ここから本文です。
私の家は小さな公園の隣にあった。放課後友達が遊んでいるのを家から見ながら入っていけずに、庭のお気に入りの場所に一人でいたり、図書館に行って好きな本を読んでいたり、内向的な子どもだった。好きな絵本は『ちいさいおうち』(バージニア・リー・バートン著)や、『かわ』(加古里子著)。今、みどりのまちづくりを仕事にしている私にとって、公園と図書館は小さい頃の居場所だったのかもしれない。
「サードプレイス」。家庭でも仕事でもない第三の場所のことで、コロナ禍でこのような都市の居場所が失われているという。公園も図書館もだれかのちょっとした居場所、「サードプレイス」としての機能がある。
豊島区は、区内に140以上ある中小規模公園の活用プロジェクトを進めている。コロナ禍前から、コーヒーが飲めて絵本を運ぶ「PARK TRUCK」を運行、公園でくつろぐ場所をつくっていた。近所の子供たちが集まってきて、大学生のお兄さんと遊び、絵本を読む。もしかしたら、誰かの居場所をつくっているかもしれない。
私は多くの公園整備の仕事をしてきたが、公園を特別な場所にするのは設計者でも施設管理者でもなく、利用する人だ。今でも新人の時に、花の名前を聞いてきた高齢婦人に「ありがとうね。」と初めて仕事でお礼を言われたことが忘れられない。
一人一人が居心地よく過ごせる場所。心が弱っているときに落ち着ける場所。ちょっとした、でも一生の想い出になるような交流が生まれる場所。公園の花に救われる人もあれば、一冊の絵本に元気をもらう人もいる。「公園」と「図書館」は、そういう場所であればいい。一緒になるともっといい。青空の下、世代間で絵本を通じた交流が生まれたら素敵だと思う。
SDGsは世界的な目標で遠く思えるけれど、自分の声掛け、植えた花、ちょっとした行動が、だれかの心の支えになっているとき、「誰一人取り残さない」社会づくりの一端を担っている。公園や図書館はそんな背景となる場所でありつづけてほしい。
プロフィール
専門は公園緑地政策。東京都に技術職として入庁、主に都市計画部門で、景観まちづくりや都市再生、広域緑地計画を担当。在職中に東京の緑地計画の研究で博士号を取得。23区の公園事務所の工事課長として、芝公園の再整備や小石川後楽園唐門の復元など多くの公園再整備に携わったのち、2020年7月より現職。豊島区みどりの基本計画策定委員会副会長。
この秋、久し振りにローカル列車で短い旅をした。夕暮れ近い駅から、練習帰りと思える男子高校生が5人ほど乗ってきて、ガラガラの向いの席に座った。
彼等は、大型のスポーツバッグを足許に置くと早速に携帯を出してガヤガヤと話し始めた。ゲームでも始めたのか?
私の真向いに座った一人だけが話の輪に入らない。彼はバッグから一冊の本を取り出して熱心に読み続ける。
列車が駅に着く度に一人減り二人減りして、車内には私と、読書に夢中の高校生の二人だけが残される。
次に停車した駅で彼は発車寸前に気付いたらしく足許のバッグをつかんで、ドアからホームに飛び降りた。彼が座っていた席には、一冊の文庫本が忘れられ、残っていた。その一冊。カミュの『異邦人』。
60年近く前、九州の田舎町の受験生だった私は、正門前にある町立図書館に入り浸っていた。そこは暖房の効いた格好の受験部屋。
放課後の仲間の溜り場。当時の受験生のバイブル「チャート式」の数学に挑戦していた。私は一人離れて手当り次第に本ばかり読んでいた。18才の私の記憶に強く残る三冊の本。パール・バックの大冊『大地』。この年、初版が出たばかりの井上靖『詩集 北国』。そしてもう一冊がカミュの『異邦人』だった。
本を手にする若者が少なくなったと言われる時代。日焼けしたスポーツ少年としか見えない高校生がローカル列車に忘れて去った一冊の文庫本『異邦人』。
私の18才の記憶を蘇らせてくれた高校生。
私の新しい記憶の中の一人となった。
この4月。改正民法施行によって、「成人」の規定が20才から18才に引き下げられる。60年前の私。ローカル線の高校生。共に18才。「成人」と呼ばれる年齢に達してなかった。
プロフィール
昭和17年(1942)大阪生れ福岡育ち、昭和40年(1965)TBS入社ラジオ・テレビの制作担当、平成21年(2009)大正大学表現学部教授
プロ野球「西鉄ライオンズ(現西武)」を愛し続ける九州男の気質が抜けない。大正大学の学生たちとNPO法人「としまの記憶」をつなぐ会の映像制作を続けている。
