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図書館通信第65号(2022年秋号) テキスト版

 巻頭言

「大切なことはみんな図書館で学んだ」豊島区政策経営部広報課 区史編さん専門員 矢作豊子(やはぎ とよこ)

 昭和53年に入区し、最初に配属されたのが中央図書館の前身の豊島図書館だった。旧区役所別館、当時振興会館と呼ばれていた建物の3階にあった。その一年後には中央図書館として大塚向原に移転したが、20年間を図書館に勤めさせていただいた。
 最初の仕事は児童サービス。いわゆる「よい子の絵本」「児童名作全集」で育った私にとって創作絵本・児童文学との出会いは衝撃的だった。こんなに豊かな世界があったのかと夢中になり、自分が面白いと思った本を薦めたり、絵本の読み聞かせをしたりする中で出会う子どもたちの目の輝きにやりがいを感じた。物語の世界と現実世界を自由に行き来する子どもたちの姿を見ながら、なぜ人は太古の昔から物語を紡いできたのかに思い巡らせ、人はパンのみでは生きられないことを学んだ。
 次に担当したのは移動図書館だった。目白・駒込図書館が開館し5館体制になったばかりの頃で、図書館空白地帯を埋めるため小型バスを改造した「あけぼの号」で区内約30か所を巡回した。雨の日も風の日も月1回の巡回を心待ちしてくれる利用者がたくさんいた。公共図書館の草分けと言われた日野市立図書館もスタートは移動図書館からだった。担当したのは2年ほどに過ぎなかったが、そこで公務員の仕事は地域の中にあることを学んだ。
 その後、池袋図書館の開館に携わり、また中央図書館に戻って一般書の収集やレファレンスサービスを担当した。公共図書館の役割は利用者が求める資料を提供することにあるが、取り分け地域に関する資料はその地域の図書館が一義的に責任を負うべきであることを学んだ。後に郷土資料館を所管した際、行政評価のヒアリングで「京都や奈良ならまだしも豊島区の歴史なんて」と言われ憤慨したことがある。元来何にでもすぐ腹を立てるが何に腹を立てていたか直に忘れてしまう粗忽者ものであるが、その時感じた怒りはずっと心の底に潜んでいた。そして巡りめぐって区史編さんに携わる現在、あの時の怒りが原動力になっている気がしないでもない。地域の歴史を伝えていくことはその地域自らの責任であると・・・
 振り返ってみると、「大切なことはみんな図書館で学んだ」と感謝するばかりである。

プロフィール
 地域図書館の館長になりたいという夢破れ、図書館から異動後いくつかの職場を転々とし、最後の仕事が区史編さんとなった。その仕事も残すところ半年。膨大な作業に悶々としつつ、悔いのないゴールを迎えたいと願っている。

記憶のなかの人たち

第7回 「メガネのヒーロー 二人」 NPO 法人「としまの記憶」をつなぐ会副代表理事 小櫻 英夫(こざくら ひでお)

 プロ野球の試合を初めて見たのは70年近く前、福岡県久留米市だった。
 地元の有力な社会人チーム本拠地「ブリヂストン球場」。まだ寒さの残る三月。
 広島カープの二軍とノンプロ球団ブリヂストンのオープン戦。広島カープのショートは熊本出身の古葉竹識(こば たけし) 20歳。そして三塁手が大分の高校を卒業したばかりの新人阿南準郎(あなん じゅんろう)18歳。試合結果など全く記憶にないが、この三塁手阿南選手の姿は忘れられない。軽いフットワークとクラブ捌きでの守備の美しさ。そして、キャンプ生活で真っ黒く日焼けした顔に光るメガネ。

 メガネでもプロ野球選手になれるんだ!

