスの提供もできる多様な世代・世帯が交流する新たな公営住宅の再整備や、特色ある公園づくりを進める公園の再構築、変化する区民ニーズへの対応を含めた駐輪施設の総合的な見直し、里親と里親委託児童への支援機能を持ち、地域における施設養護や家庭支援等のニーズに応え得る児童養護施設の誘致などを示しております。
今後、この計画を着実に進めるために、このたびの基本構想・基本計画の実施計画の中で、具体的な進捗管理を行ってまいります。さらに、実施計画では、更新計画に位置付けていない施設の部分的な改修も含めて、直近の改築や改修の予定を示します。
なお、公共施設の改築や改修には、多額の経費を要することから、中長期視点に立った財政運営のもと、財政の平準化・世代間負担の公平性の確保を図り、計画的に進めてまいります。
令和7年度は、私の区長任期の折り返し時点を迎える年度となり、時を合わせ、新しい基本構想・基本計画に基づく「新しい豊島区政」がスタートいたします。先月、基本構想審議会で答申をいただいた折、原田会長より、「この答申が終わりではなく、新たなスタートである」というお言葉をいただきました。
1年をかけて、多くの皆様との意見交換を積み上げて作り上げた、新しい未来への大きな目標に向け、そして、基本計画に掲げる一つひとつの施策の実現に向け、引き続き、区民の皆様の声を大切に受け止めながら、全庁一丸となって力を尽くしてまいります。
区議会の皆様、区民の皆様のご理解、ご協力をお願いたします。
なお、本定例会には、豊島区基本構想の他、条例20件、予算4件、補正予算3件、その他6件、合わせて34件の議案を提案しております。
よろしくご審議のほど、お願い申し上げます。
以上をもちまして、私の招集挨拶及び所信表明を終わります。
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