実は、ぼくはあまり本が好きではない。父や母に「本を読みなさい。」と勧められるが、手に取るまでに意外と時間がかかる。でも図書館は違う。新しい本、見たことがない本、面白そうな本・・・。たくさんの本に囲まれているだけで、なんだかワクワクする。クイズラリーなど、楽しいイベントがあるのも魅力的だ。
小さいときによく図書館に連れて行ってもらったことを思い出す。たくさんの絵本をバッグに詰めて重たい思いをしながら家に帰ったこと、寝るときに母が読み聞かせをしてくれたことはよく覚えている。ぼくにとって図書館とは、ずっとそこにいたいと思うような心地よい場所だった。
前にも書いたが、ぼくはあまり本を読むのが好きではない。でも、ひとたび本の世界に入ると時間を忘れ、没頭する。そんな時、本は不思議だなあと感じる。現実では考えられない経験ができたり、新しい発見があったりしたときもやはり、本の魅力を実感する。
夏休みのはじめ、図書館に行くことが恒例行事となった。兄が「調べる学習コンクールinとしま」に参加することを決めたからだ。毎年、資料を探すために一緒に図書館に通った。兄が賞を獲ると、ぼくも挑戦したいと思い、引き継いで図書館に通うようになった。決まったテーマの本を探すために、いつも相談に乗ってくれたのは、図書館の人たち。ぼくにでも理解できるような資料をたくさん検索してくれた。それに応えるように、ぼくは夢中で調べてページを積み重ねた。目指すは50ページ。長い道のりは容易いものではなかったけれど、新しい発見があるたびに書くスピードは上がっていった。
ぼくの周りには本の素晴らしさを知っている人しっぴつがたくさんいる。そんな人たちに囲まれて本の魅力を知った。これからもたくさんの本に出会い、ぼくもその良さを伝えられる人になれたらいいと思う。
【受賞作品内容紹介】
最大級の台風の到来で、家の前の神田川は水位が上がって流れも速く、恐怖を感じた。父親に聞くと、大きな治水工事が行われたから安心とのこと。治水について興味をもち、気になって調べることにした。
「水を治める者は、国を治める」。奈良時代のお坊さんに始まり、信玄、秀吉、家康など、名だたる武将たちは、様々な治水工事をした歴史があった。現在でも都市型水害に備えて下水道、浸透ます、雨水調整池などの整備によって対策が行われている。神田川の治水に大きく関わっている「神田川・環状七号線地下貯水池」をはじめ、「地下神殿(首都圏外郭放水路)」、「小河内ダム」などの施設を実際に見学し、身近な治水について詳しく調べた。
大きな治水施設も必要だが、身近なところから治水に関わっていくことが大切だと感じた。
【作成時のエピソード】
プロフィール
小学校2年生から「図書館を使った調べる学習コンクールinとしま」に取り組み、連続入賞。令和2年度第24回全国コンクール小学生の部(中学年)にて優秀賞・図書館振興財団賞受賞。
寄稿者はとしまコミュニティ大学の内、登録して学んでいる「マナビト生」です。マナビトゼミ担当・当中央図書館開催の書評講座講師の佐藤壮広氏の監修のもと、毎回テーマに合わせて文学、児童書、科学や評論などの分野のお薦め本を紹介しています。
南池袋公園(2016年)、雑司が谷公園(2020年)、としまみどりの防災公園(2020年、通称イケ・サンパーク)と、豊島区内に新しい公園が次々と整備されつつある。カフェの併設などもあり、特に平日午後や休日にはたくさんの人が憩いに訪れる。公園での物語もたくさん生まれるだろう。そんな街はとても素敵だ。
書名『 風が強く吹いている』三浦しをん著 新潮社刊 2006年
陸上競技部の十人は立川の昭和記念公園にいた。風がほとんどない今日は、戦いに適した箱根駅伝の予選会だ。新入生の蔵原走を言葉巧みにオンボロ寮に入れた寮長の清瀬灰二は、必要人数に達したことで、温めていた駅伝出場の思惑を突然打ち明けた。半ば強制的に始まった目標達成への日々が、それぞれの殻を破いていく。大手町のゴールは一つなのにメンバーが見る景色は一色ではない。彼らの挑戦する姿を見て、私も走りたくなった。
【 牧 京子( まき きょうこ)】
書名『 こんな公園がほしい~住民がつくる公共空間~』小野佐和子著 築地書館 1997年
理想の公園像を語った本? いいえ。そうではありません。
この本は、その地域に住んでいる住民たちが率先して、彼らの居心地が良い空間を作り上げるための活動記録です。行政等との生々しい交渉や価値観の相違によるぶつかり合い、そして創意工夫の数々の事例。住民が関わりながら常に変化する「公共空間」としての公園は、現在どのような形になっているのか。本書を読み進めながら、この目で見に行きたくなっていきました。