 九州の農村の小学校で、私はたったひとりのメガネだった。4年に進級した年、母に連れられて町のメガネ店に行った。確かに黒板の字は良く見えるようになったが、その喜びの数倍のコンプレックスに悩まされ続けた。「キンガン。チカメ」と呼ばれ続け運動音痴のように扱われ、仲間との草野球では常に補欠でしかなかった。
 そんな私を救ってくれたのが、広島カープの高卒ルーキー、阿南準郎選手。後に盟友古葉と共に、弱小球団を無敵の赤ヘル軍団に育てた二人。
 そして、もうひとりのメガネの投手。立教大学で長嶋と同窓の杉浦忠。私の西鉄ライオンズに立ちはだかる南海ホークスの大エース。福岡の夏。7月は山笠。8月はホークスとの3連戦。高校生になって初めて平和台野球場のナイターで、杉浦を見た。サイドスローの美しい投球フォーム。鮮やかなグリーンのHAWKSの文字。黒一色無骨なLIONSとは別世界。何より照明にキラリと光る杉浦のメガネ。

 私のコンプレックスは完全に消えた。

 今や小学生の37%、中学生の60%が裸眼視力が1.0未満だと文部科学省が発表しニュースになった。メガネ児童は増え続け、メガネは消耗品となる。
 この時代の地方球場を舞台にした直木賞作家赤瀬川隼さんの小説と共に、二人のメガネのプロ野球選手は忘れ得ぬヒーローであり続ける。

プロフィール

1942年大阪生れ福岡育ち、1965年TBS入社ラジオ・テレビの制作担当、2009年大正大学表現学部教授。プロ野球「西鉄ライオンズ(現西武)」を愛し続ける九州男の気質が抜けない。大正大学の学生たちとNPO法人「としまの記憶」をつなぐ会の映像制作を続けている。

図書館と私

まちの中での場の創出 第3回「移動図書館と公園等の活用」 豊島区立中央図書館 司書

 豊島区には大きい公園、小さい公園を合わせると160ほどの緑あふれる公園があります。区内を歩いていると「あら?こんなところに気持ちのいい公園が…」と知らなかった公園に出会うことがあり嬉しくなります。そんな公園のいくつかに、「PARK TRUCK(パークトラック)」という車で図書館の本を持って行き、自由に手に取って読んでいただくという穏やかな活動が4年ほど続いています。これは豊島区公園緑地課の「中小規模公園活用プロジェクト」の一環で、実施日には親子連れが木陰でゆっくりと本を楽しむ姿が見られるそうです。この活動のために図書館では司書が選びに選んだ絵本や紙芝居、ビッグブックを毎回貸し出ししています。そして活動終了後にはお子さんの反応や親御さんの様子などを伺って参考にして、楽しみにしてくださっている皆様を思い浮かべて次回の本をあれこれ考えて選ぶのがとても楽しみです。
 豊島区では半世紀以上前、まだ区内に充分な数の図書館がなかった頃に「あけぼの号」という移動図書館が区内各所を回って本を手渡し、区民の皆様に喜ばれていました。「誰一人取り残さない」という、SDGs未来都市である豊島区の考え方はこんなに以前からそうであったのかと今更ながら驚きます。
 区内に8つの図書館が建つと、移動図書館はその役割を終えました。しかし、移動図書館というスタイルは現代でもしっくりと馴染むのではないかと思いを馳せてしまいます。真っ赤でキュートなイケバスが元気に走り回る池袋地区ですが、もし今ちょっとお洒落な現代版の移動図書館が豊島区内の公園などを結んで走ったら、どうでしょう? 様々な理由で図書館に足を運べないかたに本を1冊でも手渡すことができ、また、本がつなぐ人と人との循環(わ)が自然にできるかもしれません。近くの公園などに移動図書館がやって来たら、そこがにぎやかに地域の人が集う「場」となってくれることでしょう。

生涯の一冊 『僕は自分がみたことしか信じない』 文庫改訂版 内田篤人著 幻冬舎文庫 2013年

「こんな時こそ本を読もう」 豊島区立南池袋小学校6年 山田 凛斗(やまだ りんと)