【 西巻 武英(にしまき たけひで)】
書名『 虔十公園林/ざしきぼっこのはなし』宮沢賢治著 はたこうしろう絵 岩崎書店 2005年
愚直で誰も傷つける事は決してなく、穏やかな性格の虔十。ある時、家裏の野原へ杉苗を等間隔に700本植えた。月日は流れ、そこは杉林に成長し、子供たちの「みんな一緒で居心地よい場所」となった。彼の想いが人々の心を動かし、公園林ができたのだ。
賢治ワールドの暖かな眼差しと、はたこうしろうのほのぼのした絵に、緊張している心が解き放たれる。本当の幸せは何かを教えてくれる、おすすめの一冊。
【 清水 悦子( しみず えつこ)】
人と人とが出会い生まれた「想像力・創造力」でまちを耕してきた豊島区。誰もが主役になれる「国際アート・カルチャー都市」の舞台で人々はどのように文化を生み出してきたのでしょうか。
筆者が現在教えている学生の出身地は24の国(と地域)にのぼる。先の学期に教えたベナン共和国の大学院生は、同国からの留学生受け入れ第一号だった。爆発的に増加するアフリカの人口を支える食糧を確保すべく、ピラティアなど川魚の養殖技術を学びに来たという彼に日本語を教えるにあたり、筆者も日本の淡水魚の養殖や餌の技術改良について調べ、関連記事を一緒に読んだ。こうして学んだ学生がやがて故郷に帰り技術が伝達されていくのかと思うと感慨深い。外国人に日本語を教えるという仕事は、国際交流の最前線にある職業のひとつだとつくづく思う。
このように国際色豊かな本学では、背景の違う学生同士が共に課題を解決する多文化協働型の授業が数多く開講されている。言語の壁あり、方法論の違いあり、円滑な協働はそれほど簡単ではない。留学生からは「自分の意見を表明しない日本人学生」への苛立ちを聞くし、日本人学生からは「ズバズバ言う留学生」に一同が凍りついたというエピソードを聞いたこともある。また、外国人教員の数も多いことから、先日、とある学生に「職場で日常的に多文化協働を経験している先生の話を聞きたい」とインタビュー依頼を受けた。筆者は「国や民族による価値観や習慣の違いは共生・協働の障壁になり得るが、その違いは日本人同士でも見られる。差異の大きさはとにかく、乗り越えられるかどうかは最終的に個々人の問題ではなかろうか」と答えた。ありきたりなようだが、筆者の正直な思いである。
そんな多文化共生時代を生きる現代の学生にぜひ読んでもらいたい本の一つにアメリカ文学の最高傑作と言われる『ハックルベリー・フィンの冒険』がある。ハックは黒人奴隷ジムの脱走を助け、自由州と言われる北部を目指し筏でミシシッピーを下る。奴隷制が常識であり正義でもあった時代、彼らの脱走を助けるのは人間社会からの追放を意味した。見つかったらリンチが必至の大罪を「正義感」から行うのではなく「どうせ自分は悪い人間だから、これ以上悪いことをしても地獄に落ちるのは同じ」という諦念から行うのが『ハック』の徹底的にリアルなところ。同調圧力から逃れ筏の上で生身のジムと向き合うとき(学識こそないものの)賢く献身的なジムを見て「ジムはいいやつ」と思うハック。しかし筏から降りて人間社会に近づくたび「こんな悪事を働いてはいけない。やはりジムを突き出さなければ」と葛藤しつつ、ジムとの旅を続けていく。
筆者に『ハック』を勧めてくれたのは高校時代の英語教師であった。この本を通して、偏見から解放され、生身の相手と対峙する「筏の世界」を心に持つことの大切さ、そこから逃れることの難しさを教えてもらった。現在の日本にも様々な偏見や差別は存在する。同調圧力に流されそうな時こそ、凄まじい差別と偏見が「正義」として存在した社会を生きたハックが、満点の星空の下、ジムと過ごした「筏の世界」を思い出すようにしたいと思う。
プロフィール
東京外国語大学講師。専門は日本語学。豊島区図書館経営協議会の外部有識者メンバー。日本のアニメ・マンガから日本文化を知るプログラムも実施。
新たな出会いが生まれる場所と場所を結びつけるのが「乗り物」。古くから愛され変わらない場所と最先端の設備を備えた場所が交差する豊島区。新たな広がりとつながりを作り出す「豊島区の乗り物」はどのように変化していったのでしょうか。
豊島区のまちづくりが大きく変わったのは2014年のこと。23区で唯一の消滅可能性都市と指摘された時にあります。9 年連続で人口は増え続け、ついに27万人を超えた年の出来事でした。東京の副都心である池袋には、数多くの商業施設や企業があり、8駅の乗降客数は1 日延べ260 万人前後を数えていました。この発表を知り、驚いた方も多かったことだと思います。しかし、その理由を聞くと単身世帯の割合が多く、若い世代の人の転出入が活発で、定住率が低いというものでした。どうやら住みやすい街とのイメージが十分でなかったようです。
そこから「子どもと女性にやさしいまち」を掲げ、「住みたい街、住み続けたい街」に向けたまちづくりを進めながら、文化を基軸にまちをデザインしその魅力を国内外に発信する国際アート・カルチャー都市を目指してきたことは、皆様もご存じのとおりです。
その象徴ともなる「Hareza池袋」をはじめ、「トキワ荘マンガミュージアム」や「ウイロード」など、23のまちづくり記念事業が行われました。そして、池袋駅周辺にある4つの公園の整備により、多くの人たちが集い、つながる場所となるような取り組みが行われています。
これらの施設や公園をつなぐ役割として登場したのがIKEBUSです。IKEBUS の役割は、人と場所をつなぐだけではありません。その運行は、個人や企業のサポーターの皆様の応援だけではなく、街の美化活動を進めている「としまシルバースターズ」の皆様をはじめとする多くの人たちを結びつけながら行われています。また、水戸岡鋭治氏が手がけた車両デザインは、赤くてよく目立つスタイリッシュなボディで、IKEBUS に乗ること自体が楽しく、池袋の街のシンボルとして皆様に愛されている乗り物になっているのです。
これからのIKEBUS の役割は、それだけではありません。最高時速19kmの電気バスは、人にも環境にも優しい移動を提案しています。その移動速度は、街の景色を楽しむにはちょうどよいスピードで、歩道から手を振る皆様ともしっかりとつながれるスピードなのです。さらに、電気で走るバスは排気ガスも出ない、環境に配慮したこれからの移動としてのあり方を提案しているのです。
その結果、池袋駅周辺の4つの公園を核にしてIKEBUS でつなぐまちづくりが「真っ赤な電気バスが公園と人と未来をつなぐ!」として、内閣府が選定する自治体SDGsモデル事業に選ばれたのです。IKEBUS は、公園をつなぎ、人をつなぐだけではなく、持続可能なまちづくりのモデルとして、子どもたちを未来へとつないでいきます。消滅可能性都市からはじまった豊島区のまちづくりは、今では日本を代表する住み続けられるまちづくりになりました。そして、その象徴でもあるIKEBUS は、今日も明日もこれからも、未来を見ながら運行を続けていくのです。
プロフィール
社会貢献度の高い移動ソリューションの開発を目指し94年創業。新たな価値を創造するITマーケティングシステムにより、高速バス「WILLER EXPRESS」、ローカル鉄道「京都丹後鉄道」、まちなか交流バス「IKEBUS」等を運行し、自動運転やAI オンデマンド交通などの次世代モビリティサービスにも挑戦中。
生涯の1冊を選ぶのに、20年という私の人生は短すぎるように思いますが、この20年間で読んできた本の中で、私の背中を押してくれた本を選ぶとするのであれば、武田綾乃さんの『響け!ユーフォニアム』をご紹介します。もしかしたら、アニメでご存じの方も多いかもしれません。
この本に出会ったのは、私が中学生の時です。当時の私は、この本の登場人物たちと同じように吹奏楽にのめりこんでいました。しかし、中学3年生になって部活を引退し、吹奏楽に向けていた熱意を受験勉強に向けるのが難しく、悩む日々が続きました。
この本の主人公である黄前久美子は、当初は成り行きで吹奏楽部に入部することを決めます。実は私も「楽器を習っていたから」「音楽が好きだから」という理由があったわけではなく、久美子と同じように周りの友達が吹奏楽部に入っていくのにつられて、成り行きで吹奏楽部に入部したので、自分の姿がすごく重なりました。成り行きで入ったものの、上手く演奏できない悔しさに泣くほど吹奏楽の世界にのめり込んでいく久美子の姿は、まるで自分そのものでした。
この本を読んでいると、コンクールや様々な行事に向けて練習を頑張っていた日々が思い出されました。そして何より、私は吹奏楽の強豪校を第一志望にしていたため、この本の中で書かれている日々の練習、部員たちの熱い思いなどは、受験を乗り越えたら待っている世界を教えてくれているようで、勉強が辛くて沈んでいた私の背中を押してくれました。