 依頼があった時、最初に頭に浮かんだのは「しまった!」という言葉でした。
 僕は本をたくさん読みません。図書館関係者の皆さん、すみません。調べ学習ではいつも本を探すのを手伝って頂き感謝しています。
 僕にとって本は情報を得るための道具の一つです。新聞、インターネットも同じ欲しい情報を得るためには理由があります。情報が欲しい時、僕にとって一番の道具は、自分が体験したいという行動力です。だから、情報は家の中や、外や、電車に乗って行った先に転がっているものでもあります。そんな僕なので少し申し訳ない気持ちになりますが、最近見つけたとっておきの本を紹介したいと思います。

 僕は地域のクラブや豊島区の選抜チームでサッカーをしています。中学でも本気でサッカーを続けて行きたい、そのためにもっと成長したいと思う上で悩むことがたくさんあります。
 紹介するのは、内田篤人の『僕は自分が見たことしか信じない』という本です。
 既に引退していますが、内田選手はサイドバックのスペシャリストとして、鹿島アントラーズや海外で活躍した選手です。最初は中学の時からチームにも監督にも恵まれてプロになっていく話にうらやましいなと思いました。才能がある人はいいなと。しかし、プロになってから睡眠薬なしでは眠れないほど精神的なプレッシャーや体の疲労に苦しめられたそうです。自分がそうなったら逃げてしまいそうだと胃が痛くなりました。でも、内田選手は逃げなかった。サッカーをしたいという精神がすごく強いのだと感じました。
 見習いたいなと思ったのは、周囲の人との関わりや思いです。行動に迷った時、何度もコーチやチームメイトに助けられたそうです。それは内田選手の真剣にサッカーをしたいという強い思いが伝わっているからだと思いました。
 僕も自分が見たことしか信じない方ですが、それは周りの言葉に耳を傾けつつ最後は自分が判断する、行動に責任を持つ覚悟なんだと思います。これを書いている間に僕はケガをしてしまいました。もう一度この本を読み返したいと思っているところです。

プロフィール

 小学1年の時に忍者のまきびし作りから調べ学習の楽しさを知る。毎年「調べる学習コンクールinとしま」に挑戦し、昨年「ぼくと石灰」で豊島区長賞受賞。
 

この本カフェ

寄稿者はとしまコミュニティ大学の内、登録して学んでいる「マナビト生」です。マナビトゼミ担当・当中央図書館開催の書評講座講師の佐藤壮広氏の監修のもと、毎回テーマに合わせて文学、児童書、科学や評論などの分野のお薦め本を紹介しています。

29杯目 「川」

 豊島区内には暗渠となった川がいくるかある。いまは道になっているけれども、ふとした瞬間に足下から水の流れる音が聞こえてくる。過去から未来へ、今の世代から次の世代へ、生から死そしてまた生へなど、川が喚起するイメージは多様である。

 

書名『すらすら読める 方丈記』中野孝次/著 講談社文庫 2012年10月

 「ゆく河の流れは絶えずして」。これは『方丈記』の冒頭のことばで、鴨長明が流れてやまぬ賀茂川の水を眺め入った時の身上と記されています。本書には良い所が三つあります。原文に総ルビが振ってある、原文を朗読出来る、日本語のリズムを味わえる、という点です。鴨長明の肉声が聞こえてくるようです。特に気に入っている箇所は「ここに、六十の露消えがたに及びて」と「方丈の庵想像図」。皆さん、タイムスリップ出来ますよ。
【 石関 慎一( いしぜき しんいち)】

書名『ムスメからおとうさんへ。 : いろんなキモチぐるぐる』k.m.p(. ムラマツ エリコ・なかがわ みどり)/著 東京書籍発行 2019年6月

「もう仕事はしない。だって仕事するには、性格悪くしないといけないから!」と吐露できるお父さんが素敵♡(ハート) 著者のk.m.p.は、旅行記や絵をかいたり、雑貨をつくったり、ジャンルにこだわらないものづくりをしている二人のデザインユニット。両極端な二人と五歳から八十歳の五十人以上のムスメたちがおとうさんへの思い」を語ります。人生はアート=表現すること。未来のおとうさん、ムスコのあなたもいろんなキモチを話してみませんか?
【 砂塚 寛子( すなづか ひろこ)】

書名『 天文学者が解説する宮沢賢治『銀河鉄道の夜』と宇宙の旅』谷口義明/著 光文社新書 2020年7月

 謎めいた不思議な宮沢賢治は、『銀河鉄道の夜』で果てしない悠久の宇宙を語りたかったのだろうか。銀河鉄道に乗り合わせた若者の自己犠牲的な振る舞いから、人の幸せとは何かを追い求めようとしたのか。テーマはダイヤモンドの輝きのように多面的である。著者谷口義明は、超新星を発見し、最前線で活躍する天文学者である。数々の賢治特有の天文用語が登場するこの童話を、天文学者の立場から次々と読み解いていく。賢治の描く世界への理解が更に深まると同時に、深遠な宇宙の世界にいつの間にか引き摺り込まれる。二重にも三重にも大きな満足感を得られる稀有な新書である。
【 久保田 仁( くぼた じん)】

 

 マンガ・アニメで多文化理解!? 7つの国と地域の学生がお互いの文化を楽しみながら学び・共感したことは

「東アジア文化都市2019豊島」でも、西安(中国)と仁川(韓国)と豊島区をつないだ一つの文化が日本のマンガ・アニメ。多文化共生の視点で一度読み終わったマンガ・アニメを手に取ると…。そこには「相手を知る・自分を知る」新たな発見が!!

東京外国語大学オープンアカデミー短期日本語・日本文化研修プログラム「アニメ・マンガを使って探究をしよう!」受講学生の連載コラム。2022年1 月〜2月、東京外国語大学にてオンライン日本文化研修が実施された。国内外の学生がZoomで繋がり、アニメ・マンガから日本文化の特徴を探究した。

第3回 「妖怪にみる各国の歴史・文化と多文化共生への道」東京外国語大学 言語文化学部2022年3月卒業 村瀬 明日香(むらせ あすか)

 私は「アニメ・マンガを使って探究しよう!」というオンライン短期日本語・日本文化研究プログラムに日本人学生として参加しました。私のグループでは、ジブリ作品「『平成狸合戦ぽんぽこ』にみる妖怪の正体」をテーマに、日本・韓国・リトアニアの妖怪を比較し、妖怪が持つ意味について探究しました。
 日本と韓国の妖怪を比較する上で参考にしたのが『民話で知る韓国』という本です。韓国の民話が多く記載されており、読みやすい1 冊です。著者は韓国で生まれ育ち、日本に留学した後、日本で家庭を持ち暮らしています。そのため、この本では韓国の妖怪の特徴について、日本人が理解しやすいように解説されています。日本人にとって妖怪は身近な存在であり、常識のように河童やのっぺら坊などの妖怪を知っています。韓国にももちろん、国民の誰もが知っているような妖怪が存在するのですが、日本と韓国の民話の間には微妙な違いがあり、それはその国の歴史の違いを反映していると考えられます。それならば、民話を読むことでその国の歴史と文化を知ることができ、先祖から受け継いできた文化を吸収できると思うのです。
 11 日間のグループでの探究活動の後、最終発表を行いました。最終発表の要点としては、韓国・リトアニアの妖怪と比較して、日本の妖怪は人を殺すという特徴がみられること、そしてそれは日本の妖怪が、自然災害に対する恐れが投影されて生み出されたという背景を持つためと言われています。つまり、自然災害は誰にでも起こりうるもの、理不尽に人の命を奪うものであることで、日本の妖怪も人を殺すという特徴を持つに至ったのです。このように、日本の文化は日本に住む人々が創造したものであり、その起源や意味は社会や地理環境と密接に関わっていることを探究活動から学びました。
 プログラムでは、他の国の学生と協働する場面が多くありました。私のグループは計5名で、私以外に韓国の大学生3人とリトアニアの大学生1人が参加しました。皆、日本文化であるアニメやマンガに興味があり、それが日本語を勉強するきっかけになったようでした。フリートークという留学生と自由に話せる時間には、好きなアニメ・マンガの話や日本の観光地の話などの共通の話題が多く見つかり、話が途切れることがありませんでした。同様に、私自身がイギリスに留学した際にも、日本に対してポジティブなイメージを持っている外国の方が多くいたのを思い出しました。それはアニメ・マンガのお陰と言っても過言ではないでしょう。母語や国籍は異なっても、アニメ・マンガなどの日本文化が介在することで、相手とグッと距離を縮めることができました。改めて、日本文化の持つ力を感じ、多文化共生をする上で「文化の共有」の役割は大きいということに気づきました。つまり、多文化共生の道は、私たちが自国の文化を大事にしながら、他国の文化も尊重することで実現されると思うのです。