勉強に明け暮れた毎日も終わり、私は第一志望に無事合格して、吹奏楽部に入部し、久美子たちと同じような高校生活を送りました。吹奏楽に捧げた中高6年間は私にとってかけがえのない財産であり、この本が無かったら得られませんでした。
成人という1つの節目は迎えましたが、この先の人生はまだまだ長く、これからも数えきれないほどの本と出会うでしょう。1冊1冊の本との出会いを大切にし、「生涯の1冊」を探し求めていきたいと思います。
プロフィール
小中学校の6年間を豊島区立の学校で過ごす。
中学校在学時に吹奏楽部に入部したのがきっかけで、中学・高校を卒業してからも吹奏楽を続けている。
現在は大学で芸術学を専攻。
私は小学1年生から高校3年生まで、日々野球に打ち込む生活を送っていました。その為、小説ももちろん読んだ経験はありますが、どちらかというと野球の技術書や参考書を読み漁っていた記憶の方が強いかもしれません。
中でも私にとって大切な本が、古田敦也さんの『フルタの方程式』という本です。この本をはじめて読んだのは私が小学2年生の頃でしたが、高校で野球を引退するまで何度も繰り返し読んだ、私にとってバイブルと言える本でした。
私のポジションは捕手だったので、参考になればとの思いで父が購入してくれたのですが、当時本を読むのがあまり好きではなかった私にとって、はじめは難解な本だったと記憶しています。何しろ中高生や大人を対象とした参考書を小学2年生の子どもが読んでいるのですから、無理はないでしょう。
それでも、当時の私はこの本がとても面白いと感じました。低めの球をうまく捕るコツ、ショートバウンドの球をうまく身体で止めるコツ、カウントごとの配球の考え方など、目から鱗の内容ばかり詰まっていたからです。今になって考えると、多少難解な内容だったとしても、自分自身が好きな内容だからこそ何度も夢中になって読み、理解しようと努力できたのではないかと思っています。
私はこの本をきっかけに、様々な本に触れる事となりました。そしてその後に中学受験を経験しますが、そこで必要な読解力も大いに養われたと思います。
正直なところ、現在でも本を読む事は決して大好きというわけではありません。それでも、ふと気が向いた時に本を手に取って読書に励む時があります。その読書習慣の礎は「好きな本から始める」という経験があったからです。
読書が大切なのは分かっているけれど、活字がどうしても苦手という方もいらっしゃるでしょう。そういう方も、無理にはじめから何百ページもある本を読むのではなく、自分の好きなジャンルの本から触れてみる事をオススメします。そうして出会った本の中に、あなたの心の琴線に触れるものがきっとあるはずです。
プロフィール
立教大学体育会応援団 リーダー部 二年
元高校球児。大学でも大好きな野球に携わりたいという思いから、一念発起して応援団に入部。現在も奮闘中の日々を送る。
昨年は、図書館の役割を考える機会が多くありました。
『図書館の設置及び運営上の望ましい基準(文部科学省告示第172号)』によれば、区立図書館は資料の提供とともに、地域の情報拠点としても大きな役割を担っています。ふらりと図書館に立ち寄って面白そうな本を見つけたり、偶然知り合いと会って近況を話したり、子どもたちが小さな弟や妹に本を読み聞かせたり、おはなし会や工作会に参加したり。明るく、にぎやかな光景が浮かんできます。情報を収集、発信できる場所。本の貸し借りだけでなく、こうした場づくりは図書館の大切な仕事です。
「図書館は静かに」と言いますが、ページを静かにめくる音、優しい話声やあいさつ、子どもの元気な声や笑顔、ベビーカーの音、ボランティアやサークル活動の活気などなど、耳だけでなく心でも感じることができる、平和でやさしい音が図書館にはあふれています。時には赤ちゃんが泣くこともあります。でも、そうしたエネルギーやあたたかさも含めたにぎやかさが図書館にはあります。
昨年は、図書館に一人で来てください、話をしないでください、人と距離を取ってください、短時間で済ませてくださいとお願いしていました。静かだけれど味気なく、ちっとも楽しくない図書館だったと思います。まだまだ密になることが難しい世の中ですが、今年こそ、だれもが安心して図書館を利用できるよう心から願うとともに、「図書館は楽しい場所、好きな場所」と思っていただけるよう、頑張りたいと思います。
今年も、どうぞ気軽に図書館におこし下さい。お待ちしています。
お問い合わせ
電話番号:03-3983-7861