監修 東京外国語大学 大学院国際日本学研究所 准教授  幸松 英恵(ゆきまつ はなえ)

プロフィール

専門は日本語学。豊島区図書館経営協議会委員。

図書館から見る豊島区の歴史

図書館というものは、これまでどのような道をたどり、今後どのような役割を果たしていくのでしょうか。 区制施行90 周年を迎えた豊島区の区立図書館が歩んできた歴史を振り返り、未来へ向けた展望をご紹介します。

 第3回 「サービスの変遷 誰もが使いやすい図書館へ」 豊島区立千早図書館 司書

  豊島区では1958年に初めての図書館が開館してから、皆さまが利用しやすいように少しずつサービスを変えてきました。
 当初は団体貸出のみでしたが、1966年には個人貸出を開始。さらに1969年からは現在のように書架から自分で本を探して借りることのできる開架方式で貸出ができるようになりました。その後も日曜と祝日の開館や開館時間の拡大、インターネットで資料の検索や予約をできるようにするなど、サービスを充実させてきました。近年では誰もが利用しやすい図書館を目指して、図書館HPに音声読み上げ機能をつけたり、中央図書館ではQRコードを読み取ることで目的地まで案内するアプリ「shikAI(しかい)」を最寄り駅の東京メトロ有楽町線東池袋駅から続く点字ブロックに導入したり、7月に開催した豊島区制90周年「にぎやかな公共図書館フェスティバル」ではすべてのプログラムに手話通訳をつけたりしています。

 実は、豊島区立図書館は全国の公立図書館の中でもいち早く障害者向けのサービスを実施してきました。今回は、中央図書館に併設されている点字図書館「ひかり文庫」についてご紹介したいと思います。
 「ひかり文庫」は1970年に区内在住の視覚障害者に点字図書や声の図書の貸出を行なうため発足し、1972年に身体障害者福祉法第34 条で規定された情報提供施設として厚生労働省より認可されました。視覚に障害のある方や活字による読書が困難な方のために点字図書や録音図書、さわる絵本、テキストデイジー(文字と画像からなる電子書籍)などの貸出、点字指導、読書相談などを実施しています。
 録音図書は当初はオープンリールテープでの貸出でしたが、カセットテープを経て、現在はデジタル録音図書(音声デイジー図書)がメインになりました。デイジー(DAISY)とは「Digital Accessible Information System」の略で、情報をアクセシブルにするために世界50か国以上で採用されている国際標準規格です。音声デイジー図書はCD の形で貸出されるほか、「サピエ図書館」という視覚障害者等のための電子図書館にデータがアップロードされているので、全国の「サピエ図書館」の利用者がダウンロードできるようになり、利用しやすくなっています。
 図書の製作については、点訳や音訳などでボランティアの方々に多大なご協力をいただいており、「ひかり文庫点訳研究会」「ひかり文庫朗読会」「拡大写本グループ」の3つのボランティアグループが活動しています。所蔵している点字図書・録音図書などのほとんどがボランティアの方々によって製作されていて、製作には読みの調べや校正、図や写真などの音訳も行うため、1 タイトルを作成するのに数か月かかります。「ひかり文庫朗読会」では、定期的に勉強会も実施しているそうです。
 このようなボランティアの皆さまの活動によって、ひかり文庫は成り立っています。ボランティア募集は広報としまに掲載されますので、興味のある方はチェックしてみてください。
 誰もが利用しやすい「にぎやかな公共図書館」を、共に作り上げていけたらと思っています。

仙台文学館 特別展示「山内ジョージ 文字絵の世界」仙台文学館 学芸室 伊藤 美菜子(いとう みなこ)

 「トキワ荘」の住人であった、漫画家でイラストレーターの山内ジョージさんは、宮城県登米市の出身です。
 山内さんは、昭和15年に大連で生まれ、終戦後の昭和22年に日本に引き揚げると、父の郷里であった宮城県で育ちます。子どもの頃から漫画が好きで、手塚治虫や馬場のぼるに憧れ、ファンレターをたびたび送っていたといいます。中学2年の夏休みに地元紙「河北新報」に投稿した四コマ漫画が掲載されたのをきっかけに、伯母の紹介で、隣町に住む小野寺章太郎(のちの石ノ森章太郎)と出会います。高校卒業後、石ノ森章太郎のアシスタントとなり、漫画家としては、トキワ荘最後の住人となりました。やがて、イラストレーションに機運を見出し、動物文字絵を生み出します。漢字やひらがな、アルファベットのみならず、世界の言語で文字絵を展開し、カンボジアの女性たちの識字率向上にも貢献しました。80歳を超えた現在も、さまざまな人との交流の中で活動を続けておられます。
 仙台文学館では、12月11日まで、山内さんの人となりと、その作品世界をご紹介する特別展「山内ジョージ 文字絵の世界」を開催しています。トキワ荘時代の貴重な写真、文字絵の原画の数々や、高さ2メートルほどもある大判の一枚ものの和紙に、宮城県にゆかりのある物で表現した「宮城」の文字絵など、あたたかで親しみのある作品が展示室にあふれています。
 本展を開催するにあたり、豊島区立中央図書館様、豊島区立トキワ荘マンガミュージアム様に多大なご協力をいただきましたことに御礼申し上げますとともに、これを機に交流が続いていきますことを願っています。
 最後に、本年、豊島区制90周年を迎えられましたことに、心よりお祝い申し上げます。

 トキワ荘に住み、活動をしていたマンガ家の山内ジョージさんの特別展が、仙台文学館と豊島区立図書館を繋げてくださいました。特別展に合わせ仙台文学館様よりご寄稿・区制90周年のお祝いのことばをいただきました。※豊島区立中央図書館は2021年に「山内ジョージ展『マンガから世界の文字絵』へ」を実施。

「千早図書館のあゆみ」 豊島区立千早図書館長 鈴木 敦(すずき あつし)

 千早図書館は昭和46年6月1日に1万冊超える蔵書を持つ区内で3番目の図書館としてオープンしました。昨年の令和3年度に開館50周年を迎え、記念展示等を行いました。
 図書館は道路に面して建てられたので、道行く人の誰もが、館内を見ることができました。受付(当時は「出納所」と呼んでいた)で入館閲覧券を受け取るとすぐに開架式の書庫で自由に図書を選ぶことができました。館内で閲覧するには受付で選んだ本と閲覧券のチェックを受けます。館外貸出するには豊島区内に住んでいるか通学・通勤先があることを証明するものを受付へ提示すると、その場で登録手続きができ、1回2冊10日間借りることができました。
 オープン当初はまず児童書に力を入れており、児童室内に母親コーナーを作り、お子さんと読書できる環境が整えられていました。
 開館20周年の平成3年度には一般公募・人気投票によって、千早図書館のシンボルマーク、きつねのちはやちゃんが誕生しました。千早図書館のアイドルは蔵書バーコードラベルにデザインされているほか、各種パンフレットや館内のディスプレイなど今でも変わらずに活躍し、皆さんに愛されています。
 図書館のある千早及び周辺地域はかつて池袋モンパルナスと呼ばれ、多くのアトリエが存在していました。また近隣にはマンガ家の横山光輝氏が居住し、創作活動を繰り広げていました。こうした背景から現在図書館では文化・芸術や「横山光輝」をテーマにした特色のある図書館づくりを進めています。
 開館から年を重ねるごとに、貸出業務等の電算化(平成4年)、貸出登録の住所要件廃止(平成7年)、日曜日の原則開館(平成11年)、祝日開館(平成19年)など図書館サービスの向上をはかってきました。
 一方建物は年を追うごとに所々で傷みや不具合が顕在化してきました。老朽化してきている建物ですが、平成27年度の耐震補強工事や令和元年度の空調設備更新工事等を行い、利用者の方々にとってより安心快適な施設にしていけるよう日々努めております。
 しかし築50年を過ぎ、エレベーターがない、書架の間が狭い等バリアフリーも十分でない施設です。区制90周年を迎える今年度、いよいよ千早図書館の改築・改修の検討が始まる予定です。すべての来館者の方が快適に利用でき、愛される施設となるよう整備してまいりますので、これからも千早図書館をよろしくお願いいたします。

新航路

「にぎやかな公共図書館フェスティバルが終わりました」

 豊島区制90周年イベント「にぎやかな公共図書館フェスティバル」の開催にあたりましては、たくさんの方にお越しいただき本当にありがとうございました。おかげ様で大きな事故もなく、赤ちゃんから大人まで多くの方に文字・活字、そして映像を楽しんでいただいたのではないかと思います。会場でも、「楽しかったよ」とたくさんの方から声を掛けていただき、とても嬉しかったです。多くの企業、団体、ボランティアの皆様をはじめ多くの方に支えられたイベントでした。図書館ホームページに報告書を掲載していますので、ぜひご覧ください。
 この夏も、たくさんの子どもが図書館に来てくれました。子どもの声が図書館のフロアから聞こえると、ほっとした気持ちになります。時々、「帰りたくない!」と泣いている子どもさんもいて、「ありがとう!」と心の中で叫んでしまいます。子どもの不読率(1冊も本を読まない割合)が課題と言われる中、小さな取組も忘れずに積み重ね、子どもにとって読んだことのない本や懐かしい本と出会える「好きな場所」に図書館もなれればと思います。
 大人の皆さんは、この夏の図書館、居心地はいかがでしたでしょうか。もちろん、大人の方にも、「帰りたくない!」と言ってもらえる図書館になれたら嬉しいことです。
 図書館マナーに対するご意見を数多くいただいていますが、読書の秋、寒い冬も近づいてきました。みなさんの心が温かくなる心地よい図書館になりますよう、周りの方への温かい気持ちと利用マナーにもご協力をお願いいたします。

 
「にぎやかな公共図書館フェスティバル」にご協力くださった企業、団体、ボランティアの皆さま
 株式会社ケイ・ブックス(執事喫茶Swallowtail)&執事のみなさま、株式会社三省堂&深谷圭助先生、株式会社サンシャインシティ、りんごプロジェクト/NPO法人ピープルデザイン研究所、レイチェル・カーソン日本協会関東フォーラム、あうるすぽっと(公益財団法人としま未来文化財団)、読み聞かせボランティア、点訳研究会、都立多摩図書館
みなさま、ありがとうございました!!

 図書館通信

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お問い合わせ

図書館課サービス基盤グループ

電話番号:03-3983-7861

更新日:2023年3月